5話 ゲームの知識で監査を攻略する件
FPSゲームの一件で玲子を怒らせた僕達3人は、何でも悩みを聞く事になった。
しっかり者の玲子だから何も無いと思っていたが、思いもよらない悩みを打ち明けられた。
「我に任るのだ! 我ら神教寺の力を見せるのだ!」
ミラが二つ返事で依頼を受けたけど大丈夫なのか?
僕達『神教寺』はFPSゲームのチームなんだよ?
監査どころか社会の常識を知らない高校生がどうやって対応するのだ?
敏夫社長は僕も仲良くしてもらっているし助けたいけどさ。
そんな僕達の心配を余所に、ミラが的確に僕達の教育を始めたーー
「やったよミラ! 言った通りに進めたらギルバート様ルートに行けた!」
「当然だ我は神の奇跡だからな」
ミラが厳か風に言う……そう、厳か風だ。
どう見ても幼女にしか見えないから厳かにはならないんだよな。
でも、ミラの言った通り3日目に図書館に行かないで、アラン様とのフラグを回避したらギルバート様のルートに行けたぜ。
こうやってフラグを管理してルート選択するんだな。
僕はミラからノベルゲームを学んでいる。
決して必死にギルバート様を狙ってた訳じゃないからな!
「ねぇ、何してるの?」
玲子が怒りに震えている。怒るのは当然だ。
玲子のお父さんを助けるって言っておきながら、ずっとゲームやってるんだからな。
別に遊びたかったのではない。ミラが必勝法だって言うからやってみただけさ。
でもゲームが何の役に立つのか説明出来ない。
だからーー
「ギルバート様の攻略だよ!」
笑顔で答えた僕の頬を玲子が叩く。
「真剣に考えてるの? 悪ふざけするなら関わらないで!」
痛てっ、何で僕だけ怒られるんだよ。
ミラと益男だってトレーディングカードゲームで遊んでるじゃないか。
あっ、ミラが勝った!
*
翌日の土曜日、僕達は監査が行われる会議室に本当に招待された。
大事な監査を僕達に任せるなんて敏夫社長もヤケクソなのか?!
「なぁ、僕達私服だけど大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳ないでしょ!」
直ぐに玲子に否定される。
当然だよな。俺達どう見ても普通の高校生だからな。
「心配はいらぬよ、輝け奇跡の後光よ!」
ミラのから光が立ち上り、僕達の姿が20代前半の社会人に変化した。
ミラなんか身長まで変わって、スタイル抜群な女性になってるじゃないか。
益男は……ガチムチ度が爆上がりしてないか?
これじゃ
「宜しく頼むよ相棒ぼぼおおおおおおっ!」
僕はミラの肩に置こうとした手がすり抜けて、ミラの胸を貫通した。
隣で見ていた玲子は烏龍茶を噴き出している。
「何を驚いている。映像なんだから触れられる訳なかろう?」
映像?! ミラの奇跡はホログラムかよ!
2、3万円で買えるプロジェクターの様な奇跡だな!
まぁ、相手の監査員の目を誤魔化せそうだし、緊張もほぐれたかな。
益男はガチガチのムチムチのままだけどな。
「益男! 緊張してるなら
「般若心経ではなく、
軽口が言えるなら問題ないな。
僕とミラが監査を受けて、益男が現場対応する手筈だ。
監査開始の時刻となり監査員と対面した。
最初に敏夫社長が会社の概要を説明している。
俺達の出番はその次。
「作業の手順書を拝見させて頂けますか?」
始まった。監査員の発言を聞いて僕の中でフラグが立つ。
僕は腕を振りかぶり、ミラに指示を出す。
「ミラ! ルートA前半パート!
「OK
ミラが作業手順書を
あっけにとられながらも監査員が作業基準書を読みだす。
「それでは実際にーー」
「エビデンスカード、教育訓練記録を提示! このカードの効果により実際に教育した事を証明出来るのだ!!」
よしっ、ナイスだミラ!!
監査員の発言に
監査員を黙らせる恐ろしいコンボだ。
僕がノベルゲームの知識で戦略を立て、ミラがトレーディングカードゲームの知識で組んだ
僕とミラの完璧な連携で書類審査はエキサイティングに乗り切った。
「それでは作業現場でインタビューをさせて頂いてもよろしいですか?」
「どうぞ、こちらへ」
僕が直接監査員を案内する。
事前に用意していた益男にインタビューさせる為だ。
作業現場に着くと、筋骨隆々な
予定通り、他の社員は席を外している。
「彼にインタビューさせて頂いてよろしいですか?」
「どうぞ」
僕は自信をもって返事をした。
「この部署の目標を教えて頂けますか?」
「観自在菩薩 行深般若波羅蜜多時……」
監査員の問いかけに対して益男が勢いよく
「えーっ、御社の目標は空の思想なのでしょうか?」
「んな訳あるかぁぁぁぁぁぁっ!」
肝心な時に役に立たない益男……監査員もノリが良すぎるだろ。
「お主は悟りを開く前に、申し開け!」
ミラのミドルキックが益男の尻を打ち鳴らした。
寺の鐘の様にーー
*
監査員が監査の合格を伝えて帰った後、僕達は安堵した。
個性的なメンバーと対応だったが、必要な資料が揃っており的確に説明出来ていた事が功を奏したのだ。
唯一指摘されたのが
「良い友人達だな。今日は助かったよ」
「奇跡だから当然である!」
手を差し伸べた敏夫社長とミラが握手した。
いやっ、奇跡全く関係ない!
態度は普通じゃないけど、普通に監査受けていただけだよね?
「尊君もいつも過激な娘と仲良くしてくれてありがとう。本当に感謝している」
「パパッ!」
会議室が笑いの渦に巻き込まれる。
最初はふざけてると思ったけど、うまくいって本当に良かった。
ミラと出会えてから今まで以上に毎日が楽しい。
これからも一緒にいて欲しいなーー
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