第10話 好きな子に着せてこそ

「みてみてー」と言ってヒナが見せてきたのはコスプレ衣装だ。


 なんでも演劇部の友達から貰ったらしい。


 衣装が増えてきたから必要なくなった服とか、新しく作った服があるから古いのを貰ったそうだ。


「よく貰えたね」


「演劇部の人がゴミ置き場に持って行ってた所を見つけてね。ちょっと話したら貰えたんだよねー。結構話があって盛り上がっちゃったよね」


「ふーん」


 モヤ。


 私の知らない所で...いやいや、何このめんどくさい女の子みたいな考え。


 ...。


 私にはヒナしかいないけど、ヒナはそうじゃないんだもんね。


 仕方ない。


 ...仕方ない。


「どうしたの?」


「ん?何でもないよ」


「...」


 ぎゅっ。


「っ!?」


 突然ヒナが私の手を握ってきた。


「どうしたの?」


「...何でもない」


「ヨーコ、何でもないような顔してないよ。言ってみて」


「...私にはヒナしかいないから」


「もしかして演劇部の人と話してたのが気になったの?大丈夫だよ、私だってヨーコが一番だよ」


 ヒナは私と違って友達が多いけど私が一番なんだ。


 嬉しい。


「ヒナ...」


「そっかー、ヨーコはそんなに私の事が好きなんだー、ふーん」


「な、私はっ別に...っ!」


「はいはい、分かった分かった」


「それよりそれどうするの?」


「あはは、話逸らしたー」


「もお、ヒナ!」


 この後ちょっとだけヒナにからかわれたけど、話を戻したら演劇部の衣装を見せてもらってたらいいのが結構あったからどうせ捨てるならと何着か貰ったらしい。


「それでこの服とかヨーコに似合うと思うんだよねー」と取り出したのは巫女服だった。


「こんなの似合わないよ」


「ヨーコは可愛いから絶対似合う」


 可愛いと言うならヒナだ、ヒナの方が絶対似合うと思う。


 それに恥ずかしくて着れそうにない。


 私が渋っていると「大丈夫、私しか見てないんだから。ヨーコが着てるとこみたい」とヒナが後押しする。


「うーん、そこまで言うなら」


 とりあえずこの服なら露出も少ないし、ヒナの頼みだし着てみよう。


 ヒナが指定した巫女服に着替える。


「ヨーコ可愛いよー!」とヒナが大興奮している。


「そ、そうかな?」


「うんうん!」


 パシャパシャとスマホで写真を撮り出すヒナはいつもより動きが機敏に見える。


「次これ着てみて、その次はこれね」


 うまく乗せられてその後はいろんな服を着る事になった。


 でもおかしいな。


 こんなに可愛い服がいっぱいあるならやっぱり好きなは子に着てほしいと後から気づいた。

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