勧善懲悪とは何か?

読了して思ったのは、「勧善懲悪とは?」でした。
人間というのは欲深く業の深い生き物で、一度でも味を占めると求めずにはいられません。

消去したはずのスマホやPCのデータ。しかし、それらは特殊な修復ツールを使えば復元することも可能なのだそうです。
リサイクル品として集めた機器から復元したデータ引き抜き、使う。
使い道はいくらでもあります。色事だろうが強請りだろうが、何にでも使えてしまいます。

そうして使い道のあるデータを、お宝に見立ててサルベージするのが大好きなヨウタ。親友で、リサイクル業を請け負うサトル。最愛の彼女ユミ。
物語を大きく動かすキーパーソンは、ヨウタとサトルでしょうか。

ただ人の営み、繋がりというのは、まるで点と線でできた電子データのように世界中を漂っているもので――どこで業を背負っているか、どこで徳を積んでいるか分かったものではありません。

きっと、人間とその人生を形作るだけの膨大なデータは、1テラバイトのSDカード容量を超えています。
人間を確実に観測できるもの、全てを記録できる存在なんてものは、どこにも存在しないのでしょうね。

最後まで読んだ時に「勧善懲悪だ!」「自業自得だ!」とスッキリするのか、それとも「勧善懲悪って難しいんだな」と気付くのか。
完全な悪人と完全な被害者、その定義はとても難しいです。

考えさせられる作品でした。