第22話

 夕食には久々家族全員が揃って食事についたわ。


「リア、昨日はライアン殿下と出かけたんだよね?メイジーから報告は受けたよ」


お兄様もお母様もメイジーから話を聞いたのか少し不機嫌そうな様子で聞いてきた。


「ええ。雑貨屋へ行って、子豚柄のリボンをプレゼントされましたわ。それから、殿下のお勧めというレストランで食事をしているとサラ様と言う方に水を掛けられ、一人で帰ってきましたの」


「殿下は何も言わなかったのかい?」


お兄様は少しキツめな声で聞いてきた。


「サラ様に止めて欲しいなとは言っていましたが、特に止める様子はありませんでした。それとサラ様は『ライアンが女を増やす事をこれ以上許せないの。ごめんなさいね。ああ、でも一つ教えてあげる。


ずっと私も我慢していたけれど、私が知っているだけでも過去5人は同じデートコースでしたわよ?雑貨や商会、ブティック店に寄って、ここで食事してから最後は公園で頬にキスするのが定番らしいですわ』と言っていましたわ。 


ライアン殿下は複数の女性とお付き合いしているのではないですか?私、街で流行っている恋愛小説のような修羅場に遭遇して本当にびっくりしましたわ」


 私が発した言葉に一瞬静まりかえる。あ、もしかしてマズイ事を言ったかしら。お兄様は私の話を聞いて食べていたお肉にガシャンとナイフを突き立てているわ。


お父様の後ろにはゴゴゴゴと音が聞こえてきそうな程のドラゴンが見える。怖い。


マズイわ。


きっとお兄様の目を盗んでライアン殿下はご令嬢達と親密になっていたのだわ。側近としてはこの話に目を瞑る事は出来ないわよね。


ましてや妹の私にも同じような事をしようとしていたと思うと、家族としては嫌よね。


私がお父様やお兄様の立場でも嫌だもの。



すると、お母様が空気を変えるように聞いてきた。


「リア、今日はニール・カルサル様とデートだったのでしょう?どうだったの?楽しかった?」


「お母様、楽しかったです。一緒に行った『ドラゴンの赤い糸』特別展は楽しくてドラゴン談義に花が咲き、一緒に出口の売店でドラゴンの爪を模した万年筆を買いました。それと、今日も食堂でシチューを食べたのですが、これまた美味しくてびっくりしました。


もう一度食べてみたいです。あと、食事中にニール様目当てに声を掛けてきた女の人がいて、私が邪魔だったらしく、その人から水を掛けられましたわ。


昨日は濡れてしまいましたけれど、今日はニール様が魔法で止めて下さったの。宙に浮いた水はジュワーと蒸発して格好良かったです。


それに魔道具屋さんにも連れて行って貰ったのですが、魔道具が凄くてまた行きたいと思いました」


お母様はかつてない微笑みを浮かべて


「良かったわ」


と言っていた。メイジーもどうやら同じ気持ちだったようで、うんうんと頷いている。


 お父様とお兄様は無言を貫いているけれど、後ろにドラゴンは見えなかったわ。落ち着いたのかしら。ホッと和やかな食事が戻ってきた。


 翌日からの私はのんびりと過ごしていたが、お父様やお兄様の周辺は慌ただしくなっていたみたい。スタンビート後から私を婚約者にと望む人が増えたとかどうとか。中には強引な人もいるらしく、断るのが大変らしい。


私はもうすぐ王宮に住まいを移して数年は独身を謳歌する予定なのに。

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