サブカルギルド 11話

 陽光で目を覚ました。寝起きに感じる陽光はどうしてこう、冬の空気みたいな鋭さがあるのだろうか。

「あ、おはよ、広くん。」

「うん、おはよ。」

「寝起きのツッチーは久々に見たなぁ。」

「そうだね、小学生以来だもんね。」

 なぜかシロとクートがいる。これは夢か。

「・・・おやすみ。」

「逃げるな逃げるな。」

 そう言ってクートが頬を軽くつねってくる。痛い。

「はんはよ(なんだよ)、はんへおはえはらいふんはほ(なんでお前らがいるんだよ)。」

「いやまぁ、二人の朝チュンを邪魔したのは悪いと思ってるんだ。」

「んなことしてねぇよ。」

 どうやら夢じゃないらしい。

「それじゃ行ってくるね~。」

「行ってきます。」

 二人の女子の声が聞こえる。シロと光里だ。

「行ってらっしゃーい。」

「行ってらっしゃい。」

 条件反射で返す。

「まぁそういうことだ。」

「なるほど、そういうことか。」

 ある程度は理解できた。シロと光里が一緒にお出かけするから、その間だけクートがついてきたわけだ。

「それじゃ、お前はこれからどうするんだ?」

「お前を連れてシロの誕プレを買いに行く。」

「それ出先でばったりとかありそうじゃない?」

「俺が外出するときは基本的にシロと一緒だからな、あんまりサプライズが出来なくて悲しんでるんだよ。」

「お前がか。」

「そう、サプライズしたい。」

「わかったよ。」

 という事で、男二人でプレゼント探しというわけだ。

「ツッチーはいいのか?」

「あ、光里の誕生日知らない・・・。」

「聞けよ、今、ここで、すぐに。」

 圧がすごい。まぁ、どちらにせよ聞く必要はあるから、聞いてみようとスマホを開くと、光里から誕生日を教えてほしいと連絡が来ている。

『俺は8月24日だよ。光里は?』

 連絡を入れてすぐに返信が来た。

『私は7月24日。一か月違いだね。』

 もう一言が可愛い。

「割とみんな近いんだな。」

「クート、人の連絡を覗くな。」

 変な連絡してるわけじゃないからいいけど。

「誕プレ買うことが決まったんだし、さっさと支度していこうぜ。」

「はいはい。」

 シロのせいでツッコみもしくはリードポジに見えるが、こいつもこいつで自由奔放なのだ。簡単に身支度してから必要最低限の荷物で出発する。

 寮からバスで最寄り駅に行って、いつもの駅から北口に出ていつものデパート。と思っていたのだが少し違うらしい。最寄駅から反対側へ電車で向かい、いくつか先の駅で降りる。

「ツッチーの言う通り、互いに遭遇する可能性もあったからな、先に行先を聞いておいたんだ。」

 そりゃそうか。

「こっち側ってデパートあったっけ?」

「いや、おもちゃ屋くらいしかないぞ?」

 おもちゃ屋で何買うんだよ・・・。身代わりかぁ。

「その察した顔やめろ、せっかくだから、お前も人形にすれば?嫌がることは無いと思うぞ?」

「うーん、まぁ、そっちがいいのかな・・・。」

 正直に言うと、少し高めのティーポットとカップのセットでも買おうかと思っていたのだが、人形を抱きしめる光里も見てみたいと思う。むしろそれで喜んでくれるならうれしい。

「うん、人形買うか、でも、どれにしよっかな。」

「俺は・・・こいつだな。」

 そう言って手に取ったのは、アンコウの人形。なんで?てか怖い。

「なにそれ怖い、なんでそんなの売ってるんだよ。」

「えぇ?シロなら可愛いって言うと思うけど・・・。」

「若干引きながら可愛いって頑張って言う姿が思い浮かぶぞ。」

 さすがの俺でもそれは無いと思う。

「じゃぁ、ツッチーはどれにするってんだよ。」

「そういわれてもな・・・。」

 実際、誰かにあげるために人形を選んだことなんてないし、そもそもどういう人形がいいかなんてわかるわけが・・・。

 内心言い訳をしながら人形たちを見ていくと、奥の方にクマのぬいぐるみがあった。顔はよく見るかわいらしいやつだが、体格がリアルなせいで余計もふもふに見える。

 あれ、光里が抱きしめてたらめっちゃ可愛くない?

「あれがいい。あれがいいと思う。あれにしよう。」

 決まった。

「まったく、大正解だけど、俺にはなんのヒントにもならんなぁ・・・。」

 二人ほど付き合ってたらクマのぬいぐるみなんてすでにあげているだろう。

 そんな思考をよそにそそくさと階に行く、大体八千円位したが、まぁ、これぐらいなら問題ないだろう。

 結局クートは何にしたのか、見てみると。

 巨大なクマノミの人形を買っていた。

 巨大なクマノミである。

 目が点になりながら呆けていると、

「なんだよ。これなら可愛いし文句ないだろ?」

 いや、小さいから可愛いのであって巨大になったら不気味なんだけど・・・。

「そうだな、いいんじゃないかな⁉」

 すまん親友たちよ、面白そうだから両方とも裏切るわ。

 

 無事買い物が終わったので、巨大な袋に入れて帰宅する。

「なぁツッチー、鉄ゲーしよぉぜー。」

 二人して自身の部屋にプレゼントを隠し終えてから、俺の部屋でいつぞやに光里とやったすごろくゲームをすることにした。

 昼食も食べてないし、動く気にもなれないので、お昼代わりにチップスをつまみながらだ。帰宅時間もちょうど午後の2時くらいで、マナーが悪いと言われたらそれまでだが、久々に遊びたいのだ。

 気兼ねなく笑い合える友人との時間は、かなり心が軽くなる。





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