第四話 ルルちゃんと海

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 夏休みになりました! 楽しい夏休みです。カイやナミたちには様々なイベントが待っています。


 その中の一つに、おばあさんのうちに泊まりに行く、というのがありました。おばあさんはお父さんのお母さんです。カイたちの家から電車で一時間ほどのところに住んでいます。ルルちゃんにリュックを作ってくれたおばあさんです。


 子どもたちとその相棒たち、そしてお父さんとで出かけることになりました。お母さんはるすばんです。ルルちゃんはお父さんに言いました。


「ウララちゃんも一緒に行きたいって」

「じゃあ連れていこう」


 出発の日の朝、ルルちゃんはリュックにウララちゃんの本を入れました。魔力を補充するために必要なコードも入れました。ウララちゃんの着替えもいくつか。それからおやつも入れました。(あめやラムネやウエハースです。チョコレートは溶けるかもしれないのでやめました)


 リュックのポケットにはゴエモンが入ります。そしてルルちゃんはお母さんからもらったつばの広い麦わらぼうしをかぶります(ルルちゃんにはつのがありますが、つのは小さいのでぼうしをかぶることができます)。これで準備は万端です。


 ルルちゃんはみんなとともに、家をあとにしました。


 電車に揺られること一時間。おばあさんが住んでいる町につきます。海辺の、少しいなかの町です。駅から十五分ほど歩いて、おばあさんの家につきました。


 おばあさんは一人で住んでいます。家はそんなに大きくありません。でもルルちゃんたちが泊まれるくらいの広さはあります。お父さんとその妹が育った家なのです。そして、家にはお客さんがもう一人(と一匹)来ていました。


 いとこのカリンちゃんです。お父さんの妹の娘です。ナミよりも少し年上で、17歳でした。日に焼けて細いからだをしており、髪の毛が短くて、明るいいたずらっ子のような目をした女の子です。ルルちゃんはたちまちカリンちゃんが好きになりました。


 カリンちゃんは17歳ですので、もちろん魔物の相棒がいます。ルベライトという名前でした。鳥の姿をした相棒です。ニワトリほどの大きさで、からだは明るいピンク色、とさかと長い尾はオレンジ色。そしてとても長いまつげをした鳥――いえ、魔物でした。ルベライトはルルちゃんとゴエモンを見て、まず、言いました。


「ごきげんよう」


 ルルちゃんはとまどいました。こんなあいさつをされたことがなかったからです。横でゴエモンが言いました。


「久しぶりだな」


 ルルちゃんはなんと返していいやらわかりませんでしたが、とりあえず頭を下げました。そして言いました。


「はじめまして。ルルです」

「わたくしはルベライトよ。仲良くしましょうね」


 やわらかな、やさしい声でした。ルルちゃんはほっとして、カリンちゃんだけでなく、その相棒のルベライトのことも好きになりました。


 カリンちゃんたちは遠くに住んでいました。飛行機を使ってやってきます。ですから、長いお休みのときにしかおばあさんの家に来ることができません。


 カイもナミも、久しぶりにカリンちゃんとルベライトに会えてよろこんでいました。


 ルルちゃんはウララちゃんの本を開きます。ウララちゃんに、カリンちゃんとルベライトを紹介しました。家の中も見せて回りました。小ぢんまりとしてやや古くて、けれども清潔な家です。黒っぽい木の床はきちんとそうじがしてあって光っていました。室内は影が多く、ひんやりしています。


 おばあさんがルルちゃんたちにおやつを出してくれました。冷たい麦茶と水ようかんです。夏にぴったりでした。


 さあ、これから、おばあさんの家での楽しい日々が始まります。




――――




 おばあさんの家は海の近くです。そのため、海水浴場にも近いのです。海に泳ぎに行くことは、ルルちゃんがとても楽しみにしていたことの一つでした。


 ルルちゃんは意外と泳ぎが上手いのです。以前、プールに行ったときに、そのことが明らかになりました。ルルちゃんはまだ海で泳いだことはありませんが、カイが言うにはプールとは違い、水がしょっぱくて波があるのだそうです。


 ルルちゃんは海でかっこよく泳ぐ自分を想像しました。きっとウララちゃんも感心することでしょう。


 海水浴の日は、朝からよく晴れていました。宿題をやった後、みんなで海に行きます。海水浴場はほどよい大きさでほどよく混んでいました。


 浜辺にシートを敷いてパラソルを立てます。人間たちは水着に着替えて、海へと向かいました。ルベライトもついていき、ゴエモンは残ります。ゴエモンはあまりぬれるのが好きではないのです。

 

ナミは定期的にゴエモンをおふろにいれますが、それはゴエモンからすると忍耐の時間でした。

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