第11話、オネエの値引き交渉

町に戻って依頼達成の処理を終え、俺はエースたちと別れる。


「おっさん、また機会があったら声をかけるからな」


「おう、いつでも呼んでくれって、オネエは……」


「武器屋にいくんでしょ。

一緒について行ってあ・げ・る」


「子供じゃねえから大丈夫だよ」


「ぼったくりの店もあるからな。

それにオネエの見る目は確かだぜ。

一緒に行ってきなって」


「そうそう、行きましょ」


俺は腕をつかまれ、武器屋へと引きずられていった。

意外と力は強い……



「こんにちわ」


「あん、オネエじゃないの。

今日は何?」


「この人がね、武器を見たいんだって」


「お客さん、得物は?」


「片手剣かな」


「おい」俺は小声でオネエに話しかける。


「いいのよ。最初から目的を言っちゃうと値引きしてくれないから」


ああ、そういうことか。


「片手剣だとこのあたりですね」


「軽いのはどれ?」


「これなんかどうかしら」


「うっ、それでも重いな」


「これより軽いのだと……

少し短くなりますけど、こちらは如何でしょうか」


「あらやだ、これじゃ短すぎるわよ」


「でもね、軽さを求めるならやっぱり短くなっちゃうのよね」


「これでいくらなの」


「金貨10枚」


「えーっ、短いのに片手剣と変わらないじゃない」


「手間はそんなに変わらないのよ」


「うそよぉ、これなら片手剣ほど手間はかからないでしょ」


「ご予算は?」


「金貨5枚ね」


「金貨5枚だと、短剣じゃないと……」


「短剣は持っているもの」


「少し長めの短剣もありますよ」


「どんなの?」


「短剣はこちらです」


「短剣なら金貨5枚なのね」


「物によりますけど、金貨5枚から7枚ですね」


俺は変わった短剣を見つけた。

湾曲しており、内側に刃がついている。


「これ、変わってるね」


「ええ、内側に刃がついていて……」


「作ってみたけど売れないってことね」


「うっ……」


「こんな変わったの、誰も買わないわよ」


「そ、そんなこと……」


「こんなのせいぜい金貨1枚ね」


「せめて金貨3枚……」


「無理無理、じゃあこれは」


さっきの短い片手剣と同じくらいの重さだ。


「金貨7枚です」


「5枚じゃないのぉ!」


「さっきの片手剣と同じくらいなんですよ」


「こういう中途半端な長さのものって売れないでしょ」


「そんなことはないですよ。

腕力のない女性や探索系の方が……」


「探索系はもっと短いのを使うわ」


「……」


「ふーん、そうなの……。

そうねぇ、気に入ったのはあった?」


「いや、どれも一長一短だな」


「ねえ、売れないこの2本だったら幾らにするの?」


「き、金貨8枚……」


「金貨7枚だったら考えてもいいわよねぇ」


「そうだな、金貨7枚なら」


「金貨7枚でいいです」


こうして俺は気に入った2本を購入した。

オネエの交渉術はなかなかのものだった。


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