ストーリー175,176

ストーリー175:G15へ全速航行!


登場人物

ガット、ルイス、ラムル、ガルシア、ブロント



 5番から7番艦後方に停泊中のハンジャ内メインルーム。


 ガット「映像出ました。7番艦が攻撃を中止。ギランガへ移動してます。」

ルイス「見て!ギランガの船尾から脱出ボートがっ!……ギランガは何をする気?」

ガット「こちらハンジャ。カーラント聞こえますか?今ギランガから緊急避難用脱出ボートが見えました。」

ラムルoff「こちらカーラント。ギランガに何か有ったのね?」

ガルシアoff「ルイス、ギランガは攻撃されていたの⁉︎」

ルイス「ここから見る限りは、発煙すら無い、無傷よ。……ステルスを解除しているところからすると、位置が特定されたのかも。他の艦隊はG15の回転に合わせて動きながら攻撃中よ。」

ガット「7番艦は脱出ボートを回収中。G15はまだ回転中。量子エネルギー砲はまだこっちには向いてません。」


 ディゾルプ。


 ギランガ艦橋メインフロアの艦長席。モニター操作の画。


 ブロント静かに「全速航行!量子エネルギー砲発射用意!」


 別モニターで通信を始めるブロント。


 ブロント「ノアーナ艦隊全艦及び地球連邦軍ヒューマノイド=アーマーに告ぐ。ここまでで攻撃を中止、至急退避せよ。繰り返す。攻撃を中止、総員至急退避せよ。」


 ブロントはグラン機に連絡。


 ブロント「グラン君。もう君達の役目は終わった。ありがとう。あとはこのギランガに任せなさい。さぁ、全機に退避するよう命令したまえ。」


 4番艦ドック内カーラントでは……。


 ガルシア「な、何をするつもり⁉︎攻撃を中止させたわ。」

ラムル「父上……。何を……。」


 停泊中のハンジャ内メインルーム。


 ルイス「攻撃を中止させた……。ギランガは何する気⁉︎」

ガット「見てください!人型2機がギランガに向け飛行中!ギランガは最大全速で航行を始めました。」

ルイス「まさか!ブロント……。」


 Fade-out。



ストーリー176:過去の真相と決意


登場人物

ナレーター、ブロント、ラムル、ルイス、グラン、ジャン(回想シーン)



 ナレーション「ノアーナ会敵対策軍と地球連合軍がG15壊滅計画を実行、ノアーナの長きに渡るG15への復讐が終わりを迎えようとしていた。」


 G15に向け全速航行中のギランガの画。


 ゆっくりと廻るG15、座標815では、大きく穴が開き爆発が連続して起きている画。かなりの致命傷を負っている。


 残るパルスレーザーがギランガを攻撃している画。


 ブロントoff「全艦総員及び地球連邦軍ヒューマノイド=アーマーの勇敢なる戦士達。また、4番艦ドックのカーラント。……ラムルよく聞きなさい。」


 画面はギランガ艦橋のブロントの後ろ姿に変わる。


 ブロント「かつて、カーレイ家の先祖たる当主は、RJ計画実行に向かった地球人との間に子供を授かった。……が、その子の父親たる当人は子供を授かった頃と同じくして消息を絶った。そして、その子は成人まもなくして地球から消息を絶ってしまった。やがてしばらくの時が過ぎた。そしてあのG15とリターナの戦役が勃発したのだ。」


 ブロントの台詞に合わせた回想画に。


 ブロント「実はその子が……その子がG15の指揮統制責任者なのだ。消息不明だった父親はリターナで過ごしていたが、その真相を聞き、すぐさまG15に宣戦布告した。」


 画像数カット。


 ブロント「その戦役が、リターナとG15の戦役なのだ。その戦役の交戦中、消息不明だった当主からカーレイ家にメッセージがあった。リターナの人々を頼むと。……その人物はその時点でリターナ最高司令であり、消息を絶った当人で有る事を明かした。彼は、リグール=ジュードと名乗りリターナの最高位にあった。実は自分の実の子がG15の責任者だったと知り……。リグールは賛同する多くの兵士達と共に、刺し違えてもG15を壊滅させると誓った……。」


 画像数カット。


 画面はカーラントのラムル。ギランガに向け発信する。

ラムル「父上!」


 ブロントoff「まだ続きが有る。実は……、実はな。リターナは壊滅させられ、リグール=ジュードは戦役で他界した。しかし、語られてきた英雄は存在しない。英雄の存在はカーレイ家先祖がその後作り出した偽りの英雄だ。カーレイ家の人物であったという汚名を隠す為だった。加えて、リグールの紋章も合わせて作られた物。」


 聞いて青ざめるラムル。呆然と立ち尽くしている。


 察してか側にいたジャンがラムルの脚元をスリスリする画。


 ラムルの目には涙が浮かんでいる。横のガルシアがラムルの肩を寄せる画。


 ラムル静かな口調「それからのノアーナ人は、リグール=ジュードと言う偽りの英雄について嘘の教育を受けてきたのですか……。リターナを守るために尽力を尽くしたのではなかったのですか?」

ブロントoff「それには偽りは全く無い。戦役中、リターナの人々はノアーナに移り住み被害は無し。……その後の行動は、リグールが兵士を率いて怒りに任せ、G15に刃向かったせいだったと私は聞いている。……しかし、ノアーナ星はおかげで今まで生き延びた。」

ラムル「リターナ壊滅でその汚名に終止符をと考えた訳ですね。」

 もう既にラムルの目に涙は消えていた。


 ラムル続けて、

ラムル「リターナの多くの兵士が居たのに……。それを……それを無にしてまで戦ってしまったのですね。」

ブロントoff「あの時、G15に降伏していたら、リターナもノアーナも、今はもっと悲惨な星になっていたかもしれないんだ。運命だと諦めるしかなかったのだろう……。」


 画面は艦長席のブロント。遠くを見つめる様に語った。


 ブロント「我々と地球人、生命としての遺伝子構造が似ている。……だが、それぞれの遺伝子を受け継いだ子供は幾多の特殊な能力を身に付ける。それはリターナ人やノアーナ人よりも優れた知能だった。我々の未来を考えたら、特殊能力の子供は排除すべきを選択したのだ。だから戦役以後は他の惑星との交流を拒否してきた。それからはノアーナではRJ計画に関する教育を徹底してきた訳だ。」

ラムル「深く関わりを持たぬ様、1度きりの規制を掛けていた……のですね。」

ブロント「その通り。だが一方で危険でもあったからだ。ノアーナのステルス技術を進化させてきたのもその一部になる。」


ラムルoff「私達は……ノアーナ人はやらなければならない事がもっと他にある筈だわ。それは戦う事じゃないし、過去を隠す事でも無い!……もっと、もっともっと他の惑星ほしに伝える事が有るはずです!。」


 遠くを見つめていたブロントの頬に一筋の涙が伝う。

ブロント「後を頼むラムル。」


 全艦の艦長「カーレイ長官!」


 Fade-inから紋章の画。


 ラムル独り言off「私達の命尽きる前に……。惑星ほしの命尽きる前に。伝える事がある。本当のリグール=ジュード計画の実行を私達の手で!そしてまだ見ぬ命へ繋ぐ為にも、ノアーナを変えてみせる!」


 ギランガ艦橋、艦長席のブロント。通信は開いたままだ。


 ブロント「……ラムル、しっかりな……。ルイスを頼む……。……量子エネルギー砲を座標815に向け連続発射!このまま全速航行でG15に突っ込む。」


 全艦艦長「お止めくださいっ!無茶です。」


 グランoff「カーレイ長官!無茶です。止めてくださいっ!!」


 ギランガの全速航行に追いつけないHMの総督機と副官機。


 ハンジャ内メインルーム。

ルイス「ブロント―――!」


 そしてカーラント内メインルーム。

ラムル「父上―――!」


 バンズのドックでも……。

バンズ「……ちょ、長官……。……長官はアタイと約束したじゃないか……。なのにどうして……。」


 ブロントへのそれぞれの回想、それぞれの想いが巡った。


 回想シーン(ディゾルプで画面転換の事)


 バンズoff「かしこまりました長官。……それから、別件になりますが落ち着いたらルイスさんとドックを見にいらしてください。祖父の……ロワート=グロビアの隠していたドックです。」

ブロント「博士の隠していた?……あぁ。私にも見せてもらえなかったドックか……。分かったバンズ、それは楽しみだ。落ち着いたらルイスと伺う事にする。連絡感謝する。」


 ディゾルプ。


 ブロント「グラン君、この時にこんな話で申し訳ないが、君はスカーレットの、いや母からペンダントを受け取っていないか?」

グラン「⁉︎……何故ペンダントの事をご存知なんですか?」

ブロント「それは私がスカーレットに残した紋章のペンダント。」

グラン「今も持っています。あなたには特殊な力がある。それで周囲の人を守れと母は言っていました。ペンダントは母の言葉と共に忘れた事は有りません。」

ブロント「そうか。スカーレットには重力制御回路を渡してある。小さな基盤だ。解析してみるといい。地球の役に立てばいいがね。以後はオペレーターとの通信を行ってくれたまえ。」


 ディゾルプ。


 ブロント「ラムルの質問に答えられるようにしておかねばな。ラムルの好奇心には出来る限り協力したい。」

ルイス「あら、ブロント?ずいぶんラムルに対して意識が変わったのね。カウルの事が有るからかしら?」


 ブロントはルイスの図星の言葉に少し照れるように、

ブロント「そうだな、カウルがラムルに従えるようになったらカウルは私をどう思うか……ラムルは残っているデータをどうするか……気にはなるがな。」

ルイス「私は以前のカウルのままであるじが変わるんだと思うわ。きっとラムルはそうすると思うの。」

ブロント「ああ。最高の出来事がカウルにもたらされる事を楽しみにしているよ。」

ルイス「分かってます。あなたの残念がる顔は見たくないもの。ラムルもあなたを思ってカウルに接する、そう思ってるわ。」


 ディゾルプ。


 3人とジャンは地下の元管制室に向かった。


 先を降りていくブロントに向かって、

ラムル「父上、ジャンは階段は苦手なの。待ってください。」


 ブロントは階段を戻ってきてジャンを抱えて降りてきた。


 ブロント「気が利かんですまんな、ジャン。」


 ラムルとルイスは顔を見合わせた。


 ジャンを抱えたまま、

ブロント「おい、ルイス。君が開けてくれねば入れん。」

ルイス「はい、ただいま。」


 重い扉が開いて入ってくる3人の画。


 ブロントはジャンを降ろした。

ラムル「ありがとう父上。」ジャンをつつくラムル。

ジャン「ありがとうございます、ブロント様。」


 ディゾルプ。


 ラムル「父上、今日は何か?。」


 分厚い本をモニターテーブルに置くブロント。


 ブロント「リターナの古い歴史を調べていただろう。管理部の書庫から探してきた。分厚いから読み甲斐がありそうだぞ。」

ラムル「ありがとう父上。この間、シューロン図書館に行ったけど、どの本がどれやらさっぱりだったの。そのまま引き上げて来ちゃったから助かるー。」

ブロント「そうか、役立つといいな。」

ラムル「うん。……あ……父上……あの……。」

ブロント「何だ、リターナ以外の文献も必要だったか?」

ラムル「違うの。……カウルの事。……父上のデータを色々聞いたわ。カウルって、船の操縦、管制、分析、データメモリー、データ解析、メカニック。……凄いAnnだったのね。」

ブロント「当時最高スペックだったさ。仲良くしていた。」

ラムル「でも良かった、父上がカウルのデータを消去しないで。」

ブロント「日常、必要以外のデータは残さないようにと指示はしていたが、色々とカウルの判断で残っていたんだろう。……で?カウルに何か異常でも有ったか?」

ラムル「いいえ何も。……カウルは素敵なAnnよね。自分で何でも出来るんだもの。自分のメンテをするAnnなんて、見た事も聞いた事も無かったからビックリよ。」

ブロント「……他所よその星へ出掛けて何か有ったら身を守れる様に、悪い連中に捕まっても手を加えられないように……カウルが可哀想だからな。」

ラムル「分かってる。カウルから聞いたわ。……それに……。」

ブロント「それに?何だ。」

ラムル「カウルの……人型に変形するのを見たの……。」

ブロント「……そうか……。すっかり忘れていた。」

ラムル「何故?父上は何故カウルに人型のカスタマイズを?」

ブロント「カウルは見ての通り、精密無限軌道で移動する。だがそれでは速度が遅い。変形して移動すると倍速になる…これも身を守れる様にと思ってな。」


 ディゾルプ。


 ブロントoff「落ち着きなさいルイス。分かった。分かったから気をしっかり持って。G15の位置情報が分かったのだから映像も捉えられる。シールドの件は何とかしよう。そのまま待機していなさい。くれぐれもラムル達を心配させないでくれよ。それからな、バンズから君とドックを見に来てほしいと招待された。落ち着いたら行こうじゃないか。」


 ディゾルプ。

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