シナリオ20


「ヤオヤ(肥溜)なんて大嫌い! もう見たくもない!」


 アグリは正直に答えた。

 このゴブリンならばアグリの胸の内まで理解してくれると信じて。


「やっぱりゴブ! お前ならばそう言うと思ったゴブ」

(*音声変換機能によりピコピコが同時通訳しています)


 喜びをあらわにするゴブリンチーフ。それにつられるように周囲のゴブリンたちもウンウン頷いていた。


「なぜお前らが喜ぶ?」


「ゴブたちもヤオヤで酷い目に会ったゴブ」「ゴブの一人息子も……変わり果てた姿に……」「人生どころか……性格まで変わってしまったゴブ」「あの施設は公序良俗に反するゴブ」


「「「ソウゴブ! ソウゴブ!」」」


 ゴブリンたちの不満は一斉に爆発し、まるでシュプレヒコールのように村中に響き渡った。


(どういう意味だ? こいつらも穴掘りばかりやらされているのか?)


「ヤオヤが嫌いならば、絶対に洋館に近づくなゴブ。奴らはお前のように出来るおとこを集めているゴブ」


「奴ら?」


「この村を牛耳る上位モンスターゴブ。とにかく、そんな格好でいるとヤツラに捕まるゴブ。この呪われし村からすぐに立ち去るゴブ。ゴブたちも仕事に戻るゴブ。センムが煩いゴブ。いつもゴブが叱られるゴブ」


 ゴブリンチーフの言葉でアグリを取り巻いていたゴブリンたちは、仕事へと戻って行った。


「素晴らしい魂の踊りを堪能させてもらったゴブ。願わくは、誇り高き勇者の魂が解放されることを祈らんゴブ」


 ゴブリンチーフは踊りの謝礼として、アグリにアイテムを手渡した後、彼らを追い立てるように、颯爽さっそうと立ち去った。


(ゴブリンにも気持ちいい奴らがいるんだな……)


 アグリは『理性の腕輪・レアアイテムE』を手に入れた。


  ☼


 アグリは村の北部へと進むことに決めた。

【シナリオ21へ】

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