機械人形は泡方の夢を見る

海底都市

第零話 ラッパ


『デルタ0、こちらブラボー1 採掘作業は順調。このまま行けば予定通り明日には地球に輸送できる。どうぞ。』


 見渡すばかりの漆黒。見渡せば青い惑星が近くに見える。

 月の採掘作業に勤しんでいる国連作業員が定期連絡を地球に飛ばしている所だ。

 地球の環境資源の殆どは取り尽くし今では月や他惑星に採掘船が飛び交っている。

 と言っても流石に太陽系からはまだ出ることは出来てはいないし、宇宙人などと言うオカルトな生き物と会った話も聞いたこともない。

 月採掘基地の作業は明日で丁度一ヶ月、定期任務を終わり地球に鉱石を持ち帰る予定だった。採掘場では人型の作業機器が地面を掘り起こし土をタンカーに乗せている。


『ブラボー01 デルタ0了解。次の定期連絡はーー』

『デルタ0 待て』


 連絡をしていたブラボー01の視界には突如として作業をやめ、作業機器から月に降り立つ作業員が見えた。

 何やら周囲が騒がしい。


「どうした?」

「中隊長! 地面に何か機械のような物がーー」


 状況を確認していたブラボー01に一人の作業員が報告していた最中だった。

 ウォーーーーーン、と、アラートの様なものが真空空間だというのに鳴り響いたのをこの場にいた全員が聞いた。


「何をした!? 答えろライアン!!」

「じ、自分はただ土埃を払っただけです!」


 報告していた作業員が、採掘現場にいた一人を怒鳴りつける。

 こちらの喧騒が無線に乗ってしまったのか、デルタ0から呼び出しがブラボーに掛かった。


『ブラボー01 、アラートの様なものを鳴らしたのはそちらか?』

『デルタ0、こちらブラボー01、採掘現場に不明な機材が埋まっていた模様。確認中作業員がーー、まて、アラートはそちらにも聞こえたのか?』


 そこでブラボー01は一度、冷静になった。

 宇宙空間で、無線に乗る程音が鳴り響く訳がないのだ。機械の作業音ですら物静かなのだから。


『ブラボー01 、その通り。無線という無線からアラートが鳴り響いていた。発信電波源は月だと思われる。』

『ブラボー01 、了解。確認する。』


 ブラボー01 、が無線を切り作業現場に向かい見下ろすとそこには電子機器の一部だけが掘り起こされている状況だった。

 彼は作業員に指示を出しその周りを掘り出す。だが掘れども掘れども、その電子機器は月の地面を覆う様に全貌が見えてこない。


「なんだこれはーー」


 ブラボー01 は状況を報告しようとデルタに無線を出し続ける、が、一向に繋がる気配がない。

 他無線系を呼び出しても、応答も無かった。

 嫌な胸騒ぎを起こし、彼ら作業員は採掘作業をとりやめ、地球に一度帰隊する事を程なくして決める。

 だが、その時には既に始まっていたのだ。

 地球では海から訳の分からない機械が上陸し、空は裂け天使の様な生き物が地上に降り立っていた。

 誰が呼んだかは定かではない。

 この一連の出来事を、人々は最後の審判と呼んだ。

 滅びが始まった、瞬間であった。

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