アイス

 仕事終わりに社員同士で呑み会があった。店は賑わっているようでとてもガヤガヤ騒がしい。先輩の愚痴を聞きつつ頷く俺、同僚。

 会社に対する不満。お客に対しての文句。愚痴は止まらない。先輩の抱えたストレスが、濁流のように俺たちの中に流れ込んできた。上手い返しもできず、モヤモヤしたものが胸の中に残った。そして、ビールを飲む。一気に飲む。この扱い方が分からない感情ごと飲み込むように。顔が赤くなる。少し、ぼぉっとしてきた。


 呑み会も終わり、店を出てふらふらしながら歩く。ここから家まで遠くないので徒歩で帰れる。ザワザワと騒がしい繁華街を背にしながら足を進める。途中、コンビニがあったので寄った。目当ては、カップのバニラアイスだ。あったので買って帰る。

 

 家につくと荷物を置き、上着を脱いで、買ってきたアレを取り出す。蓋を開けると、

――今が食べどきですよ。


と言いそうなくらいに、ちょうどよく溶けたアイスが顔を見せた。スプーンを取り出しアイスをすくって口の中へ放り込む。口中に甘さと冷たさが広がる。酔って火照った体には、このひんやりとした感じがとても心地よい。もう一口、もう一口。


 今この瞬間が、俗に言う至福のひとときってやつだろう。



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