第34話 二学期始業式

海に行ったあの日から三週間程たち、二学期の始業式の日がやってきた。

朝登校した後、全校生徒が体育館に集合し、後の学校も共通な長い校長先生の話を聞く。

その後、各教室に戻り、今日は授業がなくもう帰宅になるため、帰りのホームルームを行う。


「よし、伝えておくべき事は以上かな?じゃあ文化祭の出し物を決めようか」


担任である山崎先生が連絡事項を伝え終えた後そう言った。

もう開催まで二ヶ月を切った、龍皇学園の文化祭、龍皇祭の準備をそろそろ始めなければいけなく、クラスの出し物を決める必要があった。


「じゃあ誰か案がある奴はいるか?」


山崎先生が進行係をするようで案を求めてきた。

すると斜め前に座っている千秋さんが手を挙げながら立ち上がり「はーい!」と言って立ち上がった。


「具体的に何出すかは決まって無いんですけど、高校になって解禁された飲食系がいいです!」


そう龍皇学園は中高一貫校であり、文化祭も中高合同開催となる。そして中学の間は食べ物を取り扱うことが禁止されており、高校から教室でお店や、校庭で屋台といった選択肢が増えるのであった。


「そうだな、南川の言う通り高校になったんだしお店や屋台を出すのも良いと思うぞ」

「うん、確かに」

「私もお店やりたかったんだー」


山崎先生はそう言いながら白板にメモを書いていると、他のクラスメイトも千秋さんの案に同意した。


「飲食系以外で何か案がある奴いるか」


クラスの大半が飲食系に同意しているが、いるかもしれない少数意見を潰してはいけないと山崎先生がみんなに問う。

そしたら先生の狙い通り、一人手をあげる。


「なんだ?言ってみろ」

「はい、確かに飲食系は楽しそうだけど、高校はみんな飲食系にしてきそうだなと思って違いを出すためにお化け屋敷とかどうかなと思いまして」


クラスメイトのその言葉に俺を含め何人か頷く。

先生もその言葉に相槌を打つと……


「確かに、ただの飲食系だったら他との区別化が出来ずにあまりお客さんに来てもらえずグランプリが取れないだろう」


そう龍皇祭では毎回来客数を来そうグランプリが行われるのだ。

各クラス一位、もちろん俺たちも一位を目指す。そのためには他のクラスと同じではなくお客さんに来てもらえるようなお店にしなければならない。


「でも……お化け屋敷も結構多そうじゃない?」

「た、確かに……」


俺のその声にお化け屋敷を提案したクラスメートが唸る。

クラスごとの出し物が今回が初めてである俺でも文化祭といえばお化け屋敷となるほど一般的である。

実際、飲食系が禁止である中学では文化祭の定番であるお化け屋敷が何クラスかあるとのこと。


「では……二つを融合させるのはどうでしょう?」


みんながどうするべきか頭を捻って考えていると隣の席の北条さんが控えめに手を上げ発言する。


「ん?それはどういうことだ?北条」


グランプリで是非自分のクラスが勝って欲しいと思い、悩んでいた山崎先生が北条さんが発言した途端、まさに救いの手が差し伸べられたように目を輝かせて耳を傾けてが、いまいち北条さんの言っていることが理解できず、聞き返す。


すると北条さんは立ち上がってみんなに説明するように言う。


「飲食店とお化け屋敷、二つとも素晴らしい案ですが一般的過ぎます。ならば二つともやって仕舞えば良いのです。飲食中に驚かすのは流石に危ないので……お化けの衣装を着たコスプレカフェにすれば良いのでは無いでしょうか?今年の竜王祭はちょうど10月31日でハロウィンでもあることですし、ハロウィン喫茶と言う形が良いと思います」

「良いねそれ!メイドカフェならありそうだけどお化けのコスプレカフェは確かになさそう!」


北条さんの意見を聞いた瞬間みんな「それだ!」と思い、目を輝かせる。

そんなみんなの気持ちを千秋さんが代弁する。


「ふむ、確かにお化けのコスプレカフェは今まで聞いたことがない……良いんじゃないか?」

「面白そー!私、魔女やりたい」

「俺ドラキュラやりてー」

「いや、お前は河童だろw」

「なんだとw」


先生も北条さんの意見を称賛するとみんなに賛否を聞く。

すると全員一致で賛成し、各々したい仮装などを言い合う。

少し騒がしくなった中、先生がまとめる。


「よし、じゃあ私たちのクラスはハロウィン喫茶と言うことで!」

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