3話 俺の場合はラブコメイベントは起きない

昼休み、校舎裏。学園ものやラブコメものなどでは、なんらかの好感度上げイベントが発生する、ある種、聖域のような場所とも取れるだろう。


しかし、俺は違う。さっきやらかした、天然アホバカドジ後輩とお話しをしてするためにいる。


教室を出るのには苦労したが今、正さないといつか任務で失敗してしまうかもしれない。


「さて、なぜここに呼んだか、わかるかな?」


笑顔以上に圧を感じるものはないと思っている。

ヒィッと情けない声をあげている後輩を眺めながら、美少女だなとつくづく思う。


青みがかった髪は後ろでいわゆるポニーテールでまとめられており、目は碧眼で、透き通っている。鼻は筋が通っており、均整のとれた顔立ちをしている。


てか、お前


ギャルみたいになってんじゃねーか。流行か?黒ギャルの時代が終わって、普通のギャルの時代が来たんか?流行りに疎いせいでわからない。そんなことを考えていると、


「先輩。さっきはすいませんでした。」


深々と頭を下げ、謝罪してくる。弧を描くような綺麗な謝罪だ。しなやかさがないとできないことだと思う。


「頭を上げてくれ。次からは気をつけてくれ。あとみんなには地元が同じで親の仕事を手伝っていたとか、幼馴染で、とか言っておいてくれ。それ以上はいい。よろしくな。」


それだけ言うと帰らせる。先に帰らせないと何かあったのではないか、と思わせるかもだからね。


ちょっとトレーニングしていくかな。


五分経ち、教室に戻る。


教室に戻ると嫌な視線を受ける。なんだ?俺何かしたのか?


耳を澄ませると、


『ストーカー』など『キモい』だのなんだ?


そんなことを考えながら席につき、読書用の本を広げていると、


「あんたさ、気持ち悪いんだけど。」


「あ?」


やべべ。素がでちゃった。なんか少し気圧されてる。てか誰やお前。


「えっと、誰ですか?」


「私のこと知らないの?まあいいけど。」


転校初日やぞ?全員知ってるけど名乗れ。礼儀をしれ。高校生は大人に分類されるんやぞ。


「八女花美。羽屋胡桃の親友。あのさ、迷惑してるらしいからさ。話しかけないであげてよ。」


「彼女が迷惑してるって言ったんですか?」


「いや、ついてくるのキモいしさ、迷惑に決まってるじゃん。」


印象の薄いモブ風情が。勝手な思い込みで話しかけないでほしい。だるいんだよ。潰すぞ。まぁ、そんなことはしないんですけどね。


「すいません。でも、彼女から話しかけてきたら、迷惑じゃないですよね。それならいいですよね?」


「あるわけないじゃんwバカなの?まぁそれならいいよ。ストーカー野郎w」


そんなことを話し合っていると、


「センパーイ。また今度、遊び(任務)ましょうよー。」


我々の境界では遊びは、隠語で任務になる。こいつとやるの不安だな。なんか、情報教えてくる頻度高くなるし、


「また今度な。」


そして、モブちゃんに向けて、ニコッと笑顔を見せる。ギリッという音を出しながら、睨んで、もといたグループに戻っていく。今度、しばいたるわ。おっと、エセ関西弁が。失礼しました。


そして、陰口を叩かれながらも1日が終わり、下駄箱に行くと、手紙が入っていた。


『校舎裏で待っています。』


可愛い丸字でそう書いてあった。告白の線はない。だって知らない人ばかりだもん。そう思いながら、校舎裏に行く。


20分後、誰も来ないし、いない。悪戯か?まぁ帰ろうかな。そう思い下駄箱に向かおうとした時、


「あなたが、矢創羽谷ですよね。」


人がいないと思っていた方向から聞こえた声。振り向くと、学校には似つかわしくない、メイド服をきた美女が背筋をしっかり正し、立っていた。


「そうですよね?」


「そうですね。よく分かりましたね。クライアントさんの部下か何かでしょうか。」


体を彼女がいる方向に向ける。頭だけでは失礼だ。


「はい。申し遅れました。羽賀木様のメイドを務めております。渋川みのりと申します。」


オレンジに光る双眸は俺を見つめており、長い髪はしっかりまとめられており、明るめの茶髪は光を反射させ幻想的な色になっていた。夕日自体も綺麗だがそれが映し出すものも美しい。そんなことを考えていると、


「ある事情により、私、直々に赴いた次第です。契約の変更についてです。」


言っただろ。俺の場合、校舎裏であったとしても、ラブコメのような展開にはならないと。

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