第28話 エピローグ


『なずな、一つ聞いてもいい?』


 珍しく、すずしろがわたしの目を見ている。大好きな三好堂のアイス最中に手もつけないでいる。


「なあに?」

『なずなは、ボクのお世話係になったことを後悔していない?』

「そんなことないよ。毎日楽しいよ」

『これから、怖いことも嫌なこともあるかもしれないよ?』

「それとお世話係は関係ないと思うよ。お世話係をしていなくても、怖いことも嫌なこともたくさんあったもの」

『でも、りんりんの釜を持って行った犯人や文車妖妃を悪霊にした人物と対峙しなきゃいけないよ。他にももっといろんなことがあるよ。危険なことだってあるかもしれない』

「そうね。じゃあ、わたし、もっと強くならなきゃかな?」


 リサちゃんにはかなわないなぁと思うけど、わたしは力こぶを作って見せた。

 強くなるってどういうことだろう?

 リサちゃんみたいに、剣道ができること?

 おばあちゃんみたいに、占いができること?

 考えても答えはでない。でも、わたしにしかできない何かが見つかると思う。

 だから大丈夫。きっとうまくいく。


 わたしはすずしろに向かって笑う。すずしろはまだ耳もしっぽも垂らしている。


『ボクたち、物の怪怖くない?』

「さすがに目が100個あったら、怖くて泣いちゃうかもしれないけど、……、あんまり怖くないかな。すずしろはモフモフしていてかわいいよ。ずっと触っていたいくらい!」

『なら、よかった。なずな、これからもよろしくね!』



 そう言い終わると、すずしろは耳としっぽをぴんと立てて、手をつけていなかったアイス最中をおいしそうに食べ始めた。――、そして、わたしの分まで食べたことは当然の結果と言えば結果だよね? 


                              おしまい

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なずなと空飛ぶ猫 一帆 @kazuho21

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