第10話 いとをかしきもの

いとをかしきもの

それは

花であり、華であり、葉菜であり、hana。

菜の花の黄

散り際の桜の花びら

瑠璃唐草は空の色

藤の花は滝のよう

赤紫のつつじ

紺色のあやめ

一輪挿しには

深紅の薔薇

季節は新緑から深緑へと移り

初夏

雨に濡れる薄紫の紫陽花は

ひと雨ごとに色を変え

凛と立つ紫の立葵に話しかけていたら

濃紺の朝顔がおはようと言い

蝉たちが鳴き始める

向日葵がおひさまを浴びて微笑んでいるうち

いつしか百日紅を見かけるように

晩夏

蝉の声はひぐらしに変わり

桔梗の藍を愛でていると

鈴虫が鳴き始める。

可憐な萩の花

十五夜お月さま

薄い紅色の秋桜

朱色に染まるもみじ

銀杏が黄金に色づき

やがて

木立は枯れて葉を落とし

冬将軍が闊歩する

雪が降り

すべてを真白にしておいて

早春

香るがはやいか梅の花

吐く息がまだ白いうち

そおっと咲く。

そのかぐわしさは

及ぶものが非ず

梅が終われば

桜前線を追いかけたくなる

春の訪れ


hanaは

万物に姿を変えた神のよう

八百万の神々の国

しかしその根本者は

ただ一つ

自ら在って在るもの

わたしは

その永遠性と神秘を

未だに

見極めることができない

ただ

感じるだけだ


季節の変化を五感で味わう

この国に生まれて良かった

hanaの美しさと神秘に触れると

自分が今誰で、何処にいて、何者なのかを忘れ

恍惚となる

hanaとの対話は

いつしか

神との対話になり


季節ごとに咲くhanaは

無言だが

無限の生命を感じる

いとをかしきもの


わたしの

hana


(閑話休題)







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