デート②

 食後は少し休憩を挟んで絶叫系を含むアクティブなアトラクションを一通り回った。四人とも絶対最後に乗ろうと意見は一致していたので、帰る予定の時間前に観覧車まで移動する。

 先に沙綾と遥香ちゃんが乗って、私と咲良は次に来た観覧車に乗った。

 青空は夕日に変わっていて、綺麗なオレンジ色を二人で眺める。


「咲良ごめん。やっぱり、お化け屋敷入るのやめといた方が良かったよね……?」


 可愛かったけど、でもそれは私しか楽しんでいないような気がして、あの後ずっと心にひっかかっていた。


「なんで?」


「だって……楽しめなかったよね、きっと。私、自分が得意だからって咲良のこと全然考えられてなかったと思う」


 反省する私に咲良の穏やかな声が語りかける。


「私は、菜瑠美が楽しいなら、楽しいよ」


 私が顔を上げると、咲良は念を押すように言った。


「菜瑠美の楽しいは、私の楽しい。好きな人とだったら、何でも楽しいもん」


 胸が一杯になって思わず「咲良が好きすぎて辛い……」と呟くと、言葉通りに受け取った咲良が心配そうに私を見た。


「辛い?」


「ううん、好き過ぎて無理。幸せ」


「私も幸せ」


 好きな子と幸せを共有できる今この瞬間が愛おしい。咲良の笑顔をもっと近くで見たくなって、向かい合わせに座っていたのをやめて隣に行く。

 恋人つなぎをすると、どちらからともなく額を寄せ合った。咲良の瞳に私だけが映っている。

 風で微かに観覧車が揺れて、何事かと別の方向を向いていたら……不意に、頬に柔らかい感触がした。


「さ、咲良……!?」


 私が驚きと照れで思わず立ち上がると、咲良は上目遣いになって言う。


「菜瑠美からも、して」


 隙間風で涼しいくらいだったのに、急に暑くなってきた。落ち着け自分、と言い聞かせながら咲良の隣へ座り直す。


「咲良、眼瞑って」


 私が言うとすぐに目をつぶる咲良。まつげ長い、相変わらず髪さらさら、唇柔らかそう……なんて現実逃避してしまったけど、待ってくれている咲良へ近づいていく。距離が縮まるほどに心臓が飛び出そうになって、でも触れ合った瞬間から不思議なほど幸福感に包まれた。

 抱きしめ合うと、咲良も自分と同じぐらいドキドキしているのが分かって嬉しくなる。


「咲良も私も、ドキドキしてるね」


「だって、大好き同士だもん」


 咲良といると、もっとこの時間が続いてほしいといつも願ってしまうけど……今日はこのままだと心臓がもたなくなりそうだ。せめて観覧車が地上に近づくまで、余すことなく幸せな温かさに浸った。

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