1話 舞い降りた? 神の奇跡!
「
どうせ誰にも聞こえやしないからな。
鈴を鳴らし、いつも通り雑に参拝を終えて自宅に戻ろうとすると、高速で動く影が見えた。
思わず飛び退くと何かが地面に激突した。
さっきの影は空から落下する物体の影だったのか。
危なかった……避けてなければ死んでたぞ。
何が落ちたのか興味をそそられ眺めていると、巻き上げられた砂埃が一陣の風にさらわれて落下物が姿を現した。
人の形をしたもの……人が落ちてきて死んだのか……
呆然としていると
「我は天使! 神の奇跡だ!」
目の前の人物が胸を張り偉そうに名乗った。
天使? ここ神社なんですけど?
普通は天使など言われても信じがたい。
だけど、陥没した石畳を見れば普通の人間でない事は理解出来る。
目の前の相手が人間だったら確実に死んでる……
天使なのは間違いない、だけど……
「なんで幼女なんだよおおおおっ!」
「誰が幼女だああああっ!」
目の前の
透き通るような金髪に、天使が着るような純白の布を羽織った姿は天使と言えなくもない。
だけど身長130cm程の小柄な姿は、どうしても幼女にしか見えない。
翼だって生えていないじゃないか?
だから思わず幼女って言っても仕方ないだろ?
「な、何かご用ですか?」
「呼んだのは
どうして僕の本名を知っている?
本物の天使だからなのか?
それにしても僕が呼んだ?
疑問ばかりが頭を駆けめぐる。
「お主が適当に祈るから、予定より一週間早く召喚されてしまったではないか。仕方がないから、お主の家に滞在させてもらうぞ」
まてまて、天使に来て欲しいなんて祈ってないから。
確かに雑に祈ったけどさ、俺が祈ったのは神社で奉られている
どうしよう。天使とはいえ幼女を境内に放置する訳にはいかない。
「ひとまず僕の部屋で話そうか?」
我ながら犯罪臭のするセリフだなと思いながら、幼女天使を神社の隣の自宅に案内した。
自宅のドアをあけて直ぐ、母と鉢合わせしてしまった。
お、終わった……
よりによって金髪幼女を連れ込むところを母に見つかるとは……
「あらっ、可愛らしいお友達ね。お名前は?」
「我は神の奇跡だ!」
「あらっ、
「コスプレじゃないぃぃぃぃっ! 神野でもないぃぃぃぃっ!」
いや、発音的には変わらないだろう?
しかし、母が天然キャラで助かった。
普通だったら家族であっても通報される事案だ。
微妙に話がかみ合っていないのが気になるが……
「突然連れてきてごめん、後で紹介するから。行こうかミラ」
僕は幼女天使の手を引いて、二階の自室に案内した。
部屋に入るなり、幼女天使がベッドに腰掛けた。
「ところでミラとはなんだ?」
「名前が
「それで我をミラと呼んだのか。天使っぽくないな」
「仕方がないだろ。奇跡って言ってたからミラクルのミラだ」
「安直であるな。知識の程度が知れるというものだ」
安直で悪かったなと思いながら、ミラの隣に腰を掛けた。
「それなら名前を教えてくれよ。本当の名前を知ったら解決するだろう?」
「我の階級は大天使。名前などない」
名無しの天使か……僕は少しがっかりした。
天使は芸能人では無いが、それでも有名な天使だとテンションが上がるってものだろう。
ここは
「はぁ、ノーブランドの天使かよ……」
「ノーブランドとはなんだ! 天使に対する敬意が足りぬ」
ミラが僕をポコポコ叩く。なんてへっぽこで可愛いんだ。
いやいや、そんな事を考えている場合ではない。
「敬意は足りないのかもしれないけど憧れはあるかな。ミカエルとかガブリエルとか有名な天使に会えたら嬉しいよな」
「そんなメジャー天使がお主如きの相手をすると思っているのか?」
「それはないな。ところでミラは何をしに来たの?」
「我は神の奇跡! 奇跡を起こしに来たに決まっておる」
「奇跡ですか……何の?」
「それは契約上言えぬ」
「契約の相手は神様?」
「その通りである。
「ちょと待った! なんで
余りの衝撃にミラの肩を揺さぶって問いただした。
「派遣だよ、派遣! 現代人は信心深くないから天使も暇なんだよ。人手不足の
「奇跡を起こすのは分かったけど、何で下界に降りて来たの? 別に天界から奇跡を起こしてもよいのでは?」
「リモートワークで奇跡が起こせるか! 電磁波と同じで奇跡も距離の二乗に比例して減衰するのだ!」
いやっ、リモートワークは駄目なのに電磁波扱いはいいのか?
それに天使なのに
ミラさん堕天してない?
「そういう訳で一週間世話になる」
はぁ、今更追い出せないよな。
中身は天使っぽい偉そうな『おっさん』だけど、見た目幼女と一緒に暮らすのか……
たったの一週間とはいえ、これからの事を思うと頭が痛くなったーー
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