ストーリー132~135

ストーリー132:グランの重い希望


登場人物

ニュースキャスター、グラン、タロン、キース



 キャスター「……次は明るいニュースです。今朝、連邦軍と宇宙研究所の合同プロジェクトによって、太陽系に近い別の恒星系に向けてメッセージ衛星を放つことに成功しました。地上で作り上げたメッセージ衛星を、連邦軍ヒューマノイド=アーマー2機によって大気圏外に運ぶと、そこから最高速度まで加速して衛星を目的方向へと解き放ったのです。……メッセージ内容は公にされませんでしたが、関係筋によると、軍総督による音声が盛り込まれたとの情報もあります。太陽系外に到達見込みは5年後を見込んでいますが宇宙研によれば、通信メッセージも定期的に発信しているようで、これにも期待が掛かっています。……以上FSLニュースでした。」


 シェルターに来ていたグラン。

小さなTVでニュースを見ていた。


 グラン独り言off「副官達で上手くやってくれたが、向こうの恒星系に到達は何十年も先の事だ。ノアーナ星の事を継承する該当者も白紙……。直ぐにでも太陽の異変を知らせて助けを求めたい……。宇宙研からは太陽風の異常が見つかったと報告が来た……。太陽の黒点が広がれば地球は暗くなるんだろうな……。」


 グランは無意識にレンブラントに電話していた。


 タロンoff「レンブラント、タロンだが。」

グラン「俺だよタロン。すまん、シェルターから電話してるんだ。キースに代わってくれないか。」


 しばらく待つとキースが出た。


 キースoff「総督、何かご用でしょうか。」

グラン「ちょっと無知な俺に付き合ってくれないか。」

キースoff「このまま電話でなら聞かせてください。」

グラン「今朝ノアーナ星に向けたメッセージ衛星、いったい向こうに到達するのはいつなんだい?」

キースoff「約5光年離れているので、今の速度を保って向かっても……いえ、これは考えない方が良いと思います。……無駄という訳ではありませんが、海に手紙を入れたビンを拾ってもらうよりも遥かに難しいです。ですが、総督のいうノアーナ星の人達が地球に目を向けてくれていれば電波を拾ってくれるかも知れません。」

グラン「別れ際、連絡が取りたいなんて言ったが……。無理もない事だよな。……キース、もう少しマニアックな想像を聞かせてくれ。」

キースoff「総督。宇宙は広いです。地球が生きてる限り、人間は宇宙に目を向けていなければと思ってます。何十万年先の人間が高度文明を得たとしたら、それまで地球に間借りしていた人間達は引っ越す事を考えると思ってます、移住です。……ノアーナ星が高度な文明であるなら、ノアーナ星は多分この先短い。地球より間違いなく短命な星だと思います。……だから、ノアーナ星人に引っ越してもらっても良いのではとさえ感じました。しかし……話は簡単ですが、多くの問題が発生しますけど……。」

グラン「天文マニアだけに留まっていないキースを知れた。ありがとう。これで電話切る。タロンによろしく伝えてくれ。」


 レンブラントとの電話を終えると、


 グランoff「……俺の祖父にあたるラムルの父親、そしてラムル。……ラムルと俺の母は同世代になるのか……。すると俺はラムルの甥っ子な訳だ。同じ年代に見えていたが……違うんだ……生まれた星が違うからか……。キースの言うように、移住して共存もと考えたが、甘くないな。全くの別種族と共存する事になる。彼らは承諾しないさ。」


 画面手前からフレームIn、奥へ飛ぶメッセージ衛星の画。


 Fade-out。



ストーリー133:中継作戦始動!


登場人物

ガルシア、ポートル、ソディナ、フライ、ルイス、バンズ、ジック、ジャン、カウル、ピク



 バンズのドックに向かって飛ぶフローターの画。


 そしてコクピットに画面が変わる。


 ガルシア「見えた!ポートル、カーラントに追いついてきたわ。」

ポートル「うぐ……き、気持ち悪い……。」

ガルシア「ポートル、もうすぐ着くわ。我慢して!」


 一方カーラント。


 ラムル「後方から飛翔体。……⁉︎あら?ガルシアさん達のフローターみたいよ母上。」

ルイス「やるわね。ガルシアもマニュアルで来たのね。」

ラムル「はいはーい。まもなくバンズのドック到着でーす。オートに切り替えまーす。……ずいぶん母上達ったら、楽しんでるわね。」

ルイス「了解。屋上に着陸はオート誘導してもらうわ。」

ラムル「もうIDセット完了。お疲れ様〜……。」

ルイス「なんか、元気ないわねラムル?」

ラムル「少し気持ち悪いだけ。だってマニュアルには慣れてないものー。……まったく母上ったら……。」

ルイス「ごめん、はしゃぎ過ぎちゃったわ。」


 バンズの屋上に着陸したカーラント。ハッチから降りてくる面々。

ラムルは乗り物酔い気味。


 少しして庭先に着陸したガルシアのフローターからも皆んな出てきた。こちらもポートルが乗り物酔いでフラフラ。


 画面は入口から入ってくるガルシア班の面々の画。


 ポートル「ドックで皆んな待機して待っててだって。」

ガルシア「ルイス達は……?」


 バンズがドックの1番奥の制御盤を操作している。


 エレベーターが上に上がっていく画。


 バンズ「ピコ、ジャンに繋いで。」


 ピコとジャンが繋がるとラムルが応答した。

ラムルoff「バンズ、どこから下に降りるの?」

バンズ「今エレベーターが上がってるから、それに乗って。角のスペースに出てくるよ。」


 まもなくして屋上の角に安全柵とエレベーターが上がってきた。


 ラムルoff「へー凄い構造。」

ルイスoff「博士はこれで上下に移動してたのね。」


 カーラント班の面々は少し狭いエレベータースペースに。


 その画面。


 バンズoff「手元のボタンで上下できる。降りといでー。」


 画面は1階天井から降りてくるエレベーターの画。


 ポートル「ラムル達降りてきたー。……へー。なんか凄い構造だったのねー。」

ガルシア「見てポートル。エレベーターもだけど、この作りかけの船も凄そうよ。」


 一方で下りるエレベーターからの見た目の画。


 作りかけの船が見える。


 ラムル「母上、船みたい。」

ルイス「作りかけだけど船のようだわね。」


 下に着いたエレベーター。その前で迎えるバンズ。


 バンズ「見るのは自由だけど、危ないからここでは床の周りの柵の中に入ってて。……ラムルー、電源切ってから降りてきてー。」


 皆んなはそれぞれが作りかけの船の周りを見て回っている。


 バンズ「床の1ヶ所の辺には上まで壁、というか下半分は倉庫代わりで、その中には船のパーツが入ってるみたい。エレベーターも上まで伸びてる。床を下ろせば前のドックと同じになる構造だよ。エレベーターの操作盤が隠されてて探しちゃったよ。でも間に合ってよかった。」


 ラムル「凄い……バンズの基地になってる……。」

バンズ「周りの柵は上下移動の時の危険防止みたい。手動で下げられる操作盤はまだ探してないや。」

ガルシア「これを組めば、バンズにも船ができるわけね。」

バンズ「ええ、しかもパーツはダイム金属の装甲も有り!」

ポートル「す、凄っ!マーデクトやカーラントより良い船になりそうね。」

ラムル「ビブレスで会ってきた、ガットって技術者のハンジャみたいになるのかしら……。」

ポートル「ハンジャ?……そのガットって人の船?」

ラムル「うん、カッコいい船だったわ。ガットは年下だけど、父親のマットさんの後を継いでるメカニック。ガルアムってAnnも従えてる。ねぇねぇ、バンズとは気が合いそうよ。今度行ってみたら?ほんとーにカッコいい船だったんだから。」

バンズ「そっか、ピコにデータ入ったかな?」

ラムル「うん、皆んなに伝えて良いって言ってたもの。同期したらピコにも残るわ。ハンジャはダイム金属の装甲を持ってて軽くて速いんだって。」

バンズ「今度、装甲板の金型画像が見たい。マットさんなら鋳造方法も知ってるだろうから、絶対また行ってくる!。」

ガルシア「はーい、それでは。中継作戦が頓挫とんざしないうちに話しましょうか。」


 皆んなはメインルームに集まった。


 テーブル、シートがそのままだったのでそれぞれ座った。


 ピクは飲み物の用意に余念が無い。


 ガルシア「出発日の話は後にして、もう一度、チームの確認ね。最初の地点にはチーム1のミクラット、つぎの地点にはチーム2のマーデクト、1番地球寄りの地点にはチーム3カーラント。ベース基地としてはここ。バンズとルイスに就いてもらう。……皆んな、何か他に問題は有るかしら?」

ルイス「せっかくロワート博士の残してくれた物が見つかったんですもの、バンズはそっちに専念してもらっていいわ。ここでの管制は私とジックでやる。」

バンズ「ありがとうございます、ルイスさん。」

ルイス「バンズに頑張ってもらえば、いずれバンズの船も参加してもらえるものね。」

ラムル「地球との交信が容易に出来る様になったらガットにも頼んだらどうかしら?」

ルイス「ガットはマットの両腕になって仕事してるのよ。甘えちゃ悪いわ。今の状態でも交信は出来るかも知れない。試験的に試してみなきゃね。」

ポートル「ルイスさん?多分ラムルはハンジャの飛ぶ姿が見たいんだと思いまーす。ミーハーな姫様だからねー。」

ラムル「あら。私は凄い船だし、ドックに眠ってても可哀想かなーって思っただけよ。」

ルイス「ポートルのは図星よ。強いては私も同じ。多分ケイド以上の速度で飛べるんだわー。」


 親子揃ってハンジャの航行を妄想中の画。


 ガルシア「ルイスにはマットにコンタクト取ってもらうとして。配置はいいわね?地球への通信となった時のメッセージは?やっぱりグランさん宛?」

ラムル「それは、もしもグランが通信傍受出来る場所に居ればいいってだけだけど……。」

ポートル「人型の演習が有ればピンポイントで送れそうだけど……。それもタイミングよね。」

ガルシア「まずは通信の伝達がスムーズに出来るか、から試しましょうか。ポイントに着いたら送信を定期的に送る。受信したら次のポイントへデータ転送する。面倒だけどこれしかないもの。」

ルイス「ええ、それで始めましょう。皆んなAnn と連携して効率よく行動しましょ。いい?」

ガルシア「準備が出来たら直ぐ飛べるけど、明日朝出発しましょうか。それでいい?」

皆んな「Ok―!」


 バンズ「カーラントは上でチャージ始めてる。でポートル。マーデクトはもうそのまま出られるよ。Ann 達のチャージは自分でやるように指示しておいてね。……ガルシアさん、今頃はミクラットのチャージも済んで、ソディナがやってくれると思います。……今回はここで少し組み立てに専念させてもらうから、皆んな頼むね。」


 ポートル「それで、そのー……。今晩のバーベキューの話なんですが……。」


 ディゾルプ。



ストーリー134:回収物解析開始


登場人物

グラン、タロン、キース



 レンブラントに到着したメッセージ衛星らしき回収物を解析調査中だった。


 グランは状況を見届ける為、ラボフロアに来ていた。


 ミーティングルームにグランとタロンの姿。


 グラン「タロン。本体から4ヶ所出ているパネルは半分溶けてしまったが、それは太陽光発電用のパネルかな?」

タロン「どうやらそのようだね。本体には文字も刻まれているがまだ解析出来ていない。言葉なのかロゴなのか、判断しかねる。」

グラン「内部を開けてみればまた何か発見がありそうかい?」

タロン「透過画像を調べた後、解体を始める。弱い電波になってしまったが、まだ発信を続けてるから、電源を復旧出来れば電波が回復してデータを残せるよ。電波の内容が言葉なのか音楽みたいなものかはまだ分からないね。」

グラン「どの位掛かりそうなんだ?」

タロン「時間はかなり掛かる。……それはそうと、太陽観測探査機が消息を絶ったって話は、宇宙研から話は来たのか?反逆軍本拠地の作戦といいハードスケジュールだなグラン。」

グラン「いや、反逆軍は今のところ大人しくしているようで、現状は待機状態に変更して監視している。……宇宙研からの報告では、太陽観測探査機、水星の衛星軌道上の探査機。計2機が消息不明。……先の太陽黒点異常との関連性を調査中。……軍に要請があれば、HMを近くまで向かわせて調査しなければならなくなりそうだ。」

タロン「なるほど、地上からでお手上げとなったら近くに向かえという訳か……。今日は来てもらって悪いが、早々解析結果が出る訳じゃない。連絡を待っててくれよ。コート副官が飛ばしてくれた地球のメッセージ衛星は順調に進路を進んでいる。太陽系外に出るのにも3年は優にかかる。……あとはノアーナ星の彼女達が拾ってくれでもすればいいんだが、距離が距離だけに忘れた頃に結果がやってくるかも知れないよ。」

グラン「太陽黒点が少し大きくなって昼間でも暗く感じてきたが、この先どうなるだろう……。」

タロン「それはビンセントコートの望遠鏡のデータをここでも取り込んでる。詳細画像が分かり次第連絡する。」

グラン「因みになんだが、このまま太陽黒点が広がったらどんな事が起こる?」

タロン「その件はキースを呼ぼうか?……待ってくれ。」


 電話を手にし、キースへの内線。


 タロン「俺、タロンだ。ミーティングルームに来てくれ。グランの疑問に答えてやってほしい。」


 しばらくするとキースが入ってきた。


 キース「総督、何かご用でしょうか?」

グラン「まぁ掛けて話そう。……先の太陽黒点異常の話なんだが、このまま太陽黒点が広がったらどんな事が起こるかを聞かせてくれないか。俺には分からん領域でね。」

キース「それは原因が何なのかにもよります。」

グラン「と、言うのは?」

キース「太陽自体の異変、そして、謎の物体による仕業……。太陽は今までに何度も黒点異常は有るんです。ところが今回の様な大きさに広がったのは観測史上無かった事です。ですから太陽自体の異変というのは考えにくいかと……。」

グラン「そうなると謎の物体の仕業が濃厚……。」

キース「そう考えざるを得ません。」

グラン「何故黒点が広がってきているのか……は?」

キース「何らかのエネルギー照射によって太陽表面温度が下がってきている。又は太陽からのエネルギーを吸収している……ですね。」

グラン「ここでは雲がなくても、日の日に日中暗くなってきているように感じるが、黒点が広がっているせいなのだろうか。」

キース「そうだと思います。国営放送の番組でも、かなり気象面で話題になってますね。……謎の物体の仕業だとなると、このまま同じ事を繰り返せば太陽黒点が増えるでしょう。太陽の表面温度が下がって全体に広がってしまったら、地球は凍りつくかも知れませんよ。日照時間や気温は宇宙研でも記録してますから、連絡が入ると思います。」

グラン「地球が凍りつく……か。飛んでもない事態になるな。HMに宇宙望遠鏡を担いで向かうなんて話は冗談では済まなくなるかも知れんな。……ではタロン、回収物の解析と飛ばしたメッセージ衛星の追跡をしっかり頼む。」


 メッセージ衛星の進む画でディゾルプ。




ストーリー135:中継作戦に出発


登場人物

ガルシア、ラムル、ポートル、ルイス、バンズ



 バンズのドック内メインルーム。


 いよいよ出発となった面々。


 ガルシア「私はポートルを降ろしたら、直ぐにエンジャーに向かいミクラットでポイント1へ向かうわ。ポートルはそのままマーデクトに乗り換えてポイント2へ出発でいいわね。」

ポートル「了解!」


 ガルシアのフローターが飛び去る画。


 画面がメインルームに戻る。



 ルイス「ラムル。ジャンとカウルが一緒よ。しっかりやりましょ。ポイント3、地球の衛星軌道の外までよ。無理しないでね。」

ラムル「分かってる母上。じゃ、行くわ。」


 ラムルとAnn 達がエレベーターに乗る画。


 電源を入れ、上昇するエレベーターの画まで。


 メインルームから見送るルイスとバンズ。


 ルイス「皆んな上手くやれるかしら?」

バンズ「大丈夫ですよ、ルイスさん。マーデクトで2度も行ったんですから。途中のポイントからの連絡は明日入ってきます。」

ルイス「一旦ジックをブロントに会わせに戻るけどいいかしら?明日は早くここに来る。」

バンズ「アタイのフローター使ってください。長官のお宅のIDは入ってますからオートでも行けます。ルイスさんならオートじゃ無くても良さそうですが、気を付けて。」

ルイス「ありがとうバンズ。フローター借りてくわ。」


 バンズのフローターが邸宅側の隅にある。


 乗り込むルイスを送るバンズの画。


 上昇し飛び去るフローター、


 バンズ「マニュアル操縦だ……。やっぱルイスさんだわ。フローターなのに早い。……さて、アタイは組み立て準備しよ。」


 屋上からカーラントが上昇していく画。


 Fade-out。

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