第16話 ストライキにはゼロ回答です

「自由時間が欲しい」


 元ゲリラの一人がそう言いました。

 たしか、地獄の研修にも僅かながら自由時間がありましたね。


「良いでしょう。許可します。一時間です」


 私はその間に何をしましょうか。

 そういえば、剣の手入れをしてませんね。

 武器屋を訪ねます。


「いらっしゃい」

「剣の手入れを頼みたいんですが、どうでしょうか」

「見せてみな」


 剣を外してカウンターに置きます。

 店番の従業員は剣を抜くと、ほれぼれした様子で眺めます。


「これは手入れは要らないな。魔法が発動している時は、魔法で保護されているから、血糊もつかないぜ。強いて言えば油を塗っておくぐらいだな」

「では手入れの道具を頂きます」

「あいよ」


 男が入ってきました。

 見覚えがあります。

 元ゲリラの一人です。


「おやじ、メイスをくれ。げぇ、あんたは」

「私に気にせず買い物して下さい」


「メ、メイスを下さい」


 元ゲリラはもじもじしながら注文した。

 何を気兼ねしているのでしょう。


「金はあるのか」

「ああ、ヘルウルフをやって、たんまり稼いだぜ」


 私は店を後にして、買取所にロックリザードの納品をしました。

 露店でゴブリンの食事を買い、ギルドで元ゲリラの人達を待ちます。


 戻ってきた元ゲリラは一様にメイスを腰にぶら下げています。

 護身用具が欲しかったのですね。

 ぶっそうな場所ですし、まあいいでしょう。


「今日の研修は薬草採取です。頑張りましょう」

「はい!」


 返事も揃ってますし、みんなにこやかです。

 何か良い事があったのでしょうか。


 森に行き薬草採取を始めようとしましたところ。


「もう、俺達は我慢できない。一斉に掛かれ」


 ふむ、ストライキという訳ですか。

 メイスで殴りかかる彼ら。

 私は剣を鞘ごと抜き、ナノマシンを起動してメイスを弾きました。

 鞘の状態でもバリヤみたいな物は掛かるようです。

 ですが、切れません。

 これはちょうど良いですね。


「ゼロ回答です。賃上げは認めません」

「そんな物、要求してない」


 メイスの全てを弾き返しました。


「要求はなんですか」

「そんなの決まっているだろ。従属紋の解除だ」

「ふむ、却下です。雇用期間を指定しなかったあなた達が悪い」

「できるかよ。従属紋が無くなったら死刑なんだぞ。短い時間を設定して、自分で首を絞める訳ないだろ」

「矛盾してますね。遅い思春期ですか。やれやれ」


「魔法でやるぞ合わせろ」

炎の矢ファイヤーアロー


 魔法を唱える息がぴったりです。

 なかなかの団結力です。

 これは将来が楽しみになりますね。


 魔道具を使い魔法の盾マジックシールドを発動しました。

 炎の矢は全て弾かれます。


「まだだ」

「言っておくけど、敵わないと思うから、やめておいたら」


 ティアが忠告します。


「女は黙ってろ。こいつを始末したら、たっぷり犯してやる。よし合わせろ」


 いつしか、集まったゴブリン達も行く末を見守ってます。


炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

「俺の魔力が無くなった」

炎の矢ファイヤーアロー

「俺もだ」

炎の矢ファイヤーアロー

「駄目だ殺される」

炎の矢ファイヤーアロー

「ひい、許して」


 攻撃しているのに命乞いしてます。

 私に思春期の考えは分かりません。


炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー

炎の矢ファイヤーアロー


「くそ、駄目か。好きにしやがれ」

「はいはい、好きにさせてもらいます。元気が有り余っているようですから、ゴブリンさんと薬草採取競争です」


 ルールをどうしましょうか。


「ルールは昼までの時間で、ゴブリンさんの一人が採った数を上回った人は合格です。薬草をギルドで買い取ってもらい昼飯です。足らなかった人は居残りです。できるまで森で過ごしてもらいます。今、言った事は命令です」

「薬草採取なんてやった事がないぜ」

「俺はやった事がある」


「ああ、そうだ。薬草の貸し借りは禁止です。命令します」


 ゴブリン代表は誰にしましょう。

 彼にしましょうか。


「そのひと際大きくて傷のあるゴブリンさん、薬草を採る見本を見せてやって下さい」

「駄目よ。もっと簡単な言葉で言わないと」

「薬草を採ってほしい。太陽が真上にくるまでです」

「ぐぎゃ」


 ゴブリンさんが駆け出します。


「はい、スタートですよ。頑張って下さい」

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