あなたの知らない彼女に、きっとまた会えます。

仮宿の主であった原作主人公と、奇妙な共同生活をすることになったヒロイン。
縺れた糸が少しずつそして優しく解きほぐされていくような、彼女の心の変化を丁寧な文章で書き記したお話です。

8話と9話の間にある「登場人物紹介および原作との主な相違点」で述べられている通り、自己を喪失したヒロインが、自己を取り戻したいと願いそして再生していくのか。残酷に襲い掛かる過去のトラウマ、そしてどこまでも優しい原作主人公の無償の愛を、著者の多彩な表現で綴っています。

原作をお読みになった読者であれば、各人にヒロイン像があるかと思います。共感できるところもあるし、新しい発見もあるでしょう。本作においてはそのような各人のフィルタの違いを楽しむのもいいと思います。

基本的に原作と全く同じプロットで進んでいくと思われるので、未読の方も楽しめる内容になっていると思います。しかし是非、原作の読後に本作を読んでいただきたい。きっとあなたの知らない沙優にまた会えると思います。

著者の原作に対する深い愛情を窺い知れ、期待せざるを得ない作品に仕上がっていると思います。完遂されることを切に望みます。

追記
このような文章を書く機会があまりありませんので、文章の無作法には目をつぶっていただけると助かります。