主人公は特別に視力の良い、空が好きな少女です。
視力が良いだけで空軍に入れ、航空機を操縦することになります。
まず、これが『異世界ファンタジー』でよかった! と思います。
戦争が長く、苦しい状況だと初めからわかるからです。辛い状況を強いられる戦況で、少女は実戦を行うための訓練をし、実戦へと飛び立ちます。
次に、これが『異世界ファンタジー』か! と思うくらい、描写と知識がすばらしいです。尚且つ、知識は読み手に与える情報として過不足なく、読みやすさと理解しやすさを補助してくれるように書かれています。
なので、私のように戦記や航空機にまったく知識がない者でも躓くことなく、スムーズに読んでいけます。
読み進めていくと、辛い描写やシーンもあります。けれど、それは起承転結がきちんとこの物語にあるからです。
しかも、『これが伏線だったとは……』と何度思ったか。それほどまでに自然な伏線が散らばっています。
終盤になると、どんなラストになるのかと心構えをしながら拝読しましたが、最終話は感動間違いなしです。
こんなにも……なラストとなるとは、思いもしませんでした。
戦争はダメ、絶対とも教えてくれる作品であり、異世界ファンタジーとしても大変楽しめる作品です。
ライトで楽しく読みやすい話ではないですが、それだけに、いや、それだけの理由でこの物語が埋もれてしまうのは大変もったいないです。
読み応えのある作品を求めている方、是非ともこの一作をご覧ください。
14歳の女の子が、戦争の時代に生まれ、あてがわれた環境の中で必死に生き、成長していく物語です。
そこにチートも、魔法も、ご都合主義もありません。
この作品は物語に必要なシーンに、必要な描写だけが書かれ、知識ネタや、大袈裟な表現はなく、表面的には淡々とした作風に見えるかもしれません。
が、読み進めると登場人物の全てに「幸せになって欲しい」という想いが込められている事に気が付きました。
少女が戦闘機に乗る、という突飛にも思えた設定にも、しっかりと「この世界、この時代の技術背景から作られた飛行機」にとって必要な条件として描かれ、とても好感を抱きました。
また、描かれる作中の随所に、深い意味を持つ名言が数多く存在しています。
これを名言ととるかは読み手次第です。この手の戦争を舞台にした物語が好きな方なら胸を打つシーンに出逢えるはずです。
多くの評価、レビュー、★の数が「名作の証拠」ではないと、本作を通じて強く感じると同時に、もっと多くの方に読んで頂きたいと心より願っています。