そ、そんなことないはず...だよね?

「千尋、朝ご飯もできたし、そろそろ千秋起こしてきてもらえるかしら?」

「ん、わかった、がんばる。」

「ええ、頑張って。」

「私が言っといてなんだけど人を起こすのに頑張って、なんて言葉使うのおかしいと思うんだけれど...今に始まったことじゃないし気にしなくてもいいかしら。」

 そんなことを言ってるうちに千尋は階段をとん、とん、とゆっくり上っていく。

そんな様子を見ながら私は千秋だけじゃなくて千尋も大概マイペースなんだった...と思い出したのであった。






 「にぃ、もう朝だよ。」

「んん...あと5時間...」

なんか...体重たい...

「けっこう欲張り。」

「もう、ねぇねぇご飯作ってまってる。」

どれだけ体を揺さぶってもにぃは起きない。

「こうなったら...」

「んぅ...」

もにゅ

「ふむ、やっぱりにぃ、おっぱい私とおんなじくらい大きい...」

なんだか...くすぐったい...?

「ん、やっぱり自分のと人のじゃ揉み心地が違う...」

むに、むに

やっぱり夢じゃないよね...?誰か僕の体触ってる...?

変な感覚を感じた僕はゆったり体を起こす。

もに、もに、

「にぃ、やっと起きた。」

寝起きのぼやけた目と、回っていない頭だけど、目の前に千尋がいることは分かった。

僕のこと起こしに来てくれたんだ...

「ん...ちー...おはよぉ...」

むにゅ

「ん、おはよ。まだ寝ぼけてるね?」

「そんなこと...ないよぉ...?」

そうだよ、目は開いてないけど、体は起こしてるんだし起きてるといってもいいよね...

「ほら、起きて。」

もにゅ、もにゅ

「ちー...」

「なに?」

「おはよー...」

「にぃ、それ2回目だよ。」

「そうだっけ...?」

「そう。」

...なんだかくすぐったい...?

そうして違和感を感じた僕ははっきりと目を開く。

予想した通り千尋が目の前にいた。

いたにはいたんだけど...

起こす時に僕の太ももに乗っかっていたらしく、顔が近いのはまぁいい、まぁいいんだけど...

むにむに

「千尋?」

「なに?」

この妹...

「今何触ってるのかなー?」

僕が起きるまでずっと...

「ん、にぃのおっぱい。」

......うん

「ずっと触ってたの?」

「ん、そう」

この妹、僕が起きるまで一生僕の胸揉んでた!?

むにゅ

「っていつまで揉んでるの!」

「つい触り心地がよくて...」

てへ、といわんばかりに舌を出しながら反省するそぶりも見せない千尋。

「うん、それで許されないよ?」

「とにかく!これから触らないようにしてね?」

「善処する。」

「それ直さない人の言い方だよね!?」

「なんというか...惹き込まれるものがそこにあって。」

せめてものフォローといわんばかりに一言、

「触り心地はとてもよかったよ。これぞ極上ってぐらい。」

「感想は求めてない!」

「でもにぃの恰好も良くないと思う。」

「うぐ、」

「むしろにぃが触ってほしいって言ってるように見えたよ。」

「そ、そんなことないよ...?ないはず...」

それは否定しづらい...

というのも僕の今の恰好はLLサイズくらいの大きめのTシャツとショートパンツ。

Tシャツは膝くらいまで丈があり、胸元はゆるゆる、下は何も履いていないようにも見えなくはないんだと思う。

しかたないよね?寝る時くらいはラフな格好でいいよね。

「それにしても...」

千尋は僕の胸元を見ながら言う。

「にぃ、寝る時もせめてブラはつけよ?」

「う...だ、だって...」

着けてると絞められてる感覚が...

「ちゃんと着けないと将来形が悪くなる。」

「そんなに長い間この体でいるつもりはない!」

「それでもちゃんと着けて。」

「は、はい...」

こうやって妹に丸め込まれる僕の兄としての威厳が...

「て、ていうかそろそろ降りて!顔近いよ...」

「ん、ごめん」

そう言って僕の体から素直に降りてくれた。


「もう!早くご飯にするわよー!」

お姉ちゃんの声が下から聞こえてくる。

僕が起きるのに30分くらいはかかったのだろうか、お姉ちゃんが痺れを利かして1階から声をかけてきた。

流石に待たせすぎたな、なんて思いながら、

「にぃ、早くいこ。」

「うん、わかった。」

「お姉ちゃん、待たせてごめーん!今から行くー!」

階段を急いで降りる。


こんな風に今日も僕の朝は始まるのだった。

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