第4話 天才の手紙

 人は目を見ただけでその人の性格がわかるというが、本当にそうだろうか?私自身、いろいろな人を見てきたが、正直わかったことはない。だが、今、私の前にいる彼の目を見た瞬間、性格、人間性、才能、将来の姿、全てが見えた感覚になった。人間、凄いものを見ると目が点になると言うが本当にそのような感覚だ。

 「いきなり、お手紙を送ってしまいすみませんでした。それで中身の方は拝見して頂きましたでしょうか」

光貴は使い慣れない敬語で春日に問いかける。

「まず、聞きたいことがあるんだが、いいかな?」

いきなり質問を質問で返された光貴は心に掛けていた鍵が外れたように感じ、春日に心を開いた。

「はい。なんでしょうか」

「なんで、あんな手紙を送ってきたんだね」

いきなり確信をついた質問に光貴は

「失礼なことだと思いましたが、僕には夢があります。そのために1番の方法を考えたときこの方法しかないと思い送りました」

光貴はきっぱりと言った。すると、春日は重い口調で

「山下君の夢を教えてくれないか」

光貴に問う春日。


「天才・春日隆を超えることです」


彼はそうはっきり春日に言ったのだ。すると、春日は笑い出した。春日自身もなぜ笑っているのかわからなかった。だが、この時、自分が本物の天才を目の前に起き、自分を超えると言われたことに嬉しかったのだと思う。長年、心に引っかかっていたモヤモヤの正体はこれだったのだ。

「山下君。」

春日は真剣な顔で光貴を呼んだ。一瞬でその場が緊張感に包まれる。光貴は目を背けず春日をずっと見ている。

「私のところで作詞家を目指さないか。」

突然の春日の言葉だったが光貴は

「もちろんです。お世話になります。」

 光貴は契約書にサインをし、部屋を後にした。

「春日さん。本当によかったのですか」

和田が聞いてくる。

「彼の言葉には何かある。目を見ればわかる。それに、この言葉を見れば、、」

光貴からの手紙に目を向ける。


″あなたを超えるために僕に作詞を教えてください″


「和田。面白いと思わないか?自分を超える作詞家を自分で作るって。それに、自分の成長のために超えなければいけない人に教えを求める。こんな人間は初めてみた。」

春日は何故か嬉しそうに和田に話す。そして最後に春日は衝撃の一言を発する。


「彼は私を超える、天才だ」

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僕が天才に勝つには。 かみむら。 @yuta822soccer

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