サブカルギルド 27

 数日経って、いつも通り執筆している最中にクートから連絡が来た。

『どうせ単位は取り切ってるだろ?興味あったら授業とか受けてみないか?』

 なるほど授業か、断ろう。と思ったのだが、覗き込んでいた光里が

「行ってみようよ!」

 と耳元で可愛い声を上げた。俺の耳は潰れた(二重の意味で)

「あ、ごめん耳元で叫んじゃって。」

 耳を抑えていたのでさすがにわかったらしい。

「お詫びにぃ、こっちでささやこっか?」

 反対の耳を萌え殺しにする気か?あと背筋がぞわぞわする。

「ありがとう。お詫びなら後で色々お願いするからそれで。」

 思いつかなかったので後回しにする。このままささやかれたら理性が危ない。

 とりあえず光里が興味を示しているので、ついていくために連絡を入れよう。

『二人分お願いできる?』

『もちろん。と言うか元からそう話してる。』

『ありがと、ちなみにどんな授業があるんだ?』

『それは履修まとめでも見てくれよ・・・。まぁいいや、何が興味あった?』

 光里はそのまま画面を覗いているので目で聞いてみた

「んとね、何とか構築・・・何とか構築・・・なんだっけなぁ。」

「起承転結構築だろ。」

 扉の向こうから聞こえたのはクートの声だった。

「であれば二時間分になるけれど構わないですかな?」

 知らない声が・・・。いや、どこかで聞いたことのある・・・どこだ?いつ聞いた?

 そう悩んでいると、閉めていた扉が素直に従う音がした。

「久しぶりです、土浦さん。初めましてです。松山さん。」

 そうして入ってきたのは、ここの学長であり、実質的にサブカルギルドの長である人だった。


「本当にお久しぶりです。お二人のご活躍。聞き及んでいますよ。

 ・・・と言うかまぁ、かなり噂にはなっているんですけれどね。」

 そりゃまぁ、推定ランク二段上のクエストを大繁盛って結果でこなしちゃったらそうなるわな。

「まぁそんなわけで、きっと暇時間に小説のネタに困っているのでは?と思いまして、この提案をさせていただきました。」

 なるほど、めちゃくちゃありがたいな。

「・・・お二人ならいずれ気付いてしまうかもなので本当の理由話しちゃいますね。

 単位取得に努力をしてないと見られたら、大学の体制的に問題が生じてしまうのです。なのでできれば・・・。と言うお話なのです。」

 噂になってるって、上層部に悪い方向でってことだったのか・・・。

「私、授業は気になってたので行ってみたかったんです。ただ・・・。」

 陰る光里の様子で察したのか。

「あ、ご安心ください。授業料はお二人とも大学側が出させていただきます。大学のわがままで授業を受けていただく形になりますので。このくらいは当然ですよ。」

「それならぜひ!」

 と元気に光里が反応した。

「土浦さんは、どの授業にするか決まりましたか?」

 話しながら考えていたのだけれど、せっかく二人なら別々の授業を受けて情報を共有した方がいいのでは。と。

「あれ?ツッチーなら考えずに光里ちゃんと同じ教科を選ぶと思ったけど・・・。」

「そりゃ俺も思ったけど、せっかくなら、違う授業も受けて、情報共有出来たらいいなって・・・。」

 好きな人と一緒に授業受けて、同じ課題に苦悩するとかいいシチュエーションだけど。

「なるほど、でしたら二つ選んでもらってもかまいませんよ。正直、一つも二つも大差ないので。」

 大学から出していればそういうものなのだろう。

「やった、広くんだから別の選んじゃうかもって思ってたから・・・。」

 うちの恋人が小声で可愛いこと言ってる。

「そういうことなら、写真学をお願いします。実践型と聞いていたので、前から興味があったんです。」

「写真学ですか。わかりました。松山さんもそれで構いませんか?」

「もちろんです。」

 即答、というよりも食い気味だったけれど。

「では、私はこれで・・・。あ、忘れてました。土浦さん。」

「あ、大丈夫っすよ学長。俺の貸しますから。」

「ん、では任せよう。」

 そう言いながら学長は部屋を後にした。

「それでだツッチー、写真学やるにはカメラが必須なんだが・・・。俺のを貸そう。あと光里ちゃんにはシロのを貸そう。一緒に買ったのにすぐ飽きたから。何ならあげてもバレなさそうだけど。」

 何ともシロらしい・・・。とは思いつつも、借りれるのはありがたい。

「あ、でも私たち・・・。」

 買うお金はある。と言いたいのだろう。

「せっかくだから甘えておこうよ。授業終っても使うようなら買えばいいし。」


 そういうわけでクート(とシロ)からカメラを借りて、授業の日まで待つことになった。


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