だから学校行きたくなかったんだ...

「うぅ...やっぱり行きたくないかも...」

「にぃ、似合ってる。」

「千尋?それ全然褒められてる気がしないけど?」

「髪の毛もボブぐらいの長さだから違和感が薄いのかもね。」

「にぃ散髪サボりがち。」

「千尋には言われたくない。」

千尋も僕も髪の毛切るのあんまり好きじゃないから伸びっぱなしなんだよねぇ。

お互い肩にかかるぐらいまで髪の毛が長い。前髪と枝毛だけは邪魔になるたびにお互いで切りあってる。お姉ちゃんはこまめに髪切るから僕達がお互いに切っているところを少し羨ましそうに見ている。

僕は学校の準備は前日に済ませるようにしている。優等生だから、とかじゃなくて、学校行く準備を前日にしておくと、ゲームができる時間が増える。

「ほら。もう制服着たんだし、後は外に出るだけ。」

「先生に事情の説明しなくてはならないから早く家をでましょう。」

でもな...担任はちょっとだからな...

「もぅ...分かったよ...」

 そう言って僕は渋々ドアを開いた。


「はぁ...」

「こら、千秋溜息なんてつかないの。」

「そりゃ溜息の1つや2つでるでしょ...」

ヒソヒソ

「おい...あれ神代姉と妹だよな...?」

「うん...でも神代弟が...?」

「そうだよな...?スカート履いてるぜ...?」 


「ほら...周りの人から言われてるよ...」

「大丈夫。どうせ千秋可愛いとかそんな話。」

「えぇ...絶対にお姉ちゃんの勘違いだよ...」

そんな事を言い合いながらとうとう学校へと到着した。いやしてしまった。

ヒソヒソ

「あいつ神代弟か?」

「とうとう自分の性別を理解したのか..」

「でもあいつ自分は男だって譲らないし...」

「もしかしたら男が女に性別変わるとか...?」

「いや...さすがにそんなアニメみたいなことある訳ないだろ?」

 ほら、沢山の視線を感じるよ...

もう帰りたいよ...いや、まぁ今来たばっかりなんだけど...

「ほら、職員室へ行きましょう。」

「わ、分かったよ...」

「私もついて行く。」

「ええ、千尋もついてきなさい。」

そうして正面玄関で靴を履き替え、学校の廊下を歩く。廊下でも注目を浴びながら階段を上り、ようやく2階にある職員室へとたどり着いた。

僕が深呼吸を1つしているうちに、お姉ちゃんが横ですっと職員室の扉を開けた。

え...僕の心の準備は...?

「失礼します...中村先生にいらっしゃいますか?」

あれ、僕の知らない間に話が進んでいってるね?

先生の作業机の前まで3人で行く。先生はこちらの方に視線を寄せて僕の制服姿を見て間髪を入れずに、

「おお、千秋か、とうとう本当の姿になれたんだな!」

はぁ...これだからうちの担任は...

「先生、朝から冗談は辞めてくださいよ...」

「はは、冗談はお前の格好だろ?胸にパッドでも入れたか?」

ムカッこの人、ものすごく人をイライラさせるの上手いね?

そう、このムカつく人は僕の担任中村舞子

《なかむらまいこ》先生。

こんな感じのテンションで来られるから僕はこの人と話したくなかったんだ...

「まぁ座れよ。その姿についてゆっくり話そうじゃないか。冗談じゃないんだろう?」

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