外伝 水を生む少女 

プワワーンと

水の玉ができる

「見ましたか?今の瞬間を

今もまだ彼女の中で水の玉は

大きくなっています」

バケツが用意される2つ

かほこは片方に一杯に

片方に少し水を移した

おおっと観衆むから拍手がおきる



ママがいう

「帰ったら宿題やって早く寝るのよ

明日はSスタジオにでむかれてるからね」

「えっとかほこちゃん水の玉は

違う形にならないのかな?」

「そう聞かれてかほこは両手を開く

それにあわせて細長く水の棒ができる

観衆のおーっと声



水で縄跳びしてみたり

どれぐらい大きな玉ができるか挑戦したり

最初の一年は人々が大喜びをしたが

水が作れるただそれだけのこと

人はすぐに飽きて忘れられていった



ぴしゃん

「冷て、なにするんだよ」

「ここ道路だよいつまで寝てる気?」

ぷぷーっ

さっそく鳴らされて

あわててふたり歩道にはいる

「普通さ酔いつぶれても歩道で

壁によっかかって寝てない?」

「普通さ水汲んでくるより

揺り動かすのが先じゃないか?」

「揺り動かしたよ」

「うっ」

「水はほら」

片手で何かを乗せる格好をすると

ボワワワーン

と水の玉ができる

そのまま大きくなるかと思うと

砕けてかほこの手を水がぬらした

「えーっと君かほこちゃん

一時期テレビで話題になってた」

「そそ。そしてあっさり飽きられた

かほこでございまーす」

「飽きるなんて全テレビチェックしてたのに

あっさり消えちゃうんだもんな」

「本当に飽きられたんだよテレビ局からの

オファーがなくなってさ

それと同時くらいに過労かなにかで

水がだせなくなった」

ホワワワン

「ちっちゃな水玉。これがかほこに残った

最後の力」

「そっかー思春期になると力が消えちゃう子も

多いしね。かほこちゃんもそうなのかも」

「それならそれでいいよ」



誰ともしらずそんな会話の日の夜

「ひぇー体育際前とはいえ8時まで練習は

きつすぎだよー。」

ピーポーピーポー

ん?消防車?そっちの方に歩いてく

逃げ場を失った人が居るらしい

あー神様仏様なんでもいいけどかほこに力をわけて

ポツリポツリと雨が降ってくると同時に

手のひらには

ぽわわわんと水が浮かび上がる

バケツ一杯分ぐらいの水をかぶって

立ち往生している消防車職員を横目に

窓から飛び込んでいく

「早くもう逃げ道ここしか残ってないのだから」

そこも窓の酸素で火が高くなりはじめている

水玉を作ってばしゃりと相手にかける

「はやく!」

ぐずぐずしているのでもう一度水をばしゃり

押していくかたちで窓際まで行くと尻を蹴りこむ

いきおいよくまどからころげおちる

「君ももう無理だ」

職員の声は無視

逃げ遅れた原因「赤ん坊を抱いて」

また水をばしゃりばしゃり

もう火の海だ顔までくるんでていやーと飛び出してく

「おおおっと歓声」

すぐに顔だけ赤ん坊の包みからだす

あのままじゃ窒息しちゃうからね

赤子をお母さんに返し

「君は今朝の」

「あれ二日酔いにーさん」


消防所から嫌ってほどのお説教と

1枚の感謝状をもらった

二日酔いのにいさんは竹田和重という名で

酔っ払って午後から出勤

大目玉を食らって帰ったら家は家事

ほぼ全焼なので保険金はでるしと

ひきつり笑いをしてた

まぁ当たり前だろう

ローンがのこってるのにさらにローンの積み重ね

保険金など頭金くらいにしかならないだろう

両親からも泣きながら説教された

自分が死んでいたかも知れないんだぞっと

そんなことは火に飛びこんだ私が一番しっている

炭化したはしらどんどん高くなっていく炎

窓を開けたことで窓の周りの火も威力をました

水を大量にかぶっていたことで

ヒリヒリする程度の火傷ですんだが

防災服を着ているおっちゃんがためらってるのだから

駄目でもおかしくなかった



怖かったけどほっとけなかった

自分に力があるなら今使うしかないと思った

小さな玉しか作れなかったけど

大きな玉が作れた。かじばのばかちからとは

よく言ったものだ



「はい。今日のゲストは忠奈(ただしな)かほこちゃんです」

「10年ほど前世間から脚光をあびてたかほこちゃんですが」

「過労で水の玉がだせなくなっちゃったんですよね」

「力は復活していたのですね!」

「いえ」

ポワワン

手のひらにちっちゃな玉が作られる

「かほこの今作れる最大の力です」

「でも火事の時は雨さへ引き寄せたと証言がありますよ」

「ただの偶然です確かにあの時は昔ほどの大きさの水玉を

何回も作りましたが気が抜けちゃったら

玉も小さくなっちゃいました」

「それは残念ですねかほこちゃんの為にあれまで用意したのに」

それは火くぐりの輪だったライオンとかが通る奴

「ふざけるのもいい加減にしてください!

リハーサルではこんな話聞いてません

本番ならやるとでも思ったのですか?

ほらこの腕、火傷の跡です。やっと皮が向けてきたとこなのに」

「まだ火くぐりしろっていうのですか!」

「か、かほこちゃん落ち着いてね

こちらも無理強いするつもりで用意したんじゃないから

ただ果敢なかほこちゃんならきっとやってくれると思って」

観客席からやれ!と声があがったひとりふたりさんにん…

「ほら、観客も応援してることだし」

「いい加減にしろ!!やるほうは命がけなんだぞ!」

ひとりステージに上がってきてくいっと自分の腕の中に

包み込む。竹田さんだ。」

「さっき見せたろ。あんなちっちゃな水玉で全身濡れやしない

やりたいならバケツの水かぶってあんたがやればいい」

観客席にむかって

「おまえらもだやれやれいうくらいなら自分でやってみろ

どんなに怖いか体験してみるがいい。

水なら水道からいくらいくらでもくんでこれる!」

「行こうこれ以上茶番に付き合うことはない」

強く肩を抱いてひきずりそうな勢いで歩いてく

「どれが自分の車?」「あっちのあの車」

連れてこられて

「竹田さん勇気あるあの観衆の声が一瞬で止んだ」

「しばらくすると両親がやってきた」

「ごめんよかほこ昔みたいに楽しくやれると思ったんだ」

「ギャラもよかったしついね」

「知ってたんですか火くぐりの件」

「かほこが昔ほどの水玉がつくれるならという条件でしたけど…」

「やっぱりできないのにやらざるえないようにするって

なんてテレビ局は汚いのでしょう」

「汚いのはあんたたちだって同じだ!」

「自分の娘にライオンや虎がひくぐりするような気楽さで

承知しちまうほうがいかれてる。」

「ごめんね。ごめんね。でも火事の時できたなら

炎をみれば大きな水玉がまたできるかもと」

パッシーン竹田さんが平手打ちを母にする

「あんたもだ」

ツカツカあるいていってパッシーンと父を平手打ちする

「今日は感謝します」

頭を下げた。あのプライドの高い父が平手打ちされて

頭を下げた。それをみたらほろりと涙があふれた

どんどんあふれてきて止まらなくなった

わーんと人前も気にせずに泣き続けた



後日、テレビ番組では人に炎の輪くぐりをさせる

ことについて議論が交わされた

結局はやりすぎだろうということで収まりつつある

今日は家に竹田さん家族を呼んで

パパお得意のバーベキュウー

家が建つまで家具は買わないとかで

結構不便な生活してるらしい

それでも生活できなくて鍋とサラと箸は買ったようだ

洋服もダンボル箱でだしいれしてるらしい

竹田さんの言うとおり思春期に入ると全然水玉は作れなくなった


そして現在バシャーン

一回で風呂桶に水がたまる

力が回復しだしたのが20歳頃

22歳の今屋上ででかいと自分で思うほどの水玉ができる

消防士に転職しようかしら?

まぁ冗談は抜きにしてあのころの火傷は跡に残った

二人分の命と引き換えなら安いものだろう

でも二度はしないと思う

同じ場面にでくわすこともないだろうし

親からも竹田さんからも止められている

助けられといて矛盾しているが

それでも私の方が大事なんだと

何よりも公の場にでることが怖い

観衆は平気で残虐な鬼になる

泣いた分だけ私も学習した

今度は家ごと包み込めるのに

やるならやじうまにまじってこっそりとね

今日の水玉製作練習終了

さて水浴びでもするかなー

んじゃまたねー


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妖怪屋敷 御等野亜紀 @tamana1971

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