首なしからだ

首なしからだ

 朝、目が覚めて、体を起こそうとしたとたん首が落ちた。枯れかけの椿の花のようにこう、ポロッと。幸か不幸か、取れた頭と体の知覚はリモートで繋がってるようなので体はそのまま動くようだ。ただ、得られる視覚は枕に転がった頭部からのものなので、体の位置とのギャップに酔いそうになる。

 目を瞑って、軽く肩を回してみた。思わず感嘆する。回した肩の軽いこと軽いこと。成人の脳だけで1kgはあるらしいので、頭蓋骨やら肉やらのついた頭部は相当な重さのはず。それが取れたのだから軽くなるのも当然だ。ただこれでは生活に支障があるので一先ず首を回収する。真正面から首無しの体が私(頭部)を拾おうとする様は不気味だった。

 頭を持ち上げる。視界が急上昇する。いけない、下手に視界を頼りにしようとするとこれはかなり酔う。これなら目を瞑っていた方が良いと判断して、私は手探りで自分の頭部を胴体に乗せた。

 鼻の位置を確認。こっちが前。よし、この位置で合っているはずだ。私は目を開ける。普段通りの視界がそこにあった。

「うひゃあっ」

 これでよし、と朝食を食べにキッチンへ向かおうとしたとたん、首を回したつもりもないのに視界が回転する。天井が見える。そして、頭部の浮遊感。

 ぼすん、と鈍い音がして、私の頭部が落下した。まだ布団の上にいたことが不幸中の幸いだった。元あった場所に乗せればくっつくかと思いきや、そう簡単な話ではないらしい。

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首なしからだ @nemuru

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