ストーリー88、89

ストーリー88:タロンの日常


登場人物

タロン、キース



 仕事終わりの2人が開発局のゲートを出て来る。


 キース「これからどうだい?タロン。」

タロン「ああ、俺もそう思ってたよ。」


 2人は局の無人送迎車に乗り込んだ。


 IDカードを通すタロン、モニターに地図をかざした。


 よく行くスタンドバーのアドレスと地図だった。


 キースが先に話し始めた。

キース「最近、FSLの親友から話が来てね。天文マニアのお前にも教えとくと言って、素晴らしい情報を聞かせてくれた。先日の惑星新発見かって報じてたニュースあっただろ?あのニュースの後、もう一つ、発見したそうだ。この話はまだ非公開なんだが、水星付近に月位の物体が見つかった。」

タロン「それは大発見かも知れないな。水星には衛星は確認されてないんだろ?水星の衛星だとしたら凄いじゃないか。」

キース「いや、それが俺には腑に落ちないんだ。紀元前に発見された水星だが、今の今まで衛星を持っているなんてデータは無いんだよ。宇宙研究の歴史は長い。水星の衛星が発見出来なかったとは考えにくいんだよ。」


 車は目的地に到着した様だ


 タロン「どうする?帰りもこいつ使うか?」

キース「そうだな、そうさせてもらうよ。」

タロン「なら、途中まで相乗りだ。」


 店内の様子、2、3カット。スタンド式のバーである。カウンターで飲み物を受け取り支払うスタイルだ。


 そして2人の立つテーブル位置に画面移動。


 ジョッキを合わせる2人。


 タロン「で、その水星の話と先日のニュース、何か関連でも有るのか?」

キース「月と同じか、やや小さな物体としかまだ解析出来ていないそうだ。最先端の観測装置で追いかけてもその物体は捉えれられなかった。ニュースの物体が、速度の速い彗星の様なものだとして水星付近に移動したのかも知れない。」

タロン「あの時のニュース画像では尾を引いていなかった。彗星ではないんじゃないか?」

キース「そう思う。当然尾を引いて見えるはず。それが無く、そんな時間も経過してないのに水星の軌道にいると思うか?」

タロン「我々にはまだ解明できない事象が宇宙には有る。宇宙望遠鏡の開発は今最新の機構が組まれた。もっと詳細な解析は出来ないのか?」


 おかわりのジョッキを取りに行ってきたキース。


 テーブルに置くと、

キース「俺が専門に取り組んでる訳じゃないし、天文マニアとして述べているだけだよ。俺の個人的な根拠は多少あるけどさ。」

タロン「そうそう、俺の話なんだが、あと1年位したら、一緒に取り組みたい事が出来た。付き合ってくれるか?……天文マニアの知識をトランクに詰めて持参してもいいんだが……。」

キース「今の局の仕事では満足いかなくなったとでも?」

タロン「いや、今この場では話せないが、その時には迎えに行く。キース、力になってくれるか?」

キース「反逆軍の手先になるわけでないのなら、待つよ。」

タロン「俺の話は終わり。有能な人物を探さなきゃならなくなってね。……それでまずはお前。で、周りに誰かいないか?信用のおける有能な人物。」

キース「1年あるならその間に当たってみるよ。」

タロン「ありがとう。期待してるよ。」


 ディゾルプ。



ストーリー89:マーデクト帰還


登場人物

ルイス、ガルシア、ラムル、バンズ、ポートル、ジャン、ピコ、フライ



 ノアーナ星、大気圏を降下してくるマーデクトの画。


 フライ「目標座標地点付近に降下中。ステルス異常無し。」

ジャン「周囲障害無し。座標地点まで順調に降下中。」

ピコ「着陸地点を捕らえました。周囲障害物無し。」


 ガルシア邸、ドアから出て来るルイスとガルシア、フローターに向けて歩いている。


 ガルシア「マーデクト降りてきたわ。迎えに行きましょルイス。」

ルイス「……定員オーバーよ、ガルシア。」


 指折り数えるガルシア、

ガルシア「あら、そうね。ルイス、私はここで待ってるわ。皆んなを迎えに行って。」

ルイス「分かったわ、行ってくる。」

ガルシア「ラムルを叱らないでよ。ちゃんと抱きしめてあげて。」


 ステルスの掛かるマーデクト、着陸。


 迎えに飛ぶフローター。


 コクピットのルイス「ラムル、聞こえる?ステルスで見えないわよ。」

ポートル「ルイスさん、安全位置まで誘導します。」

バンズ「ピク、ピコそれにフライは留守番してて。定員オーバーだから。」


 マーデクトの開くハッチだけが見えている。


 出て来る3人とジャン。ハッチが閉まる。


 フローター前で待っていたルイス。ラムルとハグ。


 ルイス「ラムル、無事に戻って良かったわ。さ、皆んな乗って。」

ラムル「ジャンは貨物室。ガルシアさんの家まで我慢してね。」


 フローターがガルシア邸に来て着陸、駐機した。


 手を振るガルシアの画にフレームinの4人とジャン。


 ガルシア「皆んなー待ってたわー。」


 リビングに入った皆んな、


 ガルシア「座ってー。少し休みましょう。」


 言うとキッチンへ向かう。


 ルイスは脇にある椅子を持ってきてラムルの横に座った。


 カップとポットをトレーに乗せ、テーブルに置くガルシア。


 バンズ「ガルシアさん、よくマーデクトと交信出来ましたね。」

ガルシア「私のモニターテーブルじゃ無理だったから、ミクラットからよ。なんとか繋がって良かった。」

ルイス「3人は水の惑星ほしに何故行ったのかしら?」

バンズ「ルイスさん、まずこれを見て。……ジャン、アタイ達が行った時の映像を見せてくれる?」


 テーブルから離れていたジャンが寄ってきて、窓の無い壁に投影し始めた。

水の惑星ほし(地球)遠景から近づく。ゆっくり降下して着陸。

 周囲のパノラマはもちろん、ラムルが最初に見せられたバンズの編集映像だった。


 都市部やフィールド、やがて上昇、大気圏外の水の惑星ほし


 ルイスとガルシアは初めて見る水の惑星ほしに驚きを隠せない。


 ガルシア「綺麗な星ね。」

ルイス「ブロントから聞いていた以上に素敵だわ。」

ラムル「ジャン、また後で頼むから待っててね。……母上、ガルシアさん。これは彼女達が最初に残してくれたデータなの。その時、2人を助けてくれた人に出会ったのよ。」

ガルシア「助けてくれた?何があったの?……あんた達よく無事だったわね。」

ラムル「それについても見てもらわなきゃ。ジャン、サーモのデータを映して。」


 壁にはサーモグラフィーの映像の画。


 ラムルoff「もうすでに夜。上の方に建物と6人の生体反応、建物の下にもう1人生体反応。真ん中の点滅はバンズとポートルの位置。暗くなってから行動してたんですって。」

ガルシア「建物が見張られているみたいね。」映像が続く。


 3チームで1人の方へ向かっている。


 ルイス「下の方の1人を探してるんだわ。」


 映像が進み、1チームが消え、まもなくもう1チームが消えた。


 点滅の現在地を挟む2つの映像。


 現在地の点滅に寄ってきた1人。映像が乱れ、終わった。


 バンズ「1人の方が、叫びながら近寄って来たと思ったら、アタイ達は突き飛ばされた。」

ポートル「武器は持っていたけど、私達には向けず、怪我を気にしてくれて、その後建物に招かれたの。」

ルイス「あなた達、スーツのステルスは機能してなかったの?」

バンズ「それが、アタイ達のこと、見えていたんです。」

ポートル「もう白状しようと。それで何故ステルスが見えているか、他の6人の事までも確認したわ。」

バンズ「彼は右目が義眼で、暗視が出来ると言ってた。戦闘の腕もなかなか。彼の目、精密に作られた物で義眼とは分からなかったよ。」

ポートル「その右目だけがスーツのステルスを無効にして目視出来てたようなの。でも、マーデクトを見せたけど分からなかったとも話したわ。」

ラムル「で、その時、彼は名乗ったの。バンズとポートルも名乗ったんだけど。……で、その人は、その人の名はグラン=ジョリー。……私はその時は聞き流したけど、色々思い起こして気が付いたの。」


 ルイス「スカーレットさん……。」

ラムル「そうよ母上。同じファミリーネーム。……でもまだ確信がある訳じゃなかった。」

ルイス「それを確かめる為に行って来たのね。」

ラムル「ええ……。」


 ガルシア「私は後で詳しく話を聞くねルイス。」


 ポートル「それで、マーデクトには着陸地点のデータが有るから向かう事に……。」

バンズ「グランって人は軍の総督。反逆軍って物騒な連中から狙われていたのは事実。再上陸した時には建物は更地になってた。しばらく周囲の確認をしていて、また会えたんだ。」

ラムル「地下にシェルターを埋めて居住空間にしてたわ。」

ポートル「グランだと確認出来て、入口ドアに向かったんです。」

バンズ「セキュリティで直ぐには入れなかった、ラムルが重い扉を叩いちゃって。」

ラムル「だってピンポン付いてなかったから……。」

ガルシア「付いてるわけないでしょ!センサー起動の武器でやられてたかも知れないじゃない……。」

ポートル「周囲確認はしっかりしてたからだいじょぶだったわガルシアさん。」


 ラムル「グランが出て来た。当然、目視出来てて驚いてた。」

バンズ「シェルターの割には広い空間だったよね。」

ルイス「で、肝心の確認は?出来たの?」

ラムル「ええ。グランはスカーレットさんの孫に当たる人だった。スカーレットさんの子、グランの母親はシャルルさんって話してくれた。」

ルイス「間違いなくスカーレットさんの?……。」

ラムル「うん、グランの思い出話を聞いた。あと、フォトフレームも見せてくれたわ。」

ルイス「何事も無く、幸せに過ごしていたのかしら……。」

ラムル「スカーレットさんは寿命を全うしたそう。でも……シャルルさんは……。」


 ポートルはラムルを察して、ラムルが続きを話すのを遮ると、


 ポートル「私が話す。……シャルルさん、軍の施設で働いてて。迎えに行ったグランと一緒に、反逆軍の空襲に襲われたんですって。でもシャルルさんには特殊な能力があってそのお陰でグランは助かった。ただ……シャルルさんはその時亡くなったそうです。」

ルイス「娘さんのシャルルさんには特殊能力があったのね。……やっぱり……。」


 ガルシア「やっぱりって、ルイス。」

ルイス「私達ノアーナ人と水の惑星人の間に生まれた子供には特殊な能力が授かる。……そうブロントからは聞いていたわ。実はこの話の前があるの。……リターナ戦役の前の頃の話。」

ラムル「母上、それは……。」


 ルイス「いいのよ、ラムル。ここの皆んなを信じてるから。聞いてちょうだい。」


 全員はなんとなく頷いている。


 ルイス「これはカーレイ家にとって恥ずべき過去ね。G15は皆んなも知っての通り、リターナ戦役でリターナを壊滅させた脅威。……このG15の総司令官は、カーレイの先祖と水の惑星人の間に生まれた子供。父親は戦役で亡くなった。その後、ノアーナ人と水の惑星人の間に生まれてきた子供には特殊能力が身に付く事が解明されたらしいわ。……だから、若い頃のブロントとスカーレットさんの間に生まれる子供も特殊能力を持つ。……もし能力を悪い方へ利用して、水の惑星ほしに平和が無かったらRJ計画の意味が無くなる。……ブロントは遠い水の惑星ほしを見ながら危惧してました。」

バンズ「それをラムルに知ってほしくなかったんだね。もしカーラントで向かってしまって、何かあったりしたら……。それで、ロックされたんだ。」

ラムル「話はまだあるの、母上。」


 ラムルは持ってきたバックからフォトフレームを取り出した。


 Fade-out。

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