第3話 ラストアタックボーナス[始まり編]

 魔神王アイヴィス・ヘルゴートを倒したオレたちの前には、 


 ——Congratulation!


 の文字が浮かび上がっていた。


「やったなイザナ!」

「まじで疲れた……けど、ほんとオレたちの大勝利だな」


 オレはグレンに拳を突き出す。

 グレンも "へへっ" と笑いその拳に応えてくれた。


 2人の拳が合わさったと同時に "ピコンッ!"とポップ音が鳴り、討伐報酬の一覧が表示される。


「いやあ、さすがは魔神王。これはかなりいいアイテムや装備ばかりだね、イザナ。それにステータスポイント+10000だよ!どこに振るか慎重に考えないとだね」

「あぁ、そうだな」


 と、返事をしたものの既にステータスポイントの振る場所は決めていた。



 (当然10000ポイント全部MATK(魔法攻撃力)に投入しておこう)



 ステータスポイントを全て振り終えた後 "ピコンッ!" と再度ポップアップの表示が出た。



 そこには【ラストアタックボーナス入手!】と書かれていた。



「ラストアタックボーナス?なんだこれ?」

「ん?イザナが魔神王に最後の一撃を与えたからかな?僕のところには出てないや」

「ラストアタックに報酬なんて今までなかったから驚きだな」

「魔神王だけラスボスだから特別なのかもしれないね。ねえ、どんなものくれるの?」

「うーんどれどれ。ちょっと待ってな……」


 オレは確認するためにポップされた表示を押してみる。


「ボス攻略も終わったし、これからはトッププレイヤー同士のPVP(プレイヤー対プレイヤー)が盛んになるだろうからそれに有利なアイテムだといいな」


 と個人の希望を口に出していると



 『特別報酬を選択してください。』



 の文字が浮かび上がった。




 ○【パンドラBOX】

 →不思議なことが起こるかもしれない謎の箱。



 ○【魔神王シリーズ装備(SSS)全種】

 →最高ランクの装備。セット効果も付与される。





「どうやら選択制……みたいだな。不思議なことが起こるって書いてる"パンドラBOX"ってのと"魔神王シリーズ"の装備だな。レアリティSSSで最高ランクになってるわ」

「うっわ!やったじゃんイザナ!その2択なら【魔神王シリーズ】で決まりだね。これはトッププレイヤーも圧倒する感じになっちゃうんじゃない?ますます最強っぷりに拍車がかかりますな〜」


 グレンは少しいじってくるかのように、にやにやしながら言ってくる。


「やっぱそうだよなあ」


 確かにオレは攻撃魔法職の中でも最強の火力を誇り、トッププレイヤーの中でもかなり中心にいると思う。今後のPVPを意識するなら確実に強くなれるであろう【魔神王シリーズ】を選ぶべきだろう。


 ただ、攻撃魔法職最強の称号は個人的には手に入れているつもりでいる。


 名前を挙げろと言われれば、数人の中に間違いなく自分の名前も入るだろう。


「この【パンドラBOX】の不思議なことってのは、ちょっと気になるよな……」

「ちょっ、待ってよイザナ。まさか悩んでるの?それは何が起こるか詳細は書かれてないんだよね?使い物になるかも分からないじゃん」


 オレは【パンドラBOX】を押してみる。



 ——更なる強さを求め、突き進みますか?

《YES / NO》


 の表示がされた。



「ははっ、更なる強さか。いいぜ、これを選べばどれだけ強くなれんのか……賭けてやるよ!」

「イザナ!やめなってば!」


 グレンの言葉に耳を傾けることなく、オレは "YES" のボタンを押した。



 ……この時は、グレンの言う言葉を聞いておけば良かったと後悔することになるとも知らずに。



 瞬時に周囲が真っ白になり、自身が眩く光り始める。



「なんかでっかいことが起こりそうだな。これは期待できんじゃねーの?」



 数秒ののち光は収まり、辺りは30階層の【魔神王の城】から変化していた。



 それは見たことがある風景。

 そして少し記憶の片隅に残っている……かと思えばものすごく懐かしく感じるそんな風景。



「は?ここって……まさか」



 オレが立っていたその場所は……



 オンラインNOW!の始まりの場所。


——【1階層:城塞都市カルディア】の中央大広場だった。

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