第12話、ある冒険者の死

俺は礼にオネエを食事に誘った。


「あら、うれしいけど今日はあの子たちも酒場で待ってるから、また今度ね」


オネエはそういって酒場に向かった。

なんというか清々しい。



俺にとって、この2本の影響は大きかった。

湾曲しているほうは、ショーテルとククリナイフの中間のような作りで、俺の戦い方にマッチしていた。

例えば、小さい獲物なら内側の刃で首を刈り、大きい獲物に対しては切っ先で搔き切る。

長めの短剣は、単純な威力の増加だけでなく、リーチが20cmほど長くなった感じだ。


Bからもらった短刀を加えて、3種類の短剣が俺の武器となった。


このおかげで、一度の遠征でオーク3頭も容易くなり、俺はいつしかBクラスに昇格した。

エースのパーティーも同じ時期にBクラスに昇格したようだ。


「おっさん、これからギガンテスの討伐なんだが一緒にどうだい」


「悪い、もう受注しちまった」


「そうか、じゃ、またな」


俺が討伐から戻るとノッポ・チビ・オネエの三人がカウンターで手続きをしていた。

だが様子がおかしい。

エースもいない。


「あっ、おじさん」


「どうした、エースは?」


「オネエは力なく首を横に振った」


「そうか」


俺は、自分の完了報告を済ませてからオネエに声をかけた。


「で、お前らはどうするんだ」


「俺とチビは引退して、里に帰ることにした」


「そうか、元気でな。

オネエは?」


「まだ決めてない」


「そうか、気持ちの整理がつくまで、俺と一緒にいくか」


オネエは力なく首肯した。


「何かしてた方が、気が紛れるもんね」


こうして、俺はオネエとパーティーを組むことになった。


冒険者になってから大したケガはしてないし、連れていくだけのつもりだったのだが……

戦闘に入った途端、オネエの魔法が自分にかかったのを感じる。

力・スピード・体力がグンと上がるのだ。

バフというのだろうか、ともかく体が軽く力が漲ってくる。


「オネエの魔法すげえよ」


「そう、よかった」


オネエは現代のイッ〇ーさんのような感じだ。

髪は金髪ショートで、もう少し痩せていればいい女といえる。




「おじさんは色々と聞いてこないのね」


宿で食事中にオネエはそう切り出してきた。


「ん、ああ、オネエはオネエだろ、それでいいんじゃないか」


「僧侶の学校って、男の子ばっかりでしょ」


「そうなんだってな」


「最初は冗談で女言葉使ってたら、こっちの方が楽になっちゃってさ」


「俺の国には、女装が趣味ってやつも多いぞ」


「私も女装してみたいな」


「いいんじゃないか。

いい女になると思うぞ」


「いいの?エースはそれだけはやめろって」


「言葉だけってのも中途半端だろ」


「お化粧してもいい?」


「ああ、やってみな」


この遠征から戻った翌日、オネエは飛び切りの美女に変身した。

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