7話 世話

知らない天井。乳白色という落ち着いた色をした天井が見え、それとの距離は遠く感じた。

その異質な空間をじっくり観察する。左手にある窓からは、太陽の白い光が差し込み、窓枠には花瓶があり、煌びやかな花が飾られていた。


そして、右手を見ると、手の甲には点滴の針の部分があり、その管の先には点滴の器具がある。


そして、何よりこの部屋は広い。ベットは一床しかないにも関わらず、集団病棟の部屋と同じ広さだ。


「起きましたか。」


右手奥にある扉が開き、聞き覚えのある声がした。


えーっと、名前が...あれ?誰だ?


「渋川みのりです。」


そうそう。渋川、渋川。てか、ちゃっかり心を読むのやめろ。


「おはようございます。今日は5月13日土曜日で、朝9時です。寝坊ですね。ちなみに学校は休みです。」


「ご報告ありがとうございます。」


「「……。」」


「いや、そうじゃねーだろ。なんで、あんたがいるんだよ。普通はドクターじゃねーのかよ。まぁそこはいいとしよう。全然良くはないが、話が進まないから一旦おいて置こう。で、ここはどこだよ。病院だよな?医療器具があるところからしてそうだよな?」


「病院であることは間違いありません。ここは羽賀木家が所有する土地に隣接する病院です。」


「よし、そこまではわかった。じゃあ、話を戻そう。なんで、あんたがいるんだよ。そんなこと言われましても、みたいな顔すんな。ドクターはどうした。メイド喫茶ならぬメイド病院か?新ジャンルで売り出そうとしてんのか?萌え萌えキュン又は、おいしくなーれから痛いの痛いの飛んでいけーに変わったのか?」


「いえ、食事などにケチャップをかけて欲しい、と言われたら渋々かけますよ?」


「アフターケアもばっちり!じゃねーよ。危ねぇ。もう少しでボケの世界に踏み込むところだった。」


「いや、片足突っ込んでますよ?」


うるさいよ?おふざけはこの辺にして、


「やっと起きたってことは何回か来たんだろ。用件はなんだ?」


「警察の方がお見えになっています。」


あァン?警察だと?


「待て、俺が捕まるとかいうパターンじゃないよな?」


「大丈夫かと思われます。何回もお世話になっているということなので。」


「前科何犯かありそうな言い方するな。」


「頭、冷やしときます?」


そういうと、点滴に近づき、少し動かす。そして、しゃがみ込み、壁にある扉を開ける。すると、ほんのりと冷気を感じる。ん?冷気、冷気、冷気。もしかして、


「ウェイト、ウェイト、ウェイト。」


すると、渋川はどこからか、ダンベルを取り出した。


「はい、どうぞ。」


「いや、そっちじゃねぇよ。たしかに同じだけど。てか、頭を冷やすってのは冷静になるって意味なんだよ。何、物理的に冷やそうとしてんだ。」


すると、渋川は首をかしげ、


「いや、何言ってんだこいつ。みたいな顔するのやめろ。」


「冗談はこれくらいにして、お通ししますね。」


聞いちゃいねぇ。


「入ってきてください。」渋川がそういうと、一人の女性が入ってくる。てか、こいつは、


「久しぶりだな。少年。」


すまない。俺は勘違いをしていたようだ。


「俺が世話してやってる側じゃねーか!!」


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