第17話 営業ノルマは大抵の場合、達成できないのです

 待っている間にナノマシン付箋の開発をします。

 魔道具で警告の文字を出す機能があります。

 文字を出す機能だけを抜き取れば付箋の完成です。


 実際にやってみる為に、呪文を魔石に書き込みます。

 『ロックリザード換金』の文字が出ます。

 解除は魔石に記録した魔法の呪文を消してみました。

 面倒ですね。

 手書きで書いて、ディスプレイに貼るぐらいの簡単な動作で、出来ないのでしょうか。


「面白い事しているのね」

「ですが、上手くいかない」

「そんなパッパッと出来たら魔道具屋は要らないわよ」

「そうですね。餅は餅屋と言いますし、後で特注するとしますか」


 一つ案件が片付いたので、私達は元ゲリラを仕事ぶりを監督しに行きました。

 森の奥に入ると戦闘音がします。

 喧嘩ですか。

 喧嘩はよろしくない。


 駆け付けると、大きな猪が倒れていて、元ゲリラの一人が誇らしげにしてました。


「これを薬草の代わりにできねぇか」

「無理ですね。でも、せっかく駆除したのだから換金は手伝います」


 私は収納バッグに猪を入れました。


「今日の夕飯は、ご馳走が食えるな」

「他にも野生動物を倒された方がいるかも知れません。ティア、急ぎますよ」

「ええ」


 薬草を採っている元ゲリラ達に会いました。


「分かんねぇよ。どうやって見分けるんだ」

「分からなかったら、人に聞くのです」


 私は教えてあげました。


「得意な奴、頼むから教えて」

「おう、銀貨1枚な」

「くそう、仕方ない。森で夜を過ごすのは死ねるからな」


 そうです、助け合わないと。


「しかし、面倒ですね。全員の場所の把握が出来ません」

「探査の呪文を覚えたらどう」


 魔道具の本に載っていたはずです。


「いいですね。覚えられないので、魔法起動の魔道具に組み込んでみます」


 魔道具によって探査サーチが発動します。

 青い点が人間で赤い点が野生動物のようです。


 魔道具に登録した魔法は7種類。

 軽めと強めがあるので、14種類です。

 いい加減、魔道具に登録する方法でも覚えるのがきつくなってきました。

 何か良い方法はないでしょうか。

 単語が書いてあるボタンがあって、押したら発動というのが理想ですね。

 これも魔道具屋に相談してみましょう。


 さて、急いで回らないと昼になってしまいます。

 目についた大きい野生動物を狩りながら、森を回るとしますか。

 全員の無事が確認できましたが、薬草採取の方は進んでないようです。


 ゴブリンさんは100本以上採ってました。

 流石です。


 昼の時間になりました。

 戻ってきた元ゲリラ達の採点をします。


「これは小さいから駄目ですね。こっちは根っこから、採らないといけません」

「うわっ、ゴブリンの半分にもいかない」

「どうしたらいいんだよ。命令されているから出来るまで森に居残りだよ」


「ああ、そうだ言い忘れてました。班の誰かが居残りなら他の人も居残りです」

「そんな」

「励まして、アドバイスをしてやって下さい。私は夜になったら門番の仕事に行きます。それまでに合格できなかったら、朝まで居残りです」

「くそう、やってやる。ゴブリンの133本を超えりゃいいんだな」


 私は露店の食べ物をゴブリンに配ります。

 元ゲリラ達は食いたそうに見つめています。


「さあ、早く行かないと朝まで飯抜きになりますよ。水は飲んでいいですよ」


 私は収納バッグから水瓶を出しました。


「やってやるぜ」


 元ゲリラ達は水を飲むと元気に駆け出していきます。

 さて、晩までに何人合格するでしょう。


「いい気味ね。私を犯してやるなんていう奴は、苦労すれば良いんだわ」

「いい機会ですので、ティアは薬草の名前と、どういう採取が良いのか覚えましょう」

「私のご褒美はないの」

「森を回った時に倒した野生動物の半分を、分けてあげます」

「それは、楽しみね」


 熊のでかいのが1頭と狼らしきものが8頭。

 それと猪が1頭ですか。

 忘れそうですね。


「ティア、獲った獲物をよく覚えておいて下さい。どうも物忘れがひどいのです。」

「ええ、任せて」


 早く付箋の魔道具を手に入れないといけません。

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