第7話 少年の決意

あれから街に戻ったルイスたちは、今後について話し合うため、彼女のお気に入りのカフェに行くことになった。

両親を失って以降贅沢を出来ていなかったルイスにとって、こういうのは久しぶりだ。

どうやら先の一件の恩返しも含め、彼女が奢ってくれるらしい。

断るのは逆に失礼だと感じたルイスは、おとなしく甘えることにした。

それに、元々懐に余裕がなかったルイスにとっては有り難いことだった。




「それで、今後についてなのだけれど」


おしゃれな内装となっている店内の一角、窓際の席で、カフェラテが入ったコップをテーブルに置いた彼女が話を切り出した。


「まず、一つあなたに言わなければいけないことがあるわ」


彼女の真剣な声音に緊張する少年。

きっと、「あれー、俺なんか変なことしちゃったかなー」とか思っているのだろう。

しかし、次に彼女が口にした内容は、普通に驚くべきことだった。

いや驚くべきことに普通も何もないんだが。


「私、あと少し冒険者で稼いだら、王都にある学院に通いたいと思うの」


しばしの間、沈黙が場を支配した。


「悪いわね、私からパーティを誘ったというのに……」


どうやら彼女も申し訳ないと感じているようだ。

ルイスにとって、彼女は自分の力を初めて認めてくれた存在。

当然それなりに好意を抱いているし、感謝だってしている。

だから……恩人も同然の彼女を引き止めるわけにもいかないだろう。


「……ま、まぁ、俺は大丈夫だよ……気にしな──」


その時、彼の頭の中に一つの選択肢が現れた。

そう。彼女と一緒に学院に通うことだ。


「ん? どうしたのかしら?」


不自然に言葉を止めたルイスの様子に、不思議そうに首を傾げた。

今まであんまり考えていなかったが、彼女はかなりの美人だ。

首を傾げているだけでも絵になるなぁ──ってそうじゃない。


「俺も、学院に通っていいか?」


途端、彼女の顔が疑問で埋め尽くされた。

あくまでルイスは生きるために冒険者をやっていただけなのだ。

強くなりたいとは思うが、それが一番の目的というわけではない。


「……え、えっと。学院に通うのはすごくお金がかかるの。それにわざわざ私の都合に合わせなくても──」

「──お前と一緒に行きたい気持ちもあるが、勿論それだけじゃない。俺も色々なものを見てみたい。体験したいんだ」


彼女の言葉を遮り、これは強い意志だと示すように言い切った。


「お金はどうするのかしら……?」

「お前が学院に通うまでの間に、絶対に稼ぐ」

「そんなの不可能よ。私だって三年もかかったのよ?」


ルイスの強気な発言に、己の経験から言えることを伝えたカーネル。

だが、もう少年の中でそれは固い意志となっていた。


「大丈夫。やってみせる。だから……あと少しの間、よろしく頼むよ」


ルイスは手を差し出した。

本来なら信憑性のかけらもないその言葉だが、彼が言うとどうも信じてしまう。

彼女は観念したという様子でため息一つついてから、差し出された手を握ったのだった。

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