第27話 それは運命の嫌いな彼女だったのです

「うん、今そっちに行ったよ。すぐにデパートに着くと思う。すごい偶然………………いや“奇跡”だったよ。ここで会った事も。由良さんがいる場所を言えた事も」






 「そう…………ありがとう千歳」






 「いいよ、気にしないで……………………」






 「…………どうかしたの?」






 「あ…………いや、いいのかなって思って…………私なんかがこんな大事な事を言って…………」






 「いいのよ。むしろ感謝してるわ。千歳が言ってくれなきゃ…………私はずっと言えなかったと思うから…………」






 「………………どうして?」






 「………………私にとってさ…………アイツは大きすぎるの」






 「…………………………」






 「…………私じゃ絶対にできない事をした…………恩人だから…………」






 「…………………………」






 「だから私の言う事がアイツを傷つけるかもって思うと………………私は怖くなって何も言えなくなる…………それがアイツとお姉ちゃんの二人に及ぶなら尚更………………アイツが“あの日”を気にして自分を責めてるのは知ってるから……………………私はアイツにお姉ちゃんの事を言う勇気が最後までなかった。お姉ちゃんのワガママを知ればアイツは行動しても……………………その後は自分を永遠に責め続けるんじゃないかと思ったから…………」






 「………………………………」






 「それに私はこの半年間………………お姉ちゃんが思い出の場所で好きな人を待っている…………その弱さと寂しさも知っていたけど…………どうしようもなかった…………………………二人の状況を身近で理解してる私でしかできない事がきっと………………あったはずなのに………………」






 「…………………………」








 「私は怖がって二人に何もしない事を善としてしまった………………何も動こうとしなかった…………ただの臆病者…………………………」








 「紫ちゃん………………」






 「千歳が言ってくれてよかったわ…………本当に…………」






 「私はタイミングがよかったんだよ…………泣いた中西君の涙を…………理由を感じ取れたから…………」






 「帰ってきたらアイツは千歳に色々聞いてくるだろうけど、秘密にする必要はないわ。全部言ってやってね。今言った事も何もかも言ってあげて。アイツは私を嫌うだろうけど、それは仕方ない事だから」






 「………………うん、わかった。私の知っている事は全部言うよ」






 「ええ、お願い」






 「でも、それで中西君が紫ちゃんを嫌うなんてのはあり得ないから。絶対に」






 「…………そんなのあり得ないわよ」






 「ううん、そんな事無い。中西君だって紫ちゃんに負けないくらい由良さんの事を思ってるもの。だから紫ちゃんの事を責めるなんて絶対しない。二人が同じくらい由良さんを大事思ってるなら、そこには必ず理解が生まれるよ」






 「……………………」






 「大丈夫だよ紫ちゃん。そんなに怖がらなくても中西君は優しいよ。だって優しくないなら………………あの時、私に格闘ゲームを教えるなんてできないはずだから。心の底で思い出を否定できない人間に酷い人がいるわけないよ」






 「……………………」






 「だからさ…………中西君を怖がらないで。それに、中西君は紫ちゃんの友達なんだから…………もっとあっさりでいいんだよ」






 「…………ありがとう千歳」






 「うん…………」






 「そろそろ切るわね。アイツが来た」






 「もう中西君着いたんだ。早いなぁ」






 「お姉ちゃんも大概だけど…………アイツも大概だからね………………とりあえず………………覗き見するくらいの…………嫌がらせはしてやんなきゃ………………妹としてさ」






 「………………そうだね」






 「…………これからは…………私がさ………………アイツに教えてあげなきゃね…………」






 「………………そうだね」






 「ホント…………嫌になるわ…………なんで私が男に世話焼かなきゃ………………いけないのかしら」






 「………………そうだね」






 「ホント………………運命って嫌いだわ………………」

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