第22話 助けて[第2階層編]

 ほむらから届いた、



 "助けて……。“



 というメッセージを、オレはかなでに伝えた。



「"助けて……。"ってことは何かあったってことだよね?」



 かなでの読み通り、何かあったと考えるべきだが、オレはメッセージがかなでではなく、オレにしか届いていないという状況に少し違和感を感じていた。



「普通なら真っ先にかなでに相談するだろ?それなのにオレにしか届いてないってことは……。」



「緊急事態ってこと?!」



「可能性はあり得るな。」



 プレイヤーだけでなく、NPCにまで手を出す残酷なプレイヤーもいるくらいなので、かなり不安だった。



「とりあえず合流を試みてみよう。」



 オレとかなでは連携し合い、ほむらの居場所を突き止めることにした。



 ♢



 探すのに少し手間取ってしまったが、ほむらは《農耕の街グランディア》の外れにある小さな酒場にいた。


 お店の端っこで怯えたように小さくなっていた。


「ほむら!!」


 オレの呼びかけには、ビクッとした反応を見せると同時に、唇まで真っ青の状態だった。


「ほむらちゃん、もう大丈夫だよ。私たちが来たからね。」


 かなでがほむらを抱き寄せ、寄り添うことで少しだけ落ち着きを取り戻していった。


「ご、ごめんね。かなで……イザナ……。わた、わたし……。」


「無理に話さなくていいよ。落ち着いてからで大丈夫だから。」


 かなでの言葉に安心したのか、ほむらは深呼吸を大きくすると、オレが店に来た時に注文しておいたホットミルクに少し口をつけ、意を決したように話し始めた。



「私、この第2階層に来てからずっとPVP(プレイヤー対プレイヤー)に参加していたの。ルイも一緒で、毎日のように参加して、気付いたら私のランキングは上位の32位まで上がってたの。」


「32位!すごいね。」


「うん……。でもある日からPVPにあいつが現れるようになったの。あの残忍でプレイヤーをプレイヤーとも思ってない極悪非道のあいつ……。」


「あいつ?」


「かなで、今はほむらの話を全部聞こう。」


「う、うん。話遮っちゃってごめんね。」



 ほむらはオレたちのやりとりに首を横に振る。



「ううん。最近になってあいつのやり方を問題視するプレイヤーたちが口々に批判するようになったの。そのプレイヤーたちは全員……返り討ちにされたわ。持っているレアアイテムや、装備、それに大切なものを賭けさせて全て奪っていくの。」



 ほむらは身震いしながらも話を続ける。



「そしてついに……私も声をかけられたの。レアアイテムである《雷兎の指輪》を賭けないかって。もちろん断ったんだけど、そうするとその……性的に迫ってくるかのようにすごい力で押さえつけられて、私……抵抗できなくて。」



 かなでがほむらの手をぎゅっと握りしめる。

 いつも優しげなかなでも、この時だけは怒っているように見えた。



「それを見たルイが、私の代わりにPVPを受けたの。HP無限モードで……。」


「なんだって?!」



 かなでに話を遮るなと言っていたが、オレは思わず反応してしまった。





【オンラインNOW!】のPVPには3つのモードが設定されており、


 ①初撃決着モード

 →最初の1撃を当てた方が勝ち判定となるモード。



 ②時間判定モード

 →プレイヤー間で上限3分の制限時間を設け、残りHPにより勝負判定されるモード。



 ③HP無限モード

 →HPが減らない特殊仕様だが、ダメージを受け過ぎてしまうと痛みに耐えれなくなり、HP全損判定がなされ強制的にログアウト&ペナルティを受けてしまうモード。




 の3種類となっているのだ。



 普通は①か②しか選択しない。



 ③はせいぜい自身のプレイスタイルを磨くために、フレンドと一緒に入り練習に励むためくらいにしか使わないのだ。



「ルイ君は……もしかして……?」


 かなでの問いに、ほむらは力なく頷いた。



「滅多うちにされて、最後の最後まで一方的に打ちのめされて……ログアウトさせられたの。最後に私に向けて逃げろって叫んで……。」


「……そんな。ひどい。」




 これは実に胸糞悪い話だな。



「そう言えば、タケルには連絡したのか?」


 オレはほむらに向けて質問してみる。



「ルイが私の代わりに戦うことになった時にしてみたけど、繋がらなかったの。」


「タケルくんは……私も何回か見かけたけど、βテスターさんたちと毎日忙しそうにしてたから、気付かなかったのかも。」



 かなでの言葉で、とても声をかけれる雰囲気ではなかったことがよく分かった。



「とりあえず事の重大さは把握できたよ。かなではもうしばらく、ほむらと一緒にいてやってくれる?」



「うん。イザナくんは?」



「オレは……少し情報を集めてくるよ。」



 そう伝え、オレは酒場を出て"ある人"に会いに行った。

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