第9話 "角兎"クエスト攻略法[第1階層編]


「実はですね……"角兎"のクエストがあるからこっちに飛びつきやすいんですけど、まず行くべきはあの小さな洞窟なんですよ」


「洞窟っすか?なんかお宝でもあるんっすか?」


 ルイはすかさず反応してくる。



「お宝とは違うけど、最初の頃の便利なものが入手できるって感じかな」


 説明をしながらみんなを率いて移動していたので、いくつかある小さな洞窟の1つにすぐ辿り着いた。


「うわ、なにここ。暗いし気味悪い」


 ほむらの声が響き渡りながら、奥の方からそれとら違う音が聞こえてきて、人型のガイコツモンスターが現れた。


「やばい、モンスターだ!みんな戦闘態勢!」


 タケルがリーダーっぽく声をかけたものの、他のメンバーは初戦闘のため戦闘態勢と言う声かけに動揺して反応できずにいた。


「やばいっす、まじでやばいっすよ」

「どんどん……近づいてくるよ」



 (……え?ちょっとちょっと、何でみんなびびってるんだろう)



 オレはみんなの前に1人で出ていった。



「ちょっとイザナくん?あぶないっすよ?!死んじゃうっすよ?」

「イザナくん、早く戻ってくださいっ!」

「あの……心配してくれてありがたいですけど、こいつめちゃくちゃ弱いんで……」



"えっ……?!"


みんなの驚きの声が響き渡る中、オレは初期装備である【木の棒】を装備し、ガイコツモンスターに思いっきり叩きつけた。


 ガイコツモンスターは砕けてバラバラになり、オレの目の前には"アイテム入手!"のポップが表示された。


「ここのガイコツモンスターは、倒してもすぐに復活するようにできているんで、完全に倒しきれないんですよね。だから経験値は獲得できないんですけど、その代わり……」


 オレは先程の入手したアイテム、いや装備を装着してみんなに見せた。


「それは?」

「こいつは【骨の剣ボーンブレード】です。“角兎"にかなり使える装備なんですよ」

「私、1層のどこかに使える剣があるかもしれないって噂は聞いたことあったけど、こんなところにあっただったなんて」


ほむらは驚いているようだった。


「こっちの方が【木の棒】なんかより断然クエスト効率もだいぶ上がるんで、みんなで手に入れてから"角兎"狩りに行きましょう」


 それから無事に全員がガイコツモンスターから【骨の剣ボーンブレード】を手に入れることができた。


 お化け的なビジュアルが苦手なほむらと、ゲーム経験が全くないという、かなでの2人は倒すのに少し手間取っていたが……。




 ○【ボーンブレード】(E) [所持数:1]

 →骨の剣。何の骨かは不明。装備者のATK(物理攻撃力)+5。





「イザナのおかげでクエストが捗りそうだ。さてと、とりあえずここからはひたすらクエストと討伐の繰り返しだな。みんな、頑張ろうー!」


"おーーーっ!"



リーダーであるタケルの呼びかけにみんなで応える。



オレたちはひたすら "角兎" を狩った。やはり【骨の剣ボーンブレード】の効果もあって、"角兎"クエストはかなり効率良く進めることができた。



 討伐→クエスト完了報告→クエスト受注→討伐。

 ただひたすらにこれを繰り返した。



 ♢



 あっという間に時間は過ぎ去り、21時になる頃には全員のレベルが5まで上がっていた。


「すごいっす!1日でレベル5まで上がるなんて。レベル5って言えば最初の転職のレベルっすよ!」


 レベル5になった時点で、実際は正式な転職にはならないが、物理系統職業か魔法系統職業かのどちらかに就くかの分岐点になるのだった。


「そう言えば、みんな職業は決めてるの?」


ほむらが唐突にみんなに質問する。


 長時間色々な話をしながら狩りをしていたので、オレたちの仲は深まり、その過程で自然と敬語は消えていた。


「俺は【聖騎士パラディン】かな。やっぱみんなを護る盾ってかっこいいし。そう言うほむらは何にするつもりなんだ?」


タケルに続いてほむらが答える。


「私はβテスターたちの情報から攻撃魔法系統がかなり有利だって知ってるから、やっぱ【大魔法師ハイウィザード】かな」

「はいはーい!僕は【龍騎士ドラグーン】になるつもりっす!」



ほむらに続いて今度はルイが発表してきた。



「【龍騎士ドラグーン】って……普通の職業と違って難しいって聞いたよ?」

「そこがいいんっすよ〜。燃えるっしょ!」


 ほむらの言う通り【龍騎士ドラグーン】は少し難易度の高い職業になるのだが、どうやらルイにはルイなりの拘りがあるみたいだ。



 ○【龍騎士ドラグーン

 →長槍を自在に扱う中距離物理系統の上位職業の1つ。自身に龍の力のバフをかけ、短時間だが爆発的な高火力を出すことができる。トリッキーな動きで敵を翻弄できることも魅力の1つ。



「ちなみにイザナくんはどうっすか?やっぱ【双剣士ツインセイバー】っすか?」



「いや、オレは……【暗殺者アサシン】かな」


「えー?!イザナくんは目立ちたがりだと思ってたから、てっきり二刀流とかしたがると思ったっす」


 目立ちたがりは余計だ……が、確かに合っているぞ。

 そしてまだこの時点でも二刀流への憧れは捨てれていないのも、心の中で正直に答えておこう。



「最後はかなでね。かなでは何にするつもり?」


かなでには、ほむらが質問していた。


「私は……どうしようかな。ゲーム自体初めてだから選ぶ基準も分からなくて。ただ、今日みんなと一緒にしてて、パーティーの……みんなの役に立ちたいなって思ったの」

「うんうん!」

「……だから、もし回復役で支えれたら素敵かなって」


「いいじゃんいいじゃん!じゃあ【大司教ビショップ】だね。同じ魔法系統だし、一緒に頑張ろうね」



 タケル→【聖騎士パラディン

 ルイ→【龍騎士ドラグーン

 ほむら→【大魔法師ハイウィザード

 かなで→【大司教ビショップ


 みんな道は違えど、しっかりと育成を進めればかなりバランスも良いし、強いパーティーになれそうだな。


(タケル)「んじゃ!今日は長時間頑張って疲れたし、みんなまたな!明日も良かったら18時から一緒に狩りをしよう」



 タケルの提案にみんな異論はなかった。

 全員のフレンド登録を済ませ、オレ以外の4人はログアウトした。



「パーティーってのも、案外悪くないもんだな」



 ソロで効率と最強になるために攻略することだけを重視してきた自分だったが、みんなで楽しく狩りをした今日は思ってる以上に楽しかった。



 だが、あくまでもそれはそれ。

 今回のオレの目的はリスタートされた時からブレず最強になってクリアすることって決めている。


 つまりプレイヤーの数が減るここからが、オレの時間だ。


「とりあえず、更に"角兎"クエストしまくってレベル上げとくか」



 オレは装備を【骨の剣ボーンブレード】から【アイアンソード】に切り替えた。



【ステータス一覧】

【名前】イザナ

【レベル】5(105)

【メイン職業】狩人(物理系統分岐職)

【サブ職業】未解放

【スキル一覧】

 ☆マナコントロール☆ダブルアタック(NEW)


 HP(体力):500

 MP(魔力):12000

 ATK(物理攻撃力):150

 MATK(魔法攻撃力):51600

 DEF(物理防御力):50

 MDEF(魔法防御力):11

 AGI(素早さ):61

 CRI(クリティカル):1


【装備一覧】

 武器(手):アイアンソード(E)

 防具(頭):なし

 防具(体):冒険者の服(E)

 防具(腕):なし

 防具(足):冒険者の靴(E)


【状態異常】

 魔神王の呪い

 覚醒者の兆し



 ☆【ダブルアタック】(NEW)

 →物理系統分岐職になると覚えることができる。1回の攻撃で2回分のダメージを与えることができる。再使用までの時間は3分。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る