コラム 自己愛性パーソナリティ障害傾向とサイコパス傾向

 通常、パーソナリティ障害の診断が下されるのは、十八歳以上とされている。

 未成年においては、パーソナリティが未熟で固まっていないためである。

 しかし、その傾向は未成年時からみられることが多い。

 サイコパスは、パーソナリティ障害では反社会性に該当する。

 自己愛性PDについては、『自己愛性ブラック』の方で詳細な解説をしているので、そちらもどうぞ。


 いじめ加害者(リーダー格)においては、自己愛性PD傾向を持つ者が大多数ではないかと筆者はみている。

 彼らは分離・個体化が完遂しておらず、他者と未熟な一体感を抱いている。筆者はこれを『分離不全』と名付けた。また、その名の通り自己愛が大きい。そのため、彼らの内面はガラスのように脆弱で、不安感、恐怖感、そして孤独感が人一倍強い。

 彼らの尊大、傲慢な態度、強く優秀なイメージ、承認欲求や自己顕示欲は、そういった内面を守るための、鎧のような役割を果たしている。


 では、いじめにおいて、自己愛性PD傾向はどう関係しているのであろうか。

 まず彼らは、他者を敵味方に極端に二分化する傾向にある。

 理想化した相手に対しては強力に同一化し、仲間意識を抱く。それが出来ない『弱そう』な相手に対しては、必要以上に憎悪、敵愾心を抱くのである。

 これは内面の不安感を、過剰にかき立てられるためであると思われる。

 加害者は大人数で徒党を組み、敵を攻撃することで仲間意識を高揚させ、優越感と安心感を得る。共感性が欠如しているため、行為がエスカレートする。メンタルが弱いため、自身が悪い、間違っているということは絶対に認めることが出来ない。

 最初は仲良くしていた相手が、いじめのターゲットに転じるのも、このメカニズムによるものである。

 自分の思い通りになるはずの相手に裏切られたと感じると、自身の一部から突然敵となってしまうのである。


 また、教師などが自身の非を頑なに認めない場合も、自己愛性PDの可能性があるだろう。先にも触れたように、彼らは強い生徒に肩入れし、弱い生徒に敵意を抱く傾向があるため、いじめ対応が困難となる。


 ブラック企業においても、メカニズムは似たようなものだ。

 職場において彼らは、成果を誇示し、孤独を恐れるため、会社に長く居座ろうとする。

 散々ハラスメントや強要を行っておきながら、いざ辞めようとすると、境界性PD的しがみつきで執着してくるのも、いじめと同様である。


(今すぐ来ないと死んでやるから)


 サイコパスは、自己愛性PDに比べると母数自体がかなり少ないので、割合は低いと思われるが、その性質上、行為がエスカレートし、重大な結果を招くかもしれない。

 彼らは、自己愛性PDとは正反対で、扁桃核の機能不全により、恐怖心を一切感じない。

 そのため、他者に対する共感性が皆無で、人を殺しても何も感じない。金銭感覚も崩壊している。いじめにおいては、加虐行為、金銭の要求が際限なくエスカレートする。


 いずれにせよ、加害者の心理的傾向とメカニズムを把握することが、いじめの対処には必要不可欠である。

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