4本目 山奥の隠れ家



 玄関のドアを開けて、自分の住まいである山奥の隠れ家ログハウスの中に入った。

 家に入ると右手にはキッチンとダイニングルームが見える。キッチンのコンロでは火にかけられた大壷のような鍋がフタをコトコトと蒸気で揺らしている。

 窓の外を見ると、陽が暮れかけている夕暮れの光が差し込んでいた。


 隠れ家の台所では年がら年中、壷鍋を火にかけている。つまり俺は壷状の鍋に火をかけたまま外出していたことになる。地球でこれをすれば大火事になるが、俺の隠れ家の場合は火事にならない。なぜならこの世界は異世界ファンタジーであり、外出しながらでも魔法で自由に火を点けたり消したりできるためだ。本当に便利だ。


 鍋壺の中では緑色の液体がグツグツと煮えている。粘り気のある泡がゴポゴポと弾けている様は溶岩マグマのようだ。この緑色の液体が何であるかは知らない。

 とにかく魔法使いの山奥の隠れ家の台所で火にかけられている壷鍋の中身といえば、緑の濁った異臭騒ぎの液体だと相場が決まっている物らしい。

 この世界の創造主である挫刹がそう言っているのだから、この家のコンロでも緑の液体が煮立っているのだろう。不満があるのなら挫刹に言ってくれ。この描写を考えたのは挫刹なので俺は無実だ。鍋の火加減も、挫刹が火事にならないように自動的に調整する時がある(火事になった時の描写を挫刹がしたくないかららしい)。

 

 と、いうわけで、この家の管理は概ね、この作品を書いている挫刹が自動的にやっている。

 ココに帰れば、俺はいつでも掃除された綺麗な部屋で、フカフカの布団ベッドに寝っ転がって直ぐに熟睡することができる。俺は魔法で睡眠しなくても生きていける身体になっているが、そこは気にしないで貰いたい。


 他にもこの隠れ家の機能の話をすると、隣の畑では植えた薬草や薬菜やさいが収穫できる。

 畑では様々な植物が栽培できるが、残念ながらその全てが俺にとって不要なものだ。俺は食事も睡眠も呼吸も排泄トイレも全てを必要としない(俺は人間か?)。

 だが性欲だけは人一倍に不必要にあるので55歳の加齢臭がすぎる脂ぎった中年のオッサンは年がら年中発情している。早く若い女子高生たちと裸でハーレムして付き合いたい。


 畑で植物を植えておくと、俺がどこかの依頼契約クエストや遠出の肉焼きなどから帰ってきた時に収穫できる。どこかのゲームみたいだな? 挫刹にはくれぐれも著作権には気を付けてもらいたい。俺が消される。作品も消される。


 今は薬草アウラウネや薬菜やさいのマンドラゴラにマンドレイクを植えている。畑に行けば今も収穫できるが面倒なので放置する。薬草アウラウネは緑色の葉っぱみたいな薬草で、薬菜のマンドラゴラとマンドレイクは人型をしたのような根菜だが、それぞれ色が違う。マンドラゴラは赤でマンドレイクが緑色だ。当然、引っこ抜くと叫ぶ。耳が痛い。ヤツラの絶叫は空間を割る。

 ちなみにこの世界でもニンジンという言葉は通用する。実際にこちらでも只の野菜でしかない人参を存在させるかどうかは挫刹も考え中だという。異世界ニンジンなんつってな。


 普通の人間であれば、畑で採れた薬草などを原料にして薬草液ポーションなどを造ったり食べる前に呑む!ったりするのだが、魔法に精通している俺には、その必要がないので割愛させてもらおう。


 この苔むした暗がりの丸太小屋ログハウス調の隠れ家は本来なら、55のおっさんの俺が15歳の女子高生たちとハーレムして過ごす予定の場所だったのだそうだ。それがカクヨムから警告が来てオジャンになった。覚えてろよ運営。

 この家の奥にある寝室のベッドで複数の女子高生たちを相手にずっとベッドシーンを繰り返すはずだったのだが、カクヨム運営の所為で全てがパーになったというワケらしい。俺は相当がっくりキている。


 しかし警告を受けてしまったものはしょうがない。


 これからは大人しく肉を焼いていこうと思う。そういえば前回や今回は全然、肉を焼いていないので題名が嘘タイトルになってしまっているのが気になるが、今回からしばらくはこの世界の基礎知識を語っていこうと思っているので、肉を焼くのはまたこの世界を紹介し終わってからにしよう。そうしよう。上手に焼けませんでした。


 右手のキッチンとダイニングから目を離すと、玄関から左手には暖炉とソファが備え付けられたリビングがある。

 冬はここで、暖炉で薪をパチパチさせながらコーヒーをすすって本を読むのが日課にはまだなっていない。これから日課にはしようとは思ってはいる。今年の冬は、地球の諸君たちが物凄く羨むスローライフでくつろげそうだ(ニヤリ)。


 そうそう。本といえば、ここで俺と挫刹の連絡手段も説明しておこう。

 俺はリビングにある窓際の本棚から一冊の赤い本を取り出して、カクヨムの読者諸君キミたちに見せる。


 この本は自動書記オートマティクスだ。今から20年ほど前に俺が日記を書いている最中に急に文字が浮かび上がって、ここではない異世界の出来事を勝手に記述するようになった。

 その出来事というのが何を隠そう現在の地球の概ね日本で発生している事象情報だった。多分そちらの現地時間では西暦2021年の7月31日を指しているだろう。日本そっちで発生している出来事がこの本にも今も大まかに記載され続けている。俺はその貴重な本を入手たというワケだ。

 ただし、これと同じような自動書記の本の存在はこの異世界ファンタジー世界でもそれなりの数が確認されているが、今の所、地球の日本の挫刹のプライベートが事細かに書かれているのは俺が持つ本だけらしいので、挫刹に等しい超天災てんさい的な魔力が使えるのも必然的に俺だけということになる。鼻高々~♪。

 これで俺が人並み外れた魔力が使える理由は分って貰えたことだろう。


 あと時々、お前たちカクヨムの読者が気になっている現実リアルの挫刹の現在の近況や心境もこっちでエッセイ代わりに俺が代わって語ってやることがあるかもしれない。これはこの作品を読んでいる非常にラッキーな読者だけに贈る独占情報だ。他には漏らすなよ?


 では次回の話では下の町におりてクエストを受注してみようと思う。

 きっと働きたくないカクヨム読者諸君は阿鼻叫喚となることだろう。ンガー、くっくっクック。







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55歳のオッサンが異世界で肉を焼くだけ 挫刹 @wie

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