ストーリー136~138

ストーリー136:ルイスとジック帰宅


登場人物

ルイス、ジック



 バンズのフローターを借りてカーレイ邸に戻ったルイス。


 ジックをリビングに連れてくる。


 ルイス「……ジック。ここがリビング。普段はここか私の部屋で待機していいわ。じゃ、ドックに行きましょう。」


 ジックはケイドとドックには来ているが他の部屋等は初めて。


 それをルイスが案内して廻っている。


 ジック「ルイス様。当時からの時間はかなり経過してますが、ドックは変わりなくそのままですね。」

ルイス「そうね。何も変わってない。今はラムルのカーラントの駐機ドックよ。屋上のもう1機のフローターはラムルが普段使ってるわ。……このドックにはメインルームは無いの。モニターテーブルの制御盤が有るだけ。」


 ジックはケイドがあたかもそこにあるかのように近づいて行った。


 ルイスはそのジックが当時のジックと重なり思い出が込み上げ、ジックに駆け寄った。

ルイス「ジック、あの時はごめんなさい。私の身勝手な行動で迷惑かけちゃって…。」

ジック「ルイス様?それはもう終わりました。ソディナが教えてくれてたので、何も心配しなかったです。……ルイス様、泣いてますね?でももう大丈夫です。あの時私を抱えてくれていたのはまだ記憶してあります。私は泣いてるルイス様の姿はもう見たくありませんよ。私は戻って来たのですから、とても嬉しいです。」

ルイス「でもあなたのケイドは失ったわ。……ごめんなさいね、ジック。」

抱きしめるルイス。


 ジック「私には記憶が残っています。幾つかの航行データも保存しています。フローターを操縦するルイス様の航行データと照会しても何も……何も変わっていませんでした。」


 ルイスは涙を拭うと、

ルイス「でもね、ジック。ブロントには内緒よ。そんな事をしたら今度こそジックが解体されちゃうかも。……ブロントの事は覚えてるかしら?」

ジック「ブロント様はルイス様と婚姻された方、次期RJ計画本部長官。それ以外、詳しいデータは有りません。私が初期化されるまでの画像が少し残っています。ご覧になりますかルイス様?」

ルイス「それは……リビングに戻ったらにしましょうか。ブロントは今は長官の職務に就いてるわ。……ところでジック?もう当時のままのブロントへのフィルターは必要ないわ。もう少しフィルターを緩くしましょう、お願いね。……ブロントはあなたが当時のまま戻ると聞いて気にしていたわ。ケイドの事は許してもらえるか、ってね。それにね、あなたにどんな顔で迎えたらいいか、だって。……当時は色々手を尽くしてくれた。だから許してあげて。もちろんフィルターレベルも下げてほしいわ。そうすればブロントの良さを理解出来るから。」

ジック「了解、ルイス様。フィルターレベルは少し下げておきます。それから……私の今後のメンテナンスは……マット様ですか?」

ルイス「いえ、バンズにお願いするわよ。バンズが忙しい時はガットに依頼しましょう。」

ジック「分かりました。その予定でメモリーします。」

ルイス「さ、リビングに戻りましょうか。ブロントが戻るまでは残っている画像を見せてもらうわジック。」


 Fade-out。



ストーリー137:ブロントとの再会

登場人物

ブロント、ルイス、ジック



 Fade-in。


 ルイスとジックが帰宅した日、ドックのジックは自分の操縦していた宇宙船ケイドの姿を思い出したかの様だった。


 リビングに戻るとしばらくしてブロントが帰宅した。


 ルイス「おかえりなさい、ブロント。」

ブロント「ルイス、ただいま。帰っていたのか……。」


 側のジックに気付くブロント、


 ブロント「ジックも一緒だったか……。」

ルイス「ジックは元のジックに戻ったわ。……でも大丈夫よ、ブロント。もう当時のジックじゃない。ちゃんとフィルターレベルは下げさせてあるわ。さぁ、声を掛けてあげて。」


 ブロントはソファーに座らずジックの前に正座した。


 ブロント「……ジック?ブロントだよ。……覚えているかい?」

ジック「ブロント様。おかえりなさい。もちろん覚えています。元の様に復元してこの通りです。」

ブロント「あの時は……すまなかった。許してもらえるかい?ジック……。私も出来る限り手を尽くしたんだが……。」


 ジックがブロントにアームを添える画。


 ジック「ブロント様、見ての通りと申し上げましたが?……私は以前と変わって見えますか?ルイス様は変わってないとおっしゃってくれていますが……。」

ブロント「あぁ、その通り。その通りだよ。何も変わってない。良かったなジック。」

ルイス「ブロント?さぁ立って。少し帰りが早かった様だから、食事の前にお茶にしますか?」

ブロント「ありがとうルイス。……ジック、少し話そう。何か聞きたい事はあるかな?」


 食事までのひととき、お茶を飲みながら昔話をする夫妻とジックであった。


 翌朝、ブロントを送り出したルイスは部屋に入り、ベッドに座った。


 ルイス「また残っている画像の続きを見せてもらうわジック。」


 ルイスは、ジックのメモリーデータに残っている数少ないケイドの画像を見ながら思い出にふけっていた。


 データの残っていた最後の画像には、ジックを取り巻く技術者達の姿の間を割って入るブロントの画像で終わっている画。


 ルイス「ジック、この画像のビデオデータは残ってないの?」

ジック「当時のメモリー容量は直ぐ一杯になるのでケイドのシステムに転送しながら行動していた為、私本体は画像のみの保存です。ですが今は余裕のあるメモリーに換装されたおかげで航行データもしっかり残っています。ですからケイドのデータの応用で、他の宇宙船の操縦も可能です。」

ルイス「そうね、思い出したわ。航行データを管理する事で精一杯だったものね……。でも、この最後の画像にだけブロントが写ってるけど、画像ではどんな状況なのか掴めない。ちょっと気になるけどジックは分からないの?」

ジック「分かりません。時間だけは記録して有りますが、そのあと直ぐ初期化しましたから……。1度ミクラットのシステムデータから時間を照合、確認しますか?」

ルイス「そうね。でも今は例の作戦中だから、それは機会が有ったら照合試してみてくれる?」

ジック「了解ルイス様。以後確認まで保留とします。」


 ノアーナ星から、ミクラット、マーデクト、カーラントの順に宇宙空間に消えていく画。


 地球からのメッセージ衛星の画面に変わり、奥へ進んでいく画。


 Fade-out。



ストーリー138:ルイス、1番弟子⁉︎


登場人物

バンズ、ルイス、ピク、ピコ、ジック、ガルシア、ポートル、ラムル



 バンズのフローターが、邸宅側駐機スペースに着陸する画。


 変わってドック内メインルームにルイスとジックが入って来た。


 ルイス「おはようバンズ。……その顔だとよく眠れなかったのかしら?」

バンズ「ルイスさん、おはようございます。お察しの通り。……アタイ、夕べは何から取り掛かろうか考えてて、まともに寝られなかったです。」

ルイス「バンズは余程のメカ好きね。博士の残した物だし、完成を楽しみにしてるわ。……皆んな出発した様だけど、連絡は?」

バンズ「ノアーナを出てからはまだです。」

ルイス「じゃあ連絡にしばらくメインルームを借りるけど、バンズは遠慮なくドックで作業して。」

バンズ「はい。さ、ピク、ルイスさんに小さいテーブルを用意して、飲み物をお願いねー。……ルイスさん、ドック内にはこのアイコンを使って声掛けてください。皆んなへの通信はこっちのモニターです。普通のモニターテーブルと同じ物ですが、アタイのは送信先のIDに顔写真付きのもあるので分かりやすいですよ。」


 バンズが話してる間にピクがミルクを用意した。


 ルイス「ピク、朝のミルク、覚えてくれてありがとう。」

バンズ「ピクはルイスさんの側で待機ね。ドックに来て欲しい時は呼ぶからね。じゃ、ピコは一緒に作業手伝ってー。」


 言うとバンズはドックに入って行った。


 モニターテーブルの脇に作戦メモ。


 ポイント1、ミクラット。ポイント2、マーデクト。ポイント3、カーラント。

到着予定時刻が書かれている。


 ドックのガラス越しの画。


 ルイスのマイク音声「バンズ?一旦皆んなに連絡入れるわね。」


 バンズは手を振って合図してきた。


 画面変わって通信用モニターの画。


 ルイスoff「こちらノアーナ、バンズのドックよ。おはよう、ミクラット聞こえる?ガルシア?」

ガルシアoff「おはようルイス。こちらミクラット。航行中でもバッチリ聞こえてるわ。目的ポイントにはノアーナが暗くなってからよ。」

ルイス「OK、ガルシア。周囲の確認も忘れずにね。じゃ到着の連絡待ってるわー。」


 画面変えて、サイドからのルイスの画。


 ルイス「こちらノアーナ、バンズのドック。おはよう、マーデクト。ポートル?調子はどお?」

ポートルoff「おはようルイスさん。こちらマーデクト。今日は……乗り物酔いはしてないです(汗)。現状、周囲異常なし。ガルシアさんのポイント辺りで連絡しまーす。」

ルイス「了解ポートル。目的位置確認しながら航行してね。」


 再び画面が変わって正面のルイス。


 ルイス「こちらノアーナ、バンズのドック。カーラント聞こえる?おはようラムル。」

ラムルoff「母上おはよう。今は感度良好。ガルシアさんのポイントを過ぎる頃はマーデクトからのデータ転送になるけど、皆んなをお願いします母上。」

ルイス「了解ラムル。周囲確認と目標位置確認しながら航行よ、頼むわね。」


 ルイスの正面から後ろの画に。


 3機の船とのテスト交信を終え、バンズに向かって


 ルイスのマイク音声「バンズ?皆んな異常無し。航行中でもノイズも無く感度良好だったわ。」

ルイス「ジック、緊急の連絡があるかも知れない。ここで待機しててちょうだい。」


 言うとルイスはピクを連れてバンズの方へ歩いて行く。


 ルイス「ピクは危ないからここまででいいわよ。……バンズ?何か手伝う事はある?」バンズに近寄るルイス。


 バンズ「良いんですか?お願いして。……それじゃあピコは壁のボルト外し続けててもらおっと。」

ルイス「日暮れまで時間は有るし、ブロントにはバンズのドックで作業の手伝いだと伝えてあるから、1晩中でもOKよ。」

バンズ「ルイスさんは設計図は見られますか?」

ルイス「うーん、少しなら分かるわ。」

バンズ「じゃ、今日はこの図面からやっているので説明します。これは船の床部分の図で、これが床パーツの番号と寸法。……。」


 話が長くなりそうなのを察してか、ピクが寄ってきてカップを手渡してくれた。もちろん一旦テーブルになって待機モードだ。


 ルイス、バンズ「ありがとう、ピク。」


 バンズ「ラムルが長官からじいちゃんの話を聞いたそうです。仕事が終わるとここにこもって作業してたんでしょう。この設計図の数々、この図面なら、何が書かれているかさえ理解出来れば、必要なパーツがすぐに揃えられるので、短期間で完成しそうですよ。」

ルイス「バンズの為に設計図までたくさん用意したのね。今の説明だけでこの図面のパーツは私でもピックアップ出来そうだわ。」

バンズ「パーツも加工してある物がほとんどみたいで助かっちゃいました。……アタイは中でパーツを敷き詰めて行くので、この台の上にパーツを置いてくれれば大丈夫です。台に無くなったら、向かいの開いてる壁にパーツが有るので、図面と照らし合わせながら台まで運んでください。ピコが終わったらアタイと代わります。」

ルイス「なるほど、ほぼ番号順に船の先から床を並べる感じね。」


 既にここまで来るとお茶しながら休憩といった雰囲気だ。


 バンズ「台に運んだパーツに丸くチェックするのを忘れない様お願いします。」

ルイス「ふむふむ……バンズが運んだパーツには既にチェックしてあるわね。……うーん、この台は壁寄りに移動しましょうか。話しながら出来るから。何か分からなかったらすぐ聞くわ。」


 2人は壁と反対側の大きな台を壁寄りに移動している画。


 バンズ「船の骨組みに付いている外装の板は、多分ダイム金属です。大きく作るのが困難なので、板の辺を重ねて組み立てて有ります。マットさんのドックで見たハンジャと同じ作りじゃないかと思います。じゃ、中から受け取りますね。」


 バンズは小さなタラップを上がって中に入る。


 ルイス「バンズ?テープはあるかしら?この図面は近くに貼っておきたいの。」


 中から顔を出すバンズ。


 バンズ「はい、どうぞ。そのまま持っててください。……しかしルイスさん、要領よく作業する事を心得てますね。……アタイはいっつも作業が終わる頃になって、こうすれば早かったかーって気が付いてる感じなんですよ。」


 パーツを渡しながら、

ルイス「ケイドを組み立てる時のマットの作業を少し見てたのよ。設計図毎にあちこちに貼ってあったのを思い出したからよ。」


 パーツのやり取りの画。数回。


 ルイス「バンズ?この台は上下に動かせないの?」

バンズ「……あ、そうか。そうすれば手渡しも要らないですね。ルイスさん、一旦これで中断しましょう。」


 中から出てきたバンズ、


 バンズ「ルイスさんさすがです!今この台の加工をしちゃいます。分解を手伝ってくださいね。……作業道具は身を助ける、です。」

ルイス「なぁに?その言葉?」

バンズ「作業しやすい工具やこういった作業台は、自分で工夫して、作業しやすくすれば自分の作業を助けてくれる、って意味です。メカニックでもどの仕事でも当てはまる良い言葉ですよね。」

ルイス「作業の効率化は道具の見直しからって訳ね。」

バンズ「台の足を油圧バーに変えて、上下にコントロールする事で、楽に作業出来ますよね。実はピクのテーブル構造と同じなんですよ。」


 作業台を分解する2人。


 ピコが壁のボルト外しを終わらせ戻ってきた。


 バンズ「あ、ピコ。ご苦労様。今度はクラフトルームから、隅に大きい油圧バーがあるからここまで運んできてね。……ルイスさん、天板以外は不要なので片付けてきます。」

ルイス「私もやるわ。前に遠慮はしないでって言ったじゃない。」


 こうしてルイスとバンズは日暮れ間近まで仲良く作業していた。


 船内の床は、周囲を除いて固定まで終わり、コクピットの骨組みが出来上がっている画。側にはコクピット用のパーツらしきが幾つも積んである。


 ピクを囲んで休憩中の2人。ピコはメインルームでチャージ中。


 バンズ「今日1日でこんなに作業が進んで助かりました。」

ルイス「まだまだ掛かるんだから、気にしないでバンズ。……で、ちょっと聞いていい?船内の床の周囲のパーツはまだ積んだままでいいのかしら?」

バンズ「ええ。船内周囲にはケーブルや細かいハーネス、上昇用ブースターとその配管。その他左右に分けて敷いてから置いて行くんです。メンテナンスの為に溶接固定はしません。完成後でも追加出来るメリットもあるんです。船体のバランスの為に、なるべくシンメトリーに並べます。天井も同じ様に組みますし、両サイドも、バランスを考えた機器の配置にするんです。」

ルイス「へーなるほどー。技術者の凄いところはそこなのね。」

バンズ「それはー……設計図が中心なので、アタイはそれを学んできただけです。こんな設計図をいつか書かなきゃ、いい技術者にはなれませんよー。それに良いサポートも重要です。今日のルイスさんみたいに。……ピコは変形出来るので、変形してもらってサポートした事もありますよ。そのうちここでその姿のピコが見られるかも知れませんね。」

ルイス「ねぇバンズ?ジックには手伝える事は無いの?緊急連絡さえ無ければジックも手伝わせるけど。」

バンズ「ちょっと設計図見て検討しますね。」

ルイス「ダイム金属は鋳造するって言ってたわよね?マットに聞いてみたらどうかしら?金型が見たいって問題も解決するかも知れないじゃない?」

バンズ「画像を数枚、それを見ながら説明受ければ分かるかも知れないです。」

ルイス「分かったわ。ピコもマットに連絡出来るかしら?」

バンズ「もう同期して大丈夫です。」

ルイス「じゃあガルアムに連絡してみて。」

バンズ「はい。……ピコ、お願い。マットさんのところのガルアムに繋いで。」


 まもなくして応答した。

ガットoff「バンズさん?ですか?」

ルイス「ガット?私、ルイスよ。マットは側にいる?」

ガットoff「父さん、ルイスさんから。」

マットoff「こんばんはルイス。今日はバンズのAnnが一緒かい?」

ルイス「ええ。バンズのお手伝いに来てるわ。通信で申し訳ないんだけど、ハンジャの外装パーツの、ダイムの金型画像を送ってくれないかしら?」

マットoff「それは構わないけど、まさか作るつもりじゃないだろうね?」

ルイス「かも知れないわ。データが来たらまた連絡入れるわ。」


 さっさと通信を切るところはラムルとそっくりだった……。


 ディゾルプ。

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