6.おわりに

 さて、まずここまでお読みいただきありがとうございました。多分、人によっては「そんなのお前の妄想だろ」と切り捨てると思うんです。正直。


 だからここまで読んでくださった人に対してまずお礼を申し上げておきたいと思います。本当にありがとうございます。もう少しだけお付き合いいただけたら幸いです。


 ここまで自分は「センス」と「アドバイス」の関係性について色々と仮説を立ててきました。ここからは現状に対する自分の認識のお話です。


 既に多くの機会で自分が書いていることではあるのですが、今の創作は間違いなく質が落ちています。はっきりと断言しておきます。ここまでつまらないものばかりが平然と転がっている時期は自分が見ている限りだとまあなかった。


 なんでそんな話をここに持ってきたのかというと答えは簡単で、これも「センス」が関係しているんです。どういうことか。


 創作に限らず、基本的に何かの出力は「センス」「半センス」「非センス」の総合点がそのまま表に出るものです。創作で言えば「三つの数値を足し合わせた合計値が高い奴ほどいい作品を作るよ」ってことです。


 今、このうちの「センス」だけがぽっかりかけた“プロ”が非常に多い。自分はそんな気がしてなりません。


 前述したとおり、「センス」というのは「半センス」の「経験値のたまりかた」くらいでしか調べる術がありません(なにかあったら教えてくださいね)。


 そして、そのせいか「センスなんて分からないんだから、他で補っていこうぜ」という動きが大変どこでも目立っているように思います。


 これはつまり、宣伝の打ち方とか、もっと簡単に言えば「PV稼いでいるものだから書籍化してみる」というやつです。


 その部分を調べるのにははっきりいって「センス」はいりません。いや、むしろ「センス」がないと出来ない部分はやっていないのだと思います。だって見立てる側も判別が出来ないから。


 自分が判別出来ないから読む方も判別出来ない。だからそれよりも目に見えるものを重視する。そんな動きをしているように見えるのです。


 ただ、残念なことに、「センス」の足りない作品と言うのはどこかに物足りなさが残ります。


 既に上述したとおり創作の面白さは書き手の「センス」「半センス」「非センス」の総合点で決まるものです。従って、「センス」が弱い書き手の作る作品はどうやっても頭打ちが早いのです。


 「半センス」と「非センス」が創作において何を示しているのか。これを野球における体を鍛えることや、守備機会のような分かりやすい具体的なものとして決めることはまだ難しいかもしれません。


 ただ、一つだけいえるのは「半センス」「非センス」のような「センス」が無くても出来る、数字的に分かりやすい部分を高めるのと同時に「センス」がある書き手に書かせること。それがすごく大事なのです。


 既に何度か書いているとおり、多くの人が言語化して「アドバイス」をするのは「センス」についてです。


 そして、その理由は「センス」が一番後天的に伸ばしにくいからなのです。それが分かっているからこそ、需要があるし供給もされるし理論も蓄積されるのです。


 ですが、根本的にはやっぱり「センス」というのは言語化出来ないし、自分で身につけるしかないものです。


 そして、それを最初から持っている書き手が「半センス」や「非センス」に分類される「経験」や「知識」を付けたときに生み出される作品は、残酷な話ですが、間違いなく「センス」が普通の人間の生み出す作品の限界点より上なのです。恐らく、この部分は不変のもののはずなのです。


 別に何も「センス」を見極めて青田買いして、育てろとはいいません。


 ですが、もう少し「センス」も伴っている人間を分からないなりに頑張って選ぶ。それくらいはしてもいいのではないでしょうか。今の創作に携わる“プロ”はそれをしているようにはとうてい思えないのです。


 野球で始まったので最後に野球の例えを引っ張ってきます。プロ野球(NPB)の横浜DeNAベイスターズの前監督(2021年7月16日現在)アレックス・ラミレス(以下ラミレス)は日ごろから「采配はデータが8割で感覚が2割」だと言っていました。


 それを象徴する出来事が一つあります。2017年の日本シリーズ。3位からの下剋上で駒を進めたDeNAはなんと「レギュラーシーズンの活躍もさして目立っていなかった」「どちらかといえば守備の人と化していた」白崎浩之をDH(守備につかない打撃だけの打順)で起用します。


 これをラミレスは「フィーリング(感覚)」だと言っていたのです。結果はどうでしょうか。なんと、白崎は「同点に追いつくソロホームラン」を打って見せたのです。


 正直2018年以降のラミレス采配に関しては、私的に嫌いなのですが、この瞬間。日本シリーズまでのラミレスはまさに監督の「センス」があったと言えるのではないでしょうか。このソロホームランは、データだけで起用していれば間違いなく生まれていないはずなのです。


 結果だけ見れば一勝三敗の敗退ですが、それこそあと一歩までパ・リーグ王者の福岡ソフトバンクホークスを苦しめた要因はその「センス」なのです。


 別に「センス」だけを見るべきだとは思いません。データのような「センスではどうしようもない部分」も重要なのは間違いありません。


 ですが、「センス」──ラミレスの言う“feeling”をもう少し信用してあげてもいいのではないでしょうか。

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センスを狂わせる無責任な“アドバイス” 蒼風 @soufu3414

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