第31話 オークのリーダー

シュバインの話で冒険者たちの危機を知った俺達はすぐに戦場へになっているであろう場所へと向かう。そしてその道中で詳しくシュバインに話を聞く。カサンドラとライムは先頭で魔物の襲撃を警戒してもらっている。



「つまり、リーダーがオークロードから、お前の兄貴に変わったんだな。そしてお前の兄貴は小さいがその分頭が良いと……お前の兄貴はどんなやつだったんだ」

『ああ、そうだ、兄貴は元々体が弱かったからオーク内ではあまり良い扱いをされてなかったんだ。だから俺が獲物をわ分けたり、庇っていたんだけどな……ある日、俺が狩りに言っている間に、兄貴は何匹かのオークに狩りに連れて行かれたらしい。そこで何が起きたか分からないが、そいつらは兄貴の言うことを聞くようになって、それ以後はそいつらに狩りをやらせたりしていて生きていたんだ』

「そこでギフトに目覚めたのか……」

『そうなのかもな……それ以来兄貴は変わったよ。それまでは穏やかだったんだが、どんどん気性が荒くなっていったよ……でも、なぜか兄貴に従うオークたちは増えていったんだ。そしてそれに比例するかのようにどんどん兄貴は偉そうな態度をとるようになったんだ』



 そういうシュバインは少し、寂しそうに顔をゆがめた。その顔は先ほどまでの豪快さはなりをひそめて、まるで何か大事になものが消えていったそんな顔だった。



『兄貴はギフトによって、負けを認めさせた者の命令権を得るらしい。兄貴はいつの間にかリーダーも支配下に入れていて、そこからはやりたい放題だったな。雌は独占するし、食い物も兄貴ばかりが喰ってやがった。そして兄貴はいつの日かダンジョンだけではなく、地上も支配をしようと言い出した。俺は数多くの魔物や人間と戦っていたからな……世界にはもっと強い奴や、賢い奴がいる。だから反対したんだ。そんな俺が気に喰わなかったんだろうな、どんどん兄貴との仲は悪くなっていったよ』

「そして、お前と俺たちの戦いがきっかけで群れを追放されたってことか」

『ああ、だが、おかげで、お前らと再会できたんだ。人生捨てたもんじゃないな。それに元リーダーとも一度は戦ってみたかったんだ。これで遠慮なく戦えるぜ」



 俺はシュバインの顔をみるが悲壮感はない、同じように追放された関係なのにな。こいつは強いなぁと思う。ちなみにシュバインのギフトは『狂戦士(ベルセルク)』傷を負えば負うほど、ステータスがあがるらしい。だからカサンドラに腕を切り落とされた時強くなったんだろう。



「カサンドラにライム聞いてくれ。オークのリーダーは小柄なオークらしい、巨大なオークがいるがそいつを実際は小さいオークが支配しているそうだ」

「小さいオークが……? なんかオークって大きい奴が一番偉いってイメージだけど……でも、このままじゃあ、まずいわね……リーダーと思ったオークを止めても、他に命令系統があるって知らなかったら……」

「ああ、油断したところを攻められたらやばいな」

『こっちが近道だよ』




 洞窟を把握しているライムの道案内で、俺たちは急ぐ。間に合ってくれればいいのだが……ようやく戦いの音が聞こえる。通路を出た俺が最初に聞いたのは助けを求める悲鳴だった。


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