バンパイア白書

シイカ

吸血彼女のこれさえなければ……。

  大学で出会った『地井ちい 吹子すいこ』。

 いつも明るく大学で密かな人気モノな彼女。

 ひょんなことから私は彼女と付き合うことになった。

 もちろん、私は彼女、地井ちい吹子すいこが好きだ。

 しかし、彼女には秘密があった。


 私の彼女は吸血鬼である。

 ドラキュラとかバンパイアとかの吸血鬼だ。

 吸血鬼だから血を好むわけで、どうも、私こと橘ツタエの血は他とは比較にならないくらい美味しいらしく、まあ、それをきっかけに付き合うことになったわけで。

 私は彼女が吸血鬼と知る前から好きだったわけで結果として両想い(?)だったから付き合ったのだ。

 しかし、吸血鬼だから血を吸うのは覚悟していたわけで、むしろ、憧れていたくらいだ。

 吹子と付き合い、そろそろ『契り』を結んでも良い頃合いのとき、私は自らの首筋を差し出した。


 以下回想。

 

『ねぇ、吸って……良いんだよ』

 私は自分が考える最大の色っぽい声で言った。

『うーん。首からってちょっと苦手なんだよね』

 吹子は手を「違う違う」という風に横に振る。

『じゃあ、手首?』

 私は両手首を吹子の目の前に突き出した。

『手首も苦手』

 吹子は両手の平を上に向けて「やれやれ」といったポーズを取った。

『じゃあ乳首』

 私はヤケになり、シャツをブラジャー事めくろうとした。

『もっと違う』

 吹子にシャツを戻された。

『じゃあどこよ! どこなら吸ってくれるの!』

 私はムッとした。

『ねえ、ツタエって今日さ……』


 回想から現在へ。


 今日は吹子が吸血する日であり、私の……。

「今日から生理になった」

 私は下腹部を押さえながらトイレから出てきた。

「大丈夫?」

 と吹子は言葉では心配しているが、顔は笑みが今にも零れんばかりの表情をこらえていた。

「はい……。これ」

 私は生理の血をたっぷりと吸ったタンポンを彼女に渡すと彼女はとうとう満面の笑みになった。

「わー! ありがとう!」

 真っ赤に染まったタンポンを彼女はアイスキャンディーを舐めるかのように吸った。

 そう、この彼女は私の経血をたっぷり吸ったタンポンを吸うのが大好きなのである。


人のタンポンを吸う吸血鬼と付き合い初めてから二か月経つが私の彼女への気持ちは増すばかりだ。

 例え、タンポンを吸おうとも、むしろ、毎日生理になってやりたいくらい大好きだ。

 毎日生理はさすがに危ないが。

 私は彼女のために苦手なトマトを克服し、毎日鉄分補給のためホウレンソウを食べた。

 友達から「お前はポパイか」と言われた。

 毎日鉄分を取っているとなかなかに健康になっていった。

 リアルポパイになりそうだ。

 さて、彼女と私の詳しいプロフィールについて説明しよう。


 地井吹子ちいすいこ

 吸血鬼。

 大学一年生。十九歳(?)

 背は平均身長。

 髪の色は茶色というよりもはやオレンジに近い明るい色。

 細身で無駄のない身体の線は女子から憧れられている。 

 服装は白をメインにしている。 

 血以外にも普通の食べ物も食べるとのこと。

 肉も大好き。


 たちばなツタエ(私)


 人間。

 大学一年生。十九歳。

 背はちょっと高め。

 髪の色は黒。セミロング。

 服は黒をメインにしている。

 最近はトマトジュースや鉄分豊富そうな食べ物をよく食べる。

 肉も大好き。


以上プロフィール。


「ねえ、吹子」

「何、ツタエ」

「そろそろホラーとかスプラッター映画見るのやめない?」

「この作品は血がたくさん出て美味しそうなのに?」

「いや、私にとってはグロでしかないんだけど……」 

 二人で配信サイトで映画を見まくろうという休日。

 なるべく、彼女の要望に答えたく彼女好みの映画をチョイスしたら、人の首は飛ぶは腕は千切れるは目は飛び出すわのスプラッター映画ばかり。

 彼女にとっては血が飛びまくる映画はごちそうがたくさん出てくるのと変わらないらしく、私は苦手なのを我慢し彼女と一緒に見続けている。

 もう五本目で朝から見たのにもう夕方近くなっていた。

「あー面白かった!」

「う、うう……」

「ツタエ大丈夫?」

「ちょっと貧血気味かも……」

「え、じゃあ血、飲む?」

「いや、私、吸血鬼じゃないし……」

「アタシの血は貧血なんて一発で治るから」

 吹子は右手の親指を嚙み切って、親指を私の目の前に突き出してきた。

「う、吹子のだから……平気かな……」

 私は吹子の親指を口に含んだ。

 舌に血が触れた瞬間、貧血が治まったどころか身体全体に力がみなぎってきた。

私は思わず吹子の腕を掴んで求めるように吹子の指を吸った。

「ツタエ、吸い過ぎだよ……」

「ごめん。なんか身体が元気になっちゃって」

「アタシの血、すごいでしょ」

「うん、すごい。また貧血になったらっていうか生理のときとか良いかな?」

「良いよ」

 吸血鬼の血を吸う人間って……と思ったけど、これが私たちの日常だ。

 

 大学ではお互い何のサークルに入っているかというと。

『オカルト研究会』だ。

「世の中には理屈じゃ説明できない不思議なこともある」を信念に 常にUFOやUMAや映画に出てくる生物に話したり伝承などを話合っている。

 まさか、自分たちのサークルに吸血鬼がいるとも知らずにサークルメンバーはそう語り合っている。


                        第0話 完

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