ストーリー38~40
ストーリー38:対面
登場人物
グラン、バンズ、ポートル、フライ(声のみ)、スカーレット(回想、画のみ)
グランの別荘内に入ってきたバンズとポートル。2人共ゴーグルを頭に乗せる。
先にバンズが口を開いた。
バンズ「私達が見えていたの?」
グラン「いやぁ危なかった。奴らには気付かれていなかったようだが、流れ弾が見えてつい突き飛ばしてしまって……。」
ポートル「あの暗闇で相手も銃弾も見えていた訳?」
暖炉が暖かそうに燃えている。
側に椅子を持ってきて、
グラン「まあ掛けなよ。……俺はグラン=ジョリー。軍に席を置いている。」
ポートル「何故暗闇で見えていたの?」
グラン「ああ見えていた。俺の右目がね。義眼なんだ。」
右目を指差すグラン。見た目では義眼とは気付かない精密さだ。
バンズ「今も私達が見えている?」
グラン「何を言っているんだい?。見えるに決まってるじゃないか。……なんだか、ライダースーツのようだけど、2人はツーリングでここへ来てたのかい?」
バンズとポートルは顔を見合わせ、
バンズ小声で「悪そうな人ではないようだし、白状しよ。」
ポートル小声「そ、そうね。」
ポートル「あ、ごめんなさい。私はポートル。ポートル=ショウズよ。」
バンズ「アタイはバンズ=グロビア。メカニックをしている。」
グラン「ポートルにバンズ、2人共本当に怪我が無くて良かったよ。先に奴らに発見されてたらやられてたろうな。」
グランは2人を見ながら時折両目に手を当てている。
ポートル「それであなたに怪我は無かったの?」
グラン「ああ、それは大丈夫。」
バンズ「6人相手なのに僅かな時間で片付けるなんて凄い腕前だね。」
グラン「それもこの義眼のおかげ。暗視出来る。」
また目に手を当てる。
バンズ「さっきからどうした?目をやられたのか?」
グラン「いや、さっきから君達の姿がぼんやり見えたりするから……。右目の調子が悪くなってるのかもしれない。近く検査に行かねばいけなそうだよ。」
バンズ「いや、その必要は……無いと思うよ。」
立ち上がるバンズ、
バンズ「グランさん、ちょっと私達を見て。」
グラン「2人共、俺のことはグランでいいよ。かしこまる必要は無いさ。……で、君達を見て、そしたら何なんだい?」
バンズ「まず右目だけで見て。」
グランは左目を手で覆い、2人を見る。義眼を通してステルスの掛かる2人が見えている様子だ。
グラン「目の前に女性が2人。2人共そのライダースーツ似合ってるよ。」
冗談混じりに言った。
ポートルも立ち上がった。
バンズ続けて、「じゃあ次は下を向いてその義眼の右目を覆って。そうしたらもう一度こっちを見て。」
グランは不思議そうにするが言われた通り、うつむき右目を覆ってゆっくりと2人のいる方を見る。
グランの左目の見た目画面。うつむきから顔を上げるまでの画。
バンズとポートルの2人が見えていない。
グラン、消えている2人を探そうと見回す。周りに身を隠すスペースなど無い。
グランつぶやくように、
グラン「み、見えなくなった…。何故?どうしてだ?」
ポートル「そのまま目を覆ってて。」
バンズ「グラン。あんたの右目、暗視出来るだけじゃ無さそうだよ。」
ポートル「もう一度、右目で見て。」
グラン、左目を覆い直して
グラン「な、何⁉︎まさか精巧なホログラムじゃ……。」
グランの見た目、再び見える。立っている2人が……。
バンズ「手はもう下ろしていいよ。私達は……。」
ポートルが続けて「ホログラムじゃないわ。もう一度、義眼を覆って。」
さっきと同じ、グランの見た目、また2人の姿は見えない。
ポートルoff「そのままよく見てて。」
2人は胸に有るステルスのスイッチをOFFにした。
再びグランの見た目、ステルスが消え、姿が見える。
グランは驚いて、つい椅子に身構えた。
バンズ「あんたを襲った奴らには、アタイ達は見えてなかった。グラン、あんたの右目だけが見えてたって訳だよ。」
グラン「君達は?反逆軍ではないのか。」
ポートル「違う。ツーリングに来たわけでもないわ。」
バンズ「まさかここの人間に出くわすなんて思わなかった。」
グラン「何処かの組織のエージェントとか?」
ポートル「それも違うの。あなたのその右目と、あなた自身の何かの力が働いて、私達のステルスが無効化された……と思うわ。」
グラン「ステルス?何言ってるのかよく分からない。ヒューマノイド=アーマーでさえ装備していない。ステルスは軍でもまだ開発途上の技術のはずだが。」
驚きの表情のグラン。
バンズ「グラン、あんたは私達を助けてくれた。白状する。」
2人はまた椅子に掛けた。
バンズ「この建物は、今誰かに見張られてない?」
グラン「ここはジョリー家の昔からの建物。どこも関与していない。」
ポートル「良かった。グラン、私達の事はたとえ軍の命令でも一切口外しないと約束出来る?」
グラン微笑んで、
グラン「口外?それはない。そもそも俺は軍の上官だから、誰からの指図も受けない立場だよ。口外しないと誓うよ。」
バンズ「そうなんだ。少しは安心した。」
ポートル「私達はこの星のどこのエージェントでもない。」
グラン「この星⁉︎」
ポートル「ええ。この星ではない、他の星の生命体。訳有ってここに調査しに来たの。」
グラン「ここ以外に君達のような生命体のある星が有るのは科学者達が提唱していたのだが……。あまり信じていなかった。この星へやってくるのは侵略目的の生命体ばかりだった。君達は侵略目的の調査だったのか?」
バンズ「違うよ。この星が平和に発展している星かどうか。それを見に来ただけ。話せば長くなる。」
ポートル「敵対視だけはやめてグラン。用が済んだら立ち去るわ。」
グラン「色々訳有りなんだ。話せば長くなる……か。君達の星は高い技術を持つ星のようだ。何故俺と会話が出来る?」
バンズ「言語は解析済み。アタイ達の言葉は翻訳されて出力してる。」
バンズは襟元の小型スピーカーをチョンと指差す。
続けてバンズ、「アタイ達の姿を消せるのはステルスだよ。」
ポートル、立ち上がり、
ポートル「グラン、ちょっと窓の所へ。」
グラン、バンズと窓に歩く。
窓辺の3人の後ろ姿。
夜明けが近づき、辺りは薄っすら明るくなってきている。
ポートル「向こうの平らな所。」
グラン「あの原っぱが何か?」
ポートル、腕のモニターを操作、
ポートル「フライ、聞いてる?一瞬だけ
フライ「了解。実行します。」
ステルスが消え宇宙船が……、そして直ぐ消えた。
目を見張るグラン。
バンズ「船のステルスは強力だったから、あなたの目では見えなかったのかも知れない。」
ポートル「あれでここへ上陸したのよ。」
グラン「全く気付かなかった。」
バンズ「音は消され視覚的に見えないだけ。見えなくても触れる事は出来る。さっきアタイ達を突き飛ばせたでしょ?アタイ達のステルスが見えたのは偶然じゃない。あんた自身にそれなりの能力でも有るのかも知れないね。」
画はグランが原っぱと言ったフィールドに少しzoom。
かつてスカーレットが見たブロントの宇宙船とover-up。
Fade-out、inで、暖炉の家族の写真。ゆっくりディゾルプ。
ストーリー39:母の協力
登場人物
ルイス、ラムル、ジャン
カーレイ邸リビング。
ルイス「ねぇラムル?、ブロントはまだ戻らないから、その間、少し地下を片付けましょうか。」
ラムル「母上、また入らせてくれるの?」
ルイス「ブロントは私に任せてくれたわ。あなたは気にしないでいいのよ。」
地下へ降りていく数カットの画。
扉の前のパネル、手をかざして開く扉。
ルイス「まったく音声制御がブロントのままなのが手間ね。今灯りを点けるわ。」
点いても一部分、数カ所の照明だけ点灯する。
ラムルが入ってくるのを見て、
ルイス「あら?ラムル。ジャンを連れてないの?ジャンもここへお呼びなさい。」
ラムル「リビングで待機よ。待って、今呼ぶわ。」
腕のモニターでジャンを呼び出すラムル。
ラムル「ジャン?聞こえる?私の居る位置まで来てくれる?急がなくてもいいわ。階段は気を付けてね。」
ジャンoff「了解、ラムル様、ただいま向かいます。」
ルイス、シートに座りながら、
ルイス「この中にはお目当ては見付からないと思うけど、ジャンに探させてみて。ブロントが戻らないうちに調べなきゃ。」
ラムル「うん分かった。……それより母上、お手伝いって……?」
ルイス「カウルにはね、当時の私のデータが少し残っているはずなの。でも私からどこまでカウルに聞けるか分からないけど……。」
ラムル「母上、それはカウルが起きたらの話。無理だわ。」
ルイス「ガルシアが飾っていた古い写真で閃いたの。婚姻後に私の古い写真は処分してしまったわ。カウルの中の当時の私の画像をラムルに見せたいとブロントに話してみる。」
ラムル「でも急に今になって母上の写真なんて……。」
ルイス「あなたはガルシアの所で私達の昔話を聞いた。その時ガルシアの船に有った写真は見なかったとしたら?当時どんなだったか知りたいし見たくなるでしょ?」
ラムル「父上には私が昔の写真が見たいと言っていたから、それでお願いするのね?それならカウルを起こす理由が出来る。」
ルイス「カウルはあなたを知らない。データは無いもの。昔の画像だけ受け取るわ。だから今は起こさなくていい。ブロントはいずれはカウルを託してくれる。それまで待ってなさい。残存データにどこまでこだわってるか、あの人の顔色を伺っておくわ。それだけ。」
ラムル「そうね、今後話を進めやすく出来るかも。」
ルイス「ブロントの顔色を伺うだけよ。それ以上の詮索はしない、いいわね?」
ラムル「ええ、もちろん。カウルの為だもの。」
ルイス「ラムルのお手伝いはそれよ。口裏合わせるだけ。頼むわね。」
ラムル「母上―。」
ルイスに飛びつくラムル。
……とそこへジャンが入って来た。
ジャン「お待たせしました。ラムル様。」
ラムル「ごめんねジャン。あなたが階段は苦手なのは分かってたんだけど……。」
ジャン「構いませんよ、お気になさらずに。」
ラムル「早速だけど、ここ全体の金属の解析をお願い。あなたのトレーに預けた小さな板と同じ成分があったらメモリーしてね。」
ジャン「了解、ラムル様。では実行に移ります。」
ジャンは周囲の調査を開始した。
ルイス「近いうちにブロントに話すわ。……それから、当分ジャンはブロントの前では大人しくさせとくのがいいわ。優秀なAnn である事が知れてしまうでしょ?。」
ジャンが動き回る画でディゾルプ。
ストーリー40:グランに見えたもの
登場人物
バンズ、ポートル、グラン、ピコ、フライ
ジョリー家別荘。暖炉の前の3人。
ポートル「グラン、1つお尋ねします。この星の人達は平和に過ごしてますか?幸せを感じる日々を過ごしてるのかしら?」
グラン「外の景色を見ただろう?この星の人達はゆったり落ち着いた時間を過ごしているはずだよ。俺の所属する軍はこの星の人達の為にある。」
バンズ「そお?……さっきの奴らみたいに武器を持つ者がいる。そしてあんたも同じ。それで平和と言える?私達の星では一般人は武器を持たない。」
グラン「俺も確かに武器は持っている。でもそれは、反逆軍から守るため。一般人を傷つけたりはしない。軍が有るのは侵略者から守る為でも有る。今は反逆軍には銃を向けるがいずれ反逆軍とも和解出来ると信じて活動しているよ……。今の俺から言ったところで信じないかも知れないけどな……。そうだ。疑っている様なら、君達がここを去る時、上空から一般の人達の様子を見て帰ったらいい。少しは分かってもらえると思う。」
少し寂しげな表情に変わるグラン、暖炉に向かい、バンズやポートルに背を向けた。もう立ち去った方がいいという事か。
立ち上がるバンズ、ポートル。2人の後ろ姿ナメ暖炉の前のグランの椅子。
バンズ「助けてくれてありがとう。これで戻ることにする。」
ポートル「ここの人達の様子、見てみるから……。」
2人はステルスを掛ける。
画面上から消える画。グランの背に画面転換
グランは振り向かずに2人に言った。
グラン「再度この星に来ることが有ったら、俺を訪ねてほしい。約束してくれ。決して悪いようにしないから……。」
暖炉の上の写真の画。ドアの開閉の音。
バンズとポートルが別荘を出て行った。(靴音のみの表現)
画面はマーデクトのメインルームに戻ってきた2人に変わる。
ピコとフライが迎える。
ピコ、フライ「おかえりなさい。」
ピコ「バン、周囲のデータ収集は終わりました。」
フライ「この星のこの場所の位置データは保存して有ります。」
バンズ、ポートル少し沈み気味。
バンズ「ありがとピコ。」
ポートル「ありがとうフライ。もうノアーナに戻る。帰りがけにここから近い都市の上空の様子を画像収集して。」
バンズ「じゃあフライ、頼むね。」
上昇するマーデクト、ステルスを見せる画に。
奥へ飛んでいく。
メインルームに画面転換。
後ろからの画。シートの2人、少し奥の操縦席にフライが、その横にピコが見える。このままの画で、
バンズoff「これで……良かったのかなぁ……。」
ポートルoff「あの人のこと?」
バンズoff「うん。もう少し話した方がアイツも安心出来たのかも……って思ってさ。」
ポートル「軍の上官だって言ってた。口外されたとしたらどうなる?バンズならどう思う?」
バンズ「アイツは口外しないと言ってた。それを信じるしかないよ。あの時の反逆軍とかって連中達をモノともしない。腕が良い……もしくは変わった能力が有るか……。悪い奴とは思わないよ。」
ポートル「またあそこに行けば会う事は出来るのかな?」
バンズ「ノアーナに戻ったら、ラムルにはここのデータと一緒に詳しく話そ。それからまた考えたらいいさ。」
ポートル「そうね……。」
バンズ「フライ、アタイのドックに直行よ。頼むわね。」
ポートル「私寝る。バンズも休んで。」
シートがリクライニングで少し倒れる画でディゾルプ。
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