第7話

 一時間もすれば工場の中の捜査も終わり、警官達はこれまでにないケースの事件に顔を顰めるばかりだった。


「危険物で武装したテロリスト五名を確保…中は銃撃戦の跡でしっちゃかめっちゃか。ここは日本だぞ。たかが未成年の女の子を追っかけ回して、もう何度目だ!?」


 ここ一週間、都内で頻発しているテロ事件の数々。その全てが危険物を持って逃亡している少女を確保せよと言う説明不足も甚だしい上層部の命令が下りてからの事だ。


 一体何が起きているのか。上層部は何も教えてはくれず、とりあえず追いかけた先で倒れているテロリストを確保する生活が続いてばかり。せめてこの状態にどんな意味があるのかだけでも教えて欲しいものだが、期待するだけ無駄だろう。


「チッ、おまけに、公安のお出ましか」


 そこへ現れたのは小綺麗なスーツを着た警官と言うよりも役人と言った方が分かりやすい雰囲気を醸し出す男達。中でも一番の若手の男が身分証を掲示しながら警官達の元に駆け寄ってくる。身分証には葦原和也と書かれてある。


「警視庁公安部、外事第三課の葦原です。ご苦労様でした。国際テロ案件ですので、ここからは我々に任せてもらいましょう」

「ハイハイ、毎度毎度のこと、ご苦労な事で」


 公安警察の面々がぞろぞろと工場へと入り込んでいく。確保されたテロリストも公安の面々に引き取られ、あちこちに転がる銃弾や使い捨てられた忍者ガジェットの抜け殻を回収していく。


「やはりここにも忍者が居たか…ん?」


 足元に落ちていた缶コーヒーの缶を拾う葦原。他の面々が忍者ガジェットの回収に躍起になる中で、葦原は不自然に濡れた床を調べていた。


「協力者か。しかし、忍者の生き残りは居ない筈だが…」


 周囲の同僚達の目を盗み小型端末を取り出す。


(状況が動きました。何かしらの動きがあるかと)


 ボスへの報告を済ませつつ葦原は素知らぬ顔で公安の面々に合流して行った。その目つきは鋭く、何を図って居るのか分かるものなど居るはずも無かった。



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