ストーリー64~66

ストーリー64:侵略者対策審議会


登場人物

審議会有識者達(台詞はA〜C)、審議会進行役、リモートモニターのグラン



 侵略者対策審議会、久しぶりに開催された議会の円卓には、有識者が集う画。


 審議会進行「先頃発見の惑星らしきものについて、今回はそれぞれ先生方のご意見を賜りたいと存じます……。後程、連邦軍グラン総督にも発言をお願いします。」


 円卓の奥のスクリーンにはグランが映っている。


 有識者A「土星と天王星間で確認されたわけですが、依然として詳細は掴めておりません。現状からの意見を述べるならば、もう少し時間が必要かと考えています。」

有識者B「地球衛星軌道上の多くの宇宙望遠鏡でも、まだ捉えていませんので何とも言えませんが、関係機関との情報を密に調査中です。」

進行「ここで、グラン総督のご意見を伺います。……グラン総督、今のご意見などお聞かせください。」


 モニター越しのグラン、

グラン「連邦軍では、何時も出られるよう準備しています。仮に侵略者だとした場合の為、調査を進めているところであります。」

進行「ありがとうございます。次に、その後の進路等の分析に当たっている訳ですが、その状況をつたえてください。」

有識者C「現在、太陽を中心に公転しているのかどうか、確認出来ていません。その後の行方が探知出来ない為ですが、継続して観測にあたっています。」


 モニター越しのグラン、

グラン「それがどんなモノなのか、その辺りの分析データはないのでしょうか?」

有識者B「形状が月よりやや小さなものであるとしか判断出来ませんが、再び発見次第、分析に当たります。」

進行「次に太陽系惑星の現在の位置から……。」


 ニュースにもなった大発見たるものの検証についての会議だった。


 一部はニュースでも伝えられたが、確証は無く、継続して観測中との話にとどまった。

 画面ディゾルプ。



ストーリー65:夫婦ほっこり


登場人物

ブロント、ルイス



 カーレイ邸リビング、ソファーにはブロントとルイスの画。


 ブロント「ラムルはまだ戻らんのか?」

ルイス「いえ、もう戻って友人のところに居ると連絡が来ましたよ。調べ物のまとめをするからと。今日は泊まってくるかも知れませんね。」

ブロント「まぁ学術部にはラムルに代わる先生を講義に立ててくれるよう頼んではあるが……。ルイス、君の友人には迷惑ではなかったのかい?」

ルイス「それは大丈夫よ。ガルシアは面倒見が良いのよ。多分、皆んなで意気投合してたんだわ。」

ブロント「そうか。……で、ラムルの調べ物、古い歴史と言ってたが……。いつの歴史なのか?ノアーナの歴史に関してとか、講義に使う為になのか。ルイスは何か聞いているんだろう?」

ルイス「リターナの古い歴史の事を調べたかったようなの。あの子、図書館に行ったようなんだけど、蔵書が多くて手に負えなかったって。それで、本の虫だったガルシアの所に行ったのよ。」

ブロント「ラムルだけで向かえば済んだのに友人までラムルの興味に巻き添えかい?」

ルイス「あらブロント。巻き添えは無いわよ。友人達はAnnを大切にして過ごしている良い子達って聞いてる。ガルシアもAnnを大切に過ごしてきたわ。だからガルシアの所へは皆んな連れだって出掛けたんだと思うけど?」

ブロント「リターナの古い歴史か……。講義台に立つ身としての知識の補填ほてんなら歓迎だが……。」

ルイス「ガルシアも歓迎してくれたのよ。なんだか予定より多く滞在してきたみたいだけどね。」

ブロント「私で何か手助けが必要かな?」

ルイス「心配無いと思うわ。もしラムルが古い資料をもっと必要としてたら、あなたに助けてもらうよう伝えますよ。」

ブロント「ラムルの質問に答えられるようにしておかねばな。ラムルの好奇心には出来る限り協力したい。」

ルイス「あら、ブロント?ずいぶんラムルに対して意識が変わったのね。カウルの事が有るからかしら?」


 ブロントはルイスの図星の言葉に少し照れるように、

ブロント「そうだな、カウルがラムルに従えるようになったらカウルは私をどう思うか……ラムルは残っているデータをどうするか……気にはなるがな。」

ルイス「私は以前のカウルのままであるじが変わるんだと思うわ。きっとラムルはそうすると思うの。」

ブロント「ああ。最高の出来事がカウルにもたらされる事を楽しみにしているよ。」

ルイス「分かってます。あなたの残念がる顔は見たくないもの。ラムルもあなたを思ってカウルに接する、そう思ってるわ。」


 Fade-out。



ストーリー66:ラムル2度目の決心


登場人物

ルイス、ラムル、ガルシア(声のみ)



 ルイスは自室でガルシアと通信中だった。


 ルイス「ガルシア、それでラムル達の調べ物は解決したの?」

ガルシアoff「大まかなところは済んだみたい。納得してたもの。私は1人が多い暮らしだから存分に楽しめたわよ。」

ルイス「あら、皆んなとずいぶん意気投合出来たようね。」

ガルシアoff「ええ。遅くまでバーベキューしたりして盛り上がっちゃったわ。」

ルイス「それはよかったわ。まだラムルが戻ってからの話は聞いていないけど、楽しんだなら問題無いわね。」

ガルシアoff「あら、ラムルまだ戻らないの?……って事は……バンズって子のドックね。」

ルイス「あら、そんなところまでお見通し?」

ガルシアoff「もちろん。色々話してくれたもの。彼女達は良い子達だわ。ルイス、私達と同じよ。とても仲良しだし。」

ルイス「ガルシア、ありがとう。また何かあったらラムルの相談に乗ってあげてね。」


 通信を切るとリビングで声がする。


 ラムル「母上―?」


 ルイスはスライドドアから顔を出して、

ルイス「ここよラムル。お帰り。」

ラムル「入っていい?」


 ルイスは自室にラムルを入れるとシートを用意した。


 ルイス「どうぞラムル。……今までガルシアと話してたところ。」


 ラムルはシートに座り、

ラムル「あら、じゃあガルシアさんから色々聞いたかなぁ。」

ルイス「バーベキューしたりして意気投合したって話してたわ。」

ラムル「ええ。楽しかったわ。今日は私からもお土産話なのよ。」

ルイス「調べ物の話?それともバーベキューの話かしら?」


 ラムル、思い出したのか薄っすら涙目になりながら、

ラムル「ううん、もっと母上が喜ぶわ。」


 ここから回想画を映してのラムルの台詞。


 ラムルoff「調べ物をしながら皆んなでAnnの話をしたりしてて、その合間に、ガルシアさんが休憩しようと言って、ドックの宇宙船ふねまで案内してくれたの。カーラントみたいに大きかったわ。それから中へも案内されて……。母上も聞いたでしょ?ジックとジックのシステムが移植されてるって。……私達、ジックの姿を見てきたわ。母上のジックは、ガルシアさんの宇宙船ふね、ミクラットの推進機関に格納されてたの。推進装置を制御してるって。メインルームではソディナも見せてもらったわ。ジックは当時のままで、多分……あるじも母上のままみたい。ソディナを介してミクラットを操作していたそうよ。ジックとソディナだけで全て動かせるんだわきっと。……それで私、……。私、嬉しくて座り込んで泣いちゃった。本当に嬉しくて……。それで、ガルシアさんは言ってた。……ミクラットを解体するには思い出が有り過ぎて、今は保存状態だって。」


 画面はルイスの部屋へ戻る。


 ルイス「そうなの……。そこまでしてジックとソディナを残してたのね……。ガルシア……。」


 ラムル、ちょっと目を拭って、

ラムル「母上へのお土産話、終わりっ。」

ルイス「ありがとうラムル。良いお土産話をもらったわ。……あ、そうそう。いいタイミングで来たわラムル。先日ね、ブロントがカウルの古いデータから私の画像をコピーしてプレゼントしてくれたわ。……待って、今モニターに映すわね。」


 言って、ルイスはモニターテーブルにセットする画。


 2人が見入る画。


 当時の画像を出しながらのルイスoffで、

ルイスoff「これはカウルを紹介された当時。画像は……カウル目線の様ね。……で、これは……。」

 当時の画像を次々に見ながら説明するルイス。画像を見ている2人。


 そして最後の画像のようだ……。


 ルイスoff「これは、……カウルをシャットダウンする事を聞いた時の私みたい。……あの時はなんか悲しくてショックだったの……。もうカウルに会えなくなるかも知れないと思ったんだわ、きっと。……カウルは、ブロントがあるじなのは当然なんだけど、いつもよそよそしく話してくるの。でも、そんなカウルでも、いつも愛おしく感じていたんだわ。だから泣いてる私の画像なの。……こんな画像までカウルが保存してたのね。」

ラムル「それは、カウルの気持ちかも知れないわね母上。」


 画面がルイスの部屋に戻る。


 ルイス「喜んで、ラムル。ブロントはカウルをあなたに託すって。はっきり言ってたわ。あなたに託すその日は私に任されたの。」

ラムル「母上、それは本当⁉︎」

ルイス「ええ、本当よ。しかもカウルのデータはその後のラムルに任せるって……。でも、あなた、水の惑星ほしの報告をするんでしょ?ブロントが安心したところでカウルの話に移すのが良いと思うわ。」

ラムル「カウル……。今すぐにでもって気持ち。……うん、だけど我慢する。……水の惑星ほしの報告はもう少し後になりそうだから。」

 ラムルは神妙な面持ちになり、うつむいた。


 ラムル小声「母上。……私、一度水の惑星ほしに行ってくる。」

ルイス「え?な、何を⁉︎本当に⁉︎」驚きを隠せないルイス。


 ラムル「ええ、行かなきゃ。どうしても行きたい理由が出来たし。確かめたい事が出来たの。……でも母上は心配しないで。絶対に無茶はしないわ、約束する。」

ルイス「私には水の惑星ほしの何の情報も無いけど、それなりに遠いし……もしラムルの身に何かあったら……。」

ラムル「無茶はしないってば、本当よ。バンズとポートルも一緒に出掛ける。Ann達も一緒よ。」

ルイス「私の若い頃だってそこまで無茶はしなかったわ。なんてこと!」

ラムル「母上、出掛けたらノアーナとは通信出来ない。でも戻れるから大丈夫よ、心配しないで。この事……母上を信じてるからこそ話したの。……だから分かってください。」

ルイス「ラムル……。」


 心配そうな表情たっぷりだ。


 ラムル「母上。私は母上の娘よ。だから本当に心配無し!」

ルイス「ラムルったら……。分かったわ。ブロントには黙っておく。でも必ずお土産話、するのよ。」

ラムル「もちろん、母上。」


 ゆっくりfade-out。

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