ストーリー71~74

ストーリー71:グランの心情


登場人物

グラン



 冷たい壁に囲まれた、グランの休暇場所。別荘の代わりに設けたシェルター施設。


 グランは長い時間物思いにふけっていた。


 画面はグランの想いに合わせた回想画に。


 グランoff「地球は失った物が多過ぎる……。二代大国の戦争では多くの人が犠牲になり、多くの生物や植物を失った……。その後の地殻変動で大陸が生まれ変わり追い討ちを食らったよな。人々の中に嫌な思い出だけが残ってしまった。……ようやく言語を統一して単純経済の流れの中で暮らしが落ち着いた。その間の俺は……自分の力ばかり意識してHM(ヒューマノイド=アーマー)の功績だけでここまで来てしまった。貢献したのではなく戦闘をしていただけだ。……連邦軍、総督。責任者たる荷が重過ぎて押し潰れそうになった事もある。……母は言った。周りの人を守れと……。しかし俺の能力では限界だ。HMは進化してはいるが僅かづつだ……。技術開発は新しい発見は無い。」


 画面、グランがコーヒーを注ぎ、またシートで考える画。


 同じように回想画でグランoff。

グランoff「新しい惑星のニュース、少しは関係者が活気付いているが、今までの失敗の反動なのか、まるで気持ちを慰めているかのようだ。近年は火星上の居住区建設を断念し、地下へ計画を移したが、これも課題山積だ。地球へやってくる侵略者も移住目的なんだろうな。俺は先日反逆軍に狙われた……。俺はどうすれば良いと言うんだ……。……今日辺り、タロンと一度飲みにでも誘うか…。きっと技術者のヤツの事だ、何か光が見えるかも知れない……。」


 画面をゆっくり暗くしながらのfade-out。



ストーリー72:グランと友人タロン


登場人物

グラン、管制官、HM操縦者リーダー、タロン



 管制室。中央総督シートにグラン。


 連邦軍ヒューマノイド=アーマー演習が終了。


 周りに管制官数名が見える。


 グラン「よし、今日の演習はここまでにする。各機ご苦労。全員帰還し異常箇所のチェック。」

全員「了解。帰還します。」

リーダー「全機は帰還中に演習データを管制室に送信。」

グラン「リーダー、移動中の仲間の動向を最も捉えながらの移動を支持するよう心がけた方が連携が取れる。次回試してくれ。」

リーダー「助言ありがとうございます。以後気を配るよう努力します。……まもなく大気圏突入……。」

グラン「ご苦労だった。」


 周囲にある多くのモニター、一時的通信不可の表示。


 グラン独り言off「HMのスピードは申し分無い。だが連携が取れていない。実戦では広範囲に目を向けていなければいかん……。」


 総督室に戻ったグラン、通信。


 グラン「開発局のタロンに繋いでくれ。」


 しばらくすると、


 タロン「やあグラン。最新モデルのHMの調子はどうだい?」

グラン「ああ。スピードは申し分なさそうだよ。」

タロン「だがな、もう設計の限界にきてる。装甲材料から新しい金属の開発が必要なところまできている。無理な注文には答えかねるぞグラン。300機のグレードアップで精一杯だよ。」

グラン「すまんな。俺が思い付くのはその程度だからね。」

タロン「局内だけでは製造も限界点、手狭で困る。反逆軍に狙われない場所に是非とも施設を作ってもらいたいよ。」

グラン「その件は頭には置いてある。奴らに戦闘機が無いだけ救われてるんだ。近い内議題に持ち込む。……あぁ、話は変わるが、今日、一杯どうだ?タロン。」

タロン「すまん。今日は同僚と一杯予定してしまったんだ。」

グラン「なら尚更だ。悪いが同席させてくれないか?技術者さん達に助言を貰いたい。」

タロン「そうか、お前と飲める機会が少なくなって久しいな。いいよ、同僚も紹介する。……予約場所は……。」

 

 連邦軍建物から出てくるグラン。そのまま手配の車で予約場所に向かった。

ディゾルプ。



ストーリー73:3人の飲み会


登場人物

グラン、タロン、キース



 予約場所を伝えられたグランは近くで車を降りた。


 グラン「帰りに連絡入れるので迎車を頼む。3台を数時間後に確保してくれ。」


 どうやら軍が使用している無人送迎車の様だ。


 小さな居酒屋風。4人個室として仕切られている。


 タロンとキースは先に来ていた。


 グランが入ってきた。


 グラン「待たせたねタロン。」

タロン「俺達も今来たところだよ。……あぁ、コイツはキース。キース=シュテインバーグ。開発部の同僚。キース、こちらは……。」

キース「グラン総督、存じ上げてます。」

グラン「いやいや、今日は総督はやめよう。タロンとは古い付き合いでね。君は?」

キース「後輩です。よろしくお願いします、総督。」

タロン「同席したいとの総督様のご命令である!粗相の無いようになキース。」

グラン「おいおい、からかうなよタロン。今日は技術者たる君達の話に耳を傾けて飲ませて欲しいんだ。」

ジョッキのビールが届いて乾杯の画、

グラン「タロンからは技術の話しは度々してるが、局では何を最優先に開発中なのか、今後何が必要になってくるのか……。とか。火星の計画が進行中の中で先日のニュースのような惑星を見つけたらどうしたいのか……。しばらく2人の話を聞かせてくれよ。」

タロン「俺達はいつも他愛もない話ばかりだがなぁ……。なぁキース。特別深い話をするでもなく……。」

キース「惑星のニュースを見たようだから総督の興味の部分を話してください。」

グラン「あのニュースはたまたま耳にしたんだ。火星の計画を思い出して、移住計画も話題になるのかなと……。」

キース「地上からの詳細な解析は無理が有るんです。だから宇宙望遠鏡を駆使して捉えようとしてます。」

タロン「キースは天文マニアでね。望遠鏡持って宇宙旅行でもすればとよくからかってる。」


 居酒屋のアイキャッチ風ワイプ入れながら、


 タロン「地上の大気や地球地場で鮮明画像を捉えられない。だからいくつもの宇宙望遠鏡を静止軌道に置いてるのさ。技術部の最先端技術だぜ。HMに望遠鏡持たせて宇宙に飛んでもらったらいい画像が手に入るかもな。」

グラン「天体観測の限界か……。」

キース「HMに宇宙望遠鏡を持たせたら、大気圏外に出る為の巨大なブースターを作ってHMを乗せなきゃですかね。無駄の多い話ですよ。もしくは設置済みの宇宙望遠鏡をHMに抱えさせてカメラマンやってもらう。」

タロン「ははは、冗談でも面白いねぇ。」

キース「遠い宇宙空間に望遠鏡を固定出来ないじゃないですか。いずれ惑星軌道に捕まってしまう。惑星カメラマンって発想は悪い話じゃないと思いますっ。」

ワイプでおかわりのジョッキの画の割込み。

タロン「今の惑星カメラマンとしてたくさん探査機を飛ばしてるじゃないか。……局内じゃあ精密で小型は永遠のテーマだし。軽量で丈夫、も有る。地球の資源は無限じゃないから、エネルギーの問題も有るし。」

グラン「開発中の話では何かないか?」

キース「探査機の分析能力ですかねぇ……。それに結果の情報伝達スピードとかも問題視されてますよ。」

タロン「あぁ、そうだ。タイムラグが伝達スピードの問題の中心。今は量子を使ってはいてもまだまだだし、どの課題も問題山積だよ。」

グラン「技術者が嘆くのが分かるよ。」

タロン「最新のHMに乗ってみれば、俺達の苦労が分かってもらえるよ。軽量化して、推進機構の改善。」

グラン「だからスピード感が変わったんだな。」

キース「侵略者にとっても脅威になると思いますよ。」

グラン「HMのステルス機能は進んでるのか?」

タロン「それもやってるよ。でもHMにってのは無理のようだよ。侵略者に探知されないように近付いて攻撃するんだろ?HMが鉛の塊で作らない限り無理。局のお偉いさん達は、今はスピードが上回れば背後に回って攻撃出来るだろってさ。」


 再びワイプでおかわりのジョッキの画の割込み。


 グラン「キースは天文マニアだと……。例えば遠い惑星を見つける手段は何だと思う?」

キース「地上からより大気圏外から観測。障害を出来る限り避けて観測しないと不安定なデータしか取れないんです。今の技術では直接見たような画像は不可能なんです。だからHMのカメラマンって話なんです。根拠が有っての冗談です。」

グラン「遠い星の情報まで捉えるHMはどうだ?」

タロン「侵略者が近くにいながら呑気に宇宙空間にプカプカしながら天体観測ってのなら可能だがね。」

キース「戦闘に特化したHMには天体観測なんて装備は無理って事です総督。」

グラン「それもまた技術の限界なんだな……。」

タロン「限界を越えようと日夜努力してるさ。」


 ディゾルプ。



ストーリー74:グランの悩み


登場人物

グラン、リピ画のバンズとポートル



 総督室。外の景色を見ながら物想いにふけるグラン。


 グラン独り言off「このところ別荘で会った異星の彼女達の事ばかり考えてるな……。彼女達の星を地球から見るのは技術的に不可能か……。こっちからは何も知る事が出来ないのに、向こうからは知る事が出来ている。これが地球における技術の限界か……。」


 居酒屋での回想画面でそのまま続く、


 グランoff「タロン達技術者だって限界、それを越えようと試行錯誤している。……HMは侵略者に早々やられはしない。対抗出来る。」ふと、あの時の回想に画面が変わる。


 ストーリー38のリピ画。


 バンズ「言語は解析済み。アタイ達の言葉は翻訳されて出力してる。」


 バンズは襟元の小型スピーカーをチョンと指差す。


 続けてバンズ、「アタイ達の姿を消せるのはステルスだよ。」

ポートル、立ち上がり、

ポートル「グラン、ちょっと窓の所へ。」


 グラン、バンズと窓に歩く。


 窓辺の3人の後ろ姿。


 夜明けが近づき、辺りは薄っすら明るくなってきている。


 ポートル「向こうの平らな所。」

グラン「あの原っぱが何か?」

ポートル、腕のモニターを操作、

ポートル「フライ、聞いてる?一瞬だけ宇宙船ふねのステルスを解除して。そしたら直ぐ復帰。」

フライ「了解。実行します。」


 ステルスが消え宇宙船が……、そして直ぐ消えた。

 リピ画終わり。


 グランoff「言語解析に通訳音声……それにステルス……か。地球の生命体だけで時間が過ぎている訳ではないんだな……。過去に数々の侵略者を蹴散らしてきた。……ここは和解して技術共有という選択肢を重視すべきか……。一部の科学者は感じているらしい。確たる物が無い為に提案にとどまっている……。その科学者達の考えは間違いではなかった。……だからといってどうなのだろう……。和解して招き入れる、技術供与、情報共有。……この地球の残り寿命はどのくらいなのか……。いったい後世に何を残せばいい……。」


 外は既に暮れ始めていた……。ディゾルプ。

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