ごめんなさい

 次の日の朝、無事病院から出れた私は遅刻しながら学校へと向かった。にぃとねぇねぇは先に学校へ行っている。話し合いは昼休憩に持ち込むようにしてくれるらしい。朝から私の面倒を見ていてくれた親戚の人はかなり心配をしてくれていた。昨日のうちにねぇねぇが学校の用意は持ってきてくれていたし、幸い病院から学校まではかなり近いから、歩いて行こうと思ったけど、親戚の人に車で送ってもらうことにした。

 学校はどう?とか他愛のない話をしながら10分くらいで学校へ着いた。


 送ってもらったお礼を言って、校門をくぐる。なんだか昨日も来たはずなのにやけに久しぶりに感じる。静かな学校の階段をたらたらと登っていく。人のことをあまり気にしない私でもさすがにあんなことの後では緊張してしまう。廊下を歩き、自分の教室の前に着くと、先生が授業している声がする。その前で決意を固め、1つ深呼吸

をしてから教室のドアをあける。みんなが私の方に視線を寄せている。だが1人だけ気まずそうにこちらから目を背ける子がいた。その子を見つけた私はかばんも降ろさずにその子の前に立った。

その子、とは昨日私のことを殴った子。

「な、なんだよ...?」

やっぱり気まずそう。でも仕方ない。昨日病院送りにした子を前にしたら誰でもこうなる。

私はさっと頭を下げた。

「ごめんなさい。」

しばらくした後顔をあげるとその子は唖然としてこちらを見ていた。

先生も事情を知っているのかかなり驚いた様子。

「な、なんでお前が謝るんだよ...?」

「私が、あなたを怒らせたから。」

「で、でも俺はお前を殴ったんだぞ?」

「しってる。でも原因は私でしょ?」

「あー...その、俺も悪かったよ...ついかっとなって...」

「おたがいさま、だよ?」

「そ、そうだな。...てかお前の声初めて聞いたわ...案外声高いんだな......」

「そうなんだ。」

「た、他人事!?お前の話だよ?」

「これから、授業も頑張るね?」

「マイペース!?まぁある程度分かってたけど!ここまでとは...」

「授業中だよ?静かにね?」

「???お前が言うの?」

「あ、あと千尋。」

「う、うん?」

「私の名前。お前じゃないから。」

「それぐらいわかってるわ!!」

「これから呼ぶときは千尋で。」

「こ、これから。」

そう、私は決めた。にぃ達を安心させるために人間関係を切り捨てるんじゃなくて色々人と関わりを持とう、と難しいのかもしれないけど、少しずつ、頑張ってみようと。


 私は自分の席に着いて、教科書を出して授業を受けるための準備をする。

先生は戸惑いながらも授業を仕切りなおす。


......あんなこと言ったけど今日は手挙げられなかった...

明日も頑張ろう。



 そんなこんなで授業は進んでいき、時間はとうとう昼休憩になった。

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