第7話 アニメ同好会

 アニメ同好会とはなんなりや。


 バイトのある日以外の皆勤賞にして、おそらく部員の中で一番出席率の高い俺だが、部長ではない。活動という活動はないものの、書類上の部長は土花になっている。

 ちなみに、同好会という名ではあるが、今でこそ歴とした学校公認の部活である。


 成り立ちについては思い出すだけで頭が痛い。

 これから話すのは、土花の奇行についてだ。


 一年の頃から土花とは同じクラスだった。

 文学少女なんだなと抱いたイメージが壊れるのに、十分も要らなかった。


「アニメ同好会を設立したいと思っています。オタクの方は声をかけてください」


 皆が周囲の様子を伺っている中、自己紹介でわたしオタクです宣言だ。

 探し人は超人でも宇宙人ではなくオタク。これを変人と言わずしてなんと言う。


 関わらないでおこうと心に決めたが、今こうしていることが関わる未来になった証明になる。


 四人以上の部員に加え、明確な活動理由の提示が同好会として認められる条件だ。審美眼ならぬ審オタク眼でも持っているのか、そこで勧誘されたのが俺と、一年のときは同じクラスだった愛雲だった。

 これだからオタクはいけない、急展開に乗りたくなってしまう。オタクは夢を見てはいけないと散々言われているが、現実で起きちゃあ別だ。

 見事に二つ返事で参加してしまった。


 愛雲も好き勝手できるならと加わって、部員候補は三人になった。

 とはいえ、まだ人数が足りない上に、趣味人の集まりだ。活動するための部室も有限、学校から支給される活動費も絡んでくるから、生半可な理由じゃ通らない。


 活動理由、なんて書いたか知ってるか?


『二次元文化の保護と認知度の拡大』。まあ理にかなっている。

 土花のやつ、あれで普通に成績は学年上位なんだ。阿保だが馬鹿じゃないんだよな。


 今まで保護するばかりで拡大させるような活動してないがな。


 その後、残りの一人を土花に任せた結果、どういうことか白鬼先輩を連れてきたのだ。

 部活申請は白鬼先輩の信頼と演技力に助けられて無事通過し、今に至る。


「色々あったんですね……」


「まったくだ」


 振り回されるというより、勝手に物事が進んでほとんどが事後承諾だった。

 気づけば崇高な活動になっていて、気づけば女子一のイケメンである白鬼先輩が加わっていて、気づけば部室ができていた。

 土花の行動力には本当に驚かされるばかりだ。


「イベントショップがあるとかで放課後に新幹線乗ったり、サイン本求めてこれまた新幹線乗って、夜行バスから直行で登校したり」


 オタクとして見習いたいと思うが、人として見習いたくない。


「だから、土花にだけは注意しとけよ。気分屋特急列車だからな」


 なんて淀見さんと話していると、部屋の扉が勢いよく開いた。


「みなさん、とうとう我々が活動するときが来ました!」


 ほらな、言っただろ。




 六月上旬、我らがアニメ同好会に特急列車が停車した。


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