天井が迫ってくる塔 第5話

「いったい何がどうなってるんじゃ?!」


相沢が居た筈の場所、だが今はそこには誰も居ない・・・

消えたのだ、透けて空気に同化するように目の前で消えた彼女に金剛も困惑していた。

それは私も同じである。


「分からない事だらけだわ・・・」

「全くじゃ・・・」


私の呟きに金剛も頷き同意する。

ここは夢の中なのだと言われた方が納得が出来そうな程、色々な事が立て続けに起こり頭痛がしてきそうであった。

私はペットボトルの水を少し飲んで気持ちを落ち着かせる・・・

分からない事はいくら考えても分からない、だから今考えるべきなのは・・・


「なぁ、情報交換をせんか?」


私が思考を巡らせている間に金剛が別のグループのメンバーに声を掛けていた。

三人寄れば文殊の知恵とは良く言ったモノだ、私達二人だけで話し合ったところで結果は変わらないだろう、だからこそ他の人に話を聞こうと提案しようと思ったら金剛が自発的に動いていた。

意外と彼とは気が合うのかもしれない・・・


「わしは金剛と言う」

「僕は、柊です・・・」

「私は、東と言います・・・」


中学生に見えそうな小柄な男子と委員長と言うイメージが定着しそうなメガネの三つ編み女子。

どちらもあまり口数が多くはなさそうな二人である。

彼等も目の前の長テーブルに置かれたペットボトルを取りに来たのだろう。


「とりあえず情報交換には私も賛成だわ、協力してくれる?」

「はい・・・」

「別にいいけど・・・」

「がっはっはっ!それじゃあワシらからの質問じゃ、今は何年じゃ?」


それは私達が先程知った事実、さっき消えてしまった相沢もそうだが、言っている事が本当ならば別々の時代から私達はここへ来た事となる・・・


「えっと・・・今は平成元年じゃないんですか?」

「違うわ、今は平成21年よ」


その言葉に私達も驚いたが、言い合った柊と東の二人も互いを見合わせ困惑した表情を見合わせた。

なので・・・


「ワシは昭和49年から来た・・・」

「私は令和2年よ、そしてさっき消えた相沢さんは平成15年・・・」


私達の言葉に合わせて二人は視線をこちらに移した。


「れい・・・わ?」

「そう、昭和の次が平成、そして平成の次が令和よ」


私の言葉に金剛も驚きの表情をこちらへ向けた。

どうやら私の言った年号が理解できていなかったらしい・・・

それは仕方のない事だろう、自分の知る年号よりも二つ先の年号なんて想像も出来る筈が無いのだ。


「そう・・・なら消えた人はそう言う事なのかもね・・・」


東が静かにそう呟く・・・

何か確信めいた事に気付いた様子の彼女は金剛の方を見て告げる。


「おそらくなんだけど・・・さっき降りてきた天井に潰された人いるでしょ?」


東のその言葉に吐き気が戻ってきそうになるが生唾を飲み込んで話を聞く。


「あれで死んだ人の子孫、もしくは誕生に関与している人が消えたんじゃないかしら?」


その言葉に私も金剛も絶句した。

それはそうだろう、だがあり得ない話では無い・・・

全員が同じ学校の制服を着ているのだ、つまり住まいが近い事を表している。

例えば誰かの紹介で交際を始め結婚した人が居るとする、だがもし紹介する人が居なければ・・・

たらればの話になってしまうが、その子孫は生まれてこないかもしれないのだ。

その話を聞いていた近くのグループの人達も私達の会話に興味を持ったのか、近寄ってきた。


「確かにその可能性は高いわね」


少しぽっちゃりした体系の女子がそう言ってきた。

目の前で知り合ったばかりの人が消えたグループの女子だ。


「ゴメン、話に割り込んで。私は・・・きゃあっ!」


謝罪し、自ら名を名乗ろうとした彼女は突然の振動によろけてしまう。

そして、その振動が始まると共にやはりと言うべきか・・・


「また、なの?」


激しい揺れがどんどん強くなり、誰もが上を見上げて恐怖に震える・・・

再び天井が徐々に下がり始めていたのだ。

そして、視線を下にやるとまた『〇』の模様がいくつも浮かび上がっていた。


「話の続きはまた後じゃ!落ち着いてから〇に乗るんじゃぞ?」


そう言って金剛は一人先に丸の上に立った。

彼の行動に合わせて東も柊もこちらを見て1度頷き、立ち去っていく・・・

各々が違う〇に入り、私も適当に1つの丸を選んで中に足を踏み入れる・・・


「そうね、時間の掛かる問題だったら少しでも早く始めた方が得だもんね」


そう独り言をこぼし、飲み残しの入ったペットボトルを手に私も〇の上に足を踏み入れた。

同じ経験を1度したから分かるが、真っ白な柱の中の様な構造に囚われた私、そして聞こえてきたのはあの声であった。


「問題! 1種類、2種類、3種類。リバーシのコマは何種類あるでしょうか?」

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