オタクが全員、ゲーセン通いの音ゲーマーなわけないだろ
ともかく、そうしてついて行くと辿り着いた場所は、なんとゲームセンターだった。それも、この辺りではそれなりに大きいビルに入っているゲーセンで、上の階に行けば、カラオケもボーリングも出来るし、なんなら小さいがシネコンもある。
割と好きなことをして楽しめる場所なのだが、プリン頭のお目当てはやはり、ゲームセンターらしい。
中に入るや否や、目を光らせて音ゲーの筐体へとまっしぐら。俺が一緒にいることも忘れている様子だ。
これならプリン頭がゲームに没頭している間に、黙って立ち去ることも出来そうである。
「アンタも来なさい」
と思ったが、そんなことはなかった。
指示に従って、プリン頭の側に寄ると、彼女は自分の立っている横の筐体を指さした。
やれ、ということらしい。
「俺、音ゲーとかほとんどやったことないんだけど」
「はあ? マジ?」
「マジだ。そもそもゲーセンには付き合い程度でしか来ない」
付き合いというのはもちろん木津だ。それでも、あいつと一緒に来る時も、レースゲーや格ゲー、クレーンゲームをするのが主で、音ゲーを一緒にやったことはない。
「オタクっぽいから音ゲーやってると思ったのに……」
「オタクが全員、ゲーセン通いの音ゲーマーなわけないだろ……」
昔はともかく、昨今だと、どちらかと言えば、明るい奴らの方が人口多そうじゃない?
てか何、俺そんな理由で連れて来られたの?
深刻そうな雰囲気だから、何かあるのかと思ったらこれかよ。無視すりゃよかったかな。
「ま、いいわ。とりあえず、付き合いなさい」
「へいへい」
「だから、はいは一回! あと、そのだらしない返事やめて」
「えぇ……」
何こいつ。無理矢理ゲーセンに連れて来ておいて、なんでこんなに偉そうなの?
まあ、やれと言うならやるけどさ。
不満はありながらも彼女の隣に立って、財布から百円玉を取り出して、投入口に入れると、チュートリアルが始まった。
まあ、一度だけ似たようなゲームをやった事があるから、流れで操作説明を済ませて、いよいよ本番となったところで、ひょっこりと隣のプリン頭が顔を出した。
「操作わかる?」
「わからん」
「じゃ、アタシやるから」
そう言って、画面を操作していく。
なんか色々とやっているが、さっぱりわからない。設定とか開いて、色々とやっているのは分かるが、興味が無いから覚える気はなかった。
「はい、出来た。まあ、プレイに関しては教えるよりもやってみた方がいいと思うから、わかんないことあったら後で聞いて」
「いや、まあ、うん」
どうでもいいので、聞く気はなかった。
さて、どんな感じなのかなと、割と気楽に眺めていると、とんでもない数の光る物体が現れる。慌てて、チュートリアルで学んだ通りの操作をするが、コンボはほとんど繋がらない。そもそも、腕が動かない。いったいどうやったら、この光る物体を満足に消すことが出来るのだろう。音に乗るとか、そういうレベルじゃなくない? これ?
早々に諦めた俺は、隣はどうなのだろうかと思って、こっそり視線を向けると、そこにはよく分からん動きで、華麗に光る物体を消し去るプリン頭がいた。
次から次へと消えていく物体と、生き生きとした表情のプリン。なんか、最後で一気に間抜けっぽくなったが、真似できないと思った。動きも、髪も。
いや、マジでどうなってんのそれ? 同じ人間か?
そのまま呆然とその様子を眺めている間に、曲が終わり、スッキリとしながらも、どこか不満を滲ませるような様子で、フルコンが云々、オールパーフェクトが云々と、ぶつぶつ呟いている。
もう完全に自分の世界に入っていらっしゃるので、大変申し訳なく思いはしたのだが、さっさとこの状況から抜け出したかった俺は、彼女に話しかける。
「これで終わりか?」
「あと二曲出来るわ。やるわよ」
なんだか知らんがやる気を滲ませた様子のプリン頭に、まだやらなきゃならんのか、と肩を落とした。
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